一歩一歩を味わうように歩くと、いつもの通勤時間も“マインドフルネス瞑想”に!

1日に6万回も思考しているという“考えすぎ”な現代人。しかもその9割が同じことを繰り返し考えているのだという。

この思考に“気づき”、それを“手放す”ことで集中力を高め、感情をコントロールできる脳にアップグレードする“心の筋トレ”。これが「マインドフルネス瞑想」だ。

近年では脳科学的な裏付けも報告され、有名企業の社員研修でも導入される注目のメソッド。前編記事に引き続き、『マインドフルネス瞑想入門』の著者である吉田昌生(まさお)氏に話をうかがった。

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まずは簡単に初歩的な練習法である「呼吸瞑想」のおさらいから。目を閉じて自分の呼吸に意識を向ける。おなかの脹らみを感じたら「脹らみ」、縮みを感じたら「縮み」と心でつぶやく(ラベリングする)。意識が呼吸からそれて別のことを考えてしまったら、また呼吸に意識を戻す。これをひたすら繰り返すというものだった。

初心者の記者は、たった10分すらこの状態に耐えられなかったわけだが、何かコツはあるのだろうか?

「イスに座っている場合は、骨盤を起こして浅めに腰かけ、背骨を伸ばします。背骨が伸びると神経の圧迫がなくなり、胸も広がって呼吸がしやすくなります。逆に背もたれを使うと、背骨が丸まってエネルギーの流れが滞ってしまいます。

また、より楽な姿勢が良ければ仰向けもOK。リラックスして横たわって両足を肩幅くらいに開き、同じようにお腹の脹らみと縮みをカウントします」

これでも難しい場合は、単純に呼吸を1から10まで数えるだけでもいいそう。息を吐くときに「ひとーつ」「ふたーつ」と心の中でつぶやくだけだ。

「これは怒りを感じた時にも効果的。怒りは90秒間、一時停止させると乗り越えやすくなる、血中から怒りの成分がなくなると言われます。つまり、怒りが湧いたらマインドフルに呼吸を意識するだけで、怒りに反応的になることが減るのです」

瞑想を行なう時間帯は、できれば静かであまり雑念がない朝方などがベター。これが仕事の後だと、仕事モードで雑念が多くなってしまうからだ。時間も10分が難しければ、3分でもいいので毎日続けてみてほしいという。

このように胡坐を組んだ姿勢もOK。背骨が気持ちよく伸びていて、首や肩に余計な力が入っていないことがポイント

また、呼吸以外にもユニークな瞑想法もある。そのひとつが「食事瞑想」だ。

「例えば、今飲んでいるこのコーヒー。目を閉じて、今この瞬間に意識を向け、コーヒーの液体の温かさや苦味、甘さ、それらを味わってゆっくりと飲みこんでみましょう。その時の喉ごし、胃の中に入っていく感覚も意識して。コーヒーの酸味、苦味がよりクリアにわかりますよね」

コーヒーの香り、苦味、喉ごし、ひとつひとつの感覚を丁寧に意識して…ゴクリ。お、おいしいかも…! かつてコーヒーをこんなに味わい深く感じたことがあっただろうか…。

今に意識を向けると、幸せとつながれる

いつものコーヒーを“マインドフル”に飲んでみよう!

今やっていることに意識を向けると、そこにある幸せと繋がることができるんです。例えば、普段の食事も高級なフレンチでも食べているような集中力で米や野菜をしっかりと味わうと、ものすごい“気づき”があります。実際、ご飯を2時間かけて食べるという禅の修業もあるんですよ」

TVを見ながら食事…なんて幸せを捨てているようなもの? さらに、忙しい人なら「歩く瞑想」もオススメだという。

「歩きながら、右足の裏が地面に触れたら『右』、左足のかかとが着いたら『左』…と、意識を足の裏に向けます。厳密には超ゆっくりとした動作で『左のかかとが着いた』『足の裏が着いた』と意識するのが正式な『歩行禅』ですが、かなり怪しい人に見えるので普通のペースで大丈夫。

目的地に着くために歩く…のではなく、今この瞬間の歩く感覚を味わうことが、まるで“人生の目的”であるかのように一歩一歩を大切に味わうんです」

例えば、ここからここまではマインドフルに歩く…と決めて、少しずつ距離を伸ばしていくのもアリだ。このように日常生活でもマインドフルネスを取り入れることができる。

「実践についてまとめると『深める練習』と『広める練習』があります。深める練習は非日常的な時間をとって、じっくりと瞑想に向き合う。いわばスポーツクラブで筋トレするようなもの。

一方で、筋肉を鍛えたい人は日常生活でも意識しますよね。例えば、スーパーのレジ袋も筋肉を意識して持ったり。これが広める練習。瞑想1日10分は基本としてやって、さらにそれを日常生活にも広めるという考え方です」

個人差もあるが、効果が実感できる目安は約3ヵ月。実際に吉田氏の教え子たちからも、考えすぎることが減った、それまで怒るところで怒らなくなった、仕事での集中力が高まった、人前で緊張しなくなった…等、嬉しい変化が報告されているそうだ。

思い立ったら気軽に実践できる「マインドフルネス瞑想」。ぜひ今日からトライしてみてはいかがだろうか。

●吉田昌生(よしだ・まさお)日本マインドフルネス協会代表、綿本ヨーガスタジオ本部講師。23歳のころ精神的にバランスを崩し瞑想に出逢う。瞑想がもたらすメンタル調整効果に感動し、ヨガ・瞑想講師の道を志す。以降、インドをはじめ世界35カ国以上を巡り、様々なスタイルの瞑想、ヨガ、心理学を学び実践する。2014年、YOGA BEING真鶴を設立し、神奈川を中心に、ヨガ・瞑想の普及に努める。「マインドフルネス」をべースにしたヨガクラスを指導。主な著書に「一日10分で自分を浄化する方法 マインドフルネス瞑想入門」(WAVE出版)ほか。「怒りが消える瞑想法」(青春出版)1月25日に発売。マインドフルネス瞑想入門無料メール講座配信中→ http://ma30.xsrv.jp/lp-2/

(取材・文/週プレNEWS編集部 撮影/五十嵐和博)