ダイエット本のベストセラーを連発する森拓郎さん。本人は太らない体質だが、自らの指導を検証するために、去年あえて16kg増量したとか

日に日に過ごしやすくなり、衰えていた食欲もモリモリわいてくる今日この頃。薄着の季節も終わるし…と気がゆるみがちな今こそ、改めてダイエットを意識すべき季節だ。

そこで注目したい1冊が、『ヤセたければ走るな、食べろ!』だ。これまで10冊以上のダイエット本を執筆、ベストセラーを連発してきた運動指導者・森拓郎さんによる男性向けの最新刊。運動せずに、食べるだけでヤセられるメソッドが紹介され、運動苦手&食べること大好きな読者にもピッタリだ。

そこでヤセ方のコツから具体的な食事法までを聞いた前編に続き、今回は森さんのダイエット指導に対する考え方にも迫った。

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―では、エナジードリンクなんかはどうでしょう? 疲労回復に飲む人も多いと思いますけど。

 あれは無茶苦茶カラダに悪いですよ。カフェインが多く、糖質も多い。疲れを一時的に忘れさせるもので、疲労回復させるものじゃないんです。ここぞという場で飲むのは構いませんが、疲労回復なら体にいいものを食べたほうがいいです。

―暑いと食欲もなくなり、アイスとか冷たいものばかり食べていました。まずかったですかね?

 冷たいものが悪いとは言いませんが、内臓が弱ります。それは知っていて欲しいですね。ちなみに夏バテというのはたんぱく質とミネラルの不足から起こるものなんです。だから食べるものもそれを補うようにしないと。例えばソーメンだけじゃなく、卵を加えるとか。プロテイン1杯だけでも随分変わりますよ。

―なんだか栄養だけを考えるなら、サプリメントを毎日飲むほうがいいような気もしてきました。

 食べ物には3大栄養素以外の微量な栄養素が含まれていますから、栄養素は食べ物で摂るのが一番効率がいいんです。それに人間は動物ですから。食べ物を食べて消化をしていないと体調がおかしくなってしまいます。サプリメントは補助として摂らないと。

―お話を伺っていると、どう食べるかというのは栄養要素を正しく理解することが必要なのだと感じます。

 まさにそうですね。雰囲気で捉えてはダメなんです。生野菜が体にいいと雰囲気で思い込んでるし、糖質が体に悪いと雰囲気で思い込んでる。それが本質的な問題なんですよね。

―実際、そうした栄養バランスを考えた食べ方をして、どれくらいヤセるものなんでしょう?

 セミナーをやると、僕の本を読んで15kgもヤセたとか言う人がいますけど、本当かどうか(笑)。僕が実際に指導した人は6~10kg、ヤセた人が多いですね。

―ちなみに森さんは、昔からずっとスリムなんですか?

 太ったことはないですね。だから去年わざと太ったんですよ。

「体重が増える=デブになる」ではない

―えっ! なんでですか!?

 僕がNGだと言うことをやったら本当に太るのか検証しようと思って(笑)。ただ僕は内臓のキャパが大きくないし、あと食べ過ぎたら体がブレーキをかけちゃうんです。だからご飯じゃなくて、アイスクリームとかドーナッツとか脂質と糖質の多い間食を毎日。そうしたら3ヵ月で16kg増えました。

―やはり体調に変化が?

 そうですね。やたら汗が出るし、体も臭くなるし(笑)。でも基本はトレーニングしながらだったんで、見た目はどちらかといえばゴツくなった感じでしたけど。

―それは筋肉がついた?

 そうですね。太ったことで筋肉量は増えました。ボディビルがそうですけど、あれは体を一度太らせてから脂肪を削っていくんです。よく筋肉がつかないって人がいますけど、そういう人ほど食べていないんですよね。皆さんよく間違えますけど、「体重が増える=デブになる」ではないんです。

―ーでも太ったことがないのになぜダイエットの指導を?

 本当のことをいえば、僕はダイエットの指導はしたくないんです。元々、運動を教えたくてフィットネスの業界に入ったんですが、でもフォットネスクラブに来るお客さんってダイエット目的の人が多くて。大半がどうすればヤセるのかって聞いてくる。

ダイエットって考え方の問題だから、メンタルカウンセリングみたいになるんですよ。せっかく来てくれてるのに、1時間以上もその話ばかりしてるのはもったいないなと思って。それで本を書くようになったんです。これを読んでもらえばお客さんも納得して運動できるようになるし、僕はもっと運動の話ができるんじゃないかと(笑)。

―いまや森さんのダイエット本は10冊以上に上り、そのどれもベストセラー。信者にも近い熱心なファンもいますよね。

 正直、戸惑いますよ(笑)。僕はモチベーションを保つ応援をしているだけ。僕の言うことをただ聞くのではなく、自分で考えてやらないと結果は出ませんから。それは病気になった時、主治医に任せきりにするより自分でなんとかする人のほうが治るのと同じ。

だから僕はツイッターのリプとか、あえて素っ気なくすることもあります。「●●は効きますか?」みたいな質問に「何に対してですか?」とか「それは●ページにあるから見てください」とか。そもそも僕自身、褒められるのは好きじゃないですしね(笑)。

ただ体重を減らせばいいだけじゃない

―そうなんですか(笑)?

 だから、ネットのレビューなどでキツいことを書かれると嬉しいです。女性向きの本にキツいことを書いて「女性をバカにしてる」「イケメンだからって、なんでも言っていいと思ってじゃねーよ」みたいな。あまりに的を射ているなら傷つくと思うけどそこまでのものはないし。僕、結構、性格ひねくれてるんですよ(笑)。それにネットみたいな匿名性のあるところだからこそ、出る本音みたいなものは大事だと思ってますしね。

―自分たちも含めて、情報を出す側と受け手との距離の取り方って難しいなと思います。

 やっぱり皆さん、メディアが出していることを鵜呑みにしちゃうんだと思います。だからこそ正しい情報を流さないといけないですよね。ヤセるって、決してただ体重を減らせばいいだけじゃないから。そのためにもあれもダメ、これもダメってことじゃなく、正しい情報を知って、何をどう食べるを考えれば、あれも食べられる、これも食べられるってことになりますから。決して難しく考えるものじゃないんです。

(取材・文/大野智己)

●森拓郎(もりたくろう)1982年生まれ。株式会社rinato代表取締役。運動指導者。大手フィットネスクラブを経て、2009年、自身のスタジオ『rinato』(加圧トレーニング&ピラティス)を東京・恵比寿にオープンし、ボディメイキングやダイエットを指導。栄養学を学び、運動の枠だけにこだわらない指導が支持を得ている。著書に『食事10割で代謝をあげる』(ワニブックス)

■『ヤセたければ走るな、食べろ! みるみる腹が凹むズルい食べグセ』(ワニブックス)ダイエット本でベストセラーを連発する運動指導者・森拓郎さんの最新刊。「運動するとヤセにくくなる」「BMI25以上の人はヤセる才能がある」「主食を抜けば抜くほどゆっくり太っていく」など刺激的なコンテンツで、運動せずとも、理想のボディを手に入れられる食に対する意識や食習慣を説く