なかなか指摘しにくいニオイ問題。共有空間を快適にするためのコミュニケーションとは?

なんと、30代から発生しているという「加齢臭」

しかし、これからの秋冬の季節だったらニオイ問題、もう少しなくなるんじゃない?って思ったアナタは、甘い!

前編に引き続き、ワキガによるニオイ問題と10代の頃から戦ってきた、『におわない人の習慣 最新版 加齢臭読本』著者の奈良巧(なら・たくみ)さんに秋冬からのニオイ問題について聞いた。

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―これからはだんだんと涼しくなってきますから、ニオイ問題も気楽になりますかね?

奈良 いいえ、そんなことはありません。寝汗は年中かきますし、冬は布団を多くかけますから、その分、布団内でのニオイもこもりやすいです。朝風呂とまでは言いませんが、出かける前に後頭部や首全体、耳の後ろなどをボディペーパーで拭き取る必要はあります。

―けど、秋冬は日中の汗臭さは減りますから、そんなにケアしなくても?

奈良 いえいえ! 汗の分泌が減って汗臭さはなくなりますが、皮膚の分泌は減りません。それどころか、厚手のコートなどは加齢臭が移りますし、何より独身男性だったりすると、一度着たシャツのニオイをかいで「うん、臭くない」とか言って洗わないまま着るとか、思い当たるでしょ?

―かなり思い当たります。

奈良 それがアウト! 着る前は臭わなくても、人間が着用するとその体温でニオイはたちやすくなります。冬場だからって気を抜かずに、シャツは1日着たら洗い、スーツやコートもこまめにクリーニングに出す必要があります。

―奈良さんの本には衣服の洗濯へのこだわりも書かれていましたよね。

奈良 もちろんです。何度か着たシャツにはニオイが染み付いていますから、普通の洗剤で洗うだけではダメなのです。最低限、季節が変わるごとに抗菌剤入りの洗剤で洗うことをオススメします。

―なるほど。あと、ニオイにまつわる人間関係づくりやコミュニケーションについて書かれていることも興味深かったです。

奈良 最近話題となった、某人気アイドルが握手会でのファンのニオイ問題をTwitterで公言したことは、本当に勇気ある行動だし、ファンは「あの女、ニオイのことなんか言いやがって」とか思わずに、ありがたい忠告だと受け止めたいですね。

ニオイを語り合える仲は貴重です

―それでも、ニオイのことを言われたら、やはりショックではありますよね。

奈良 もちろんショックでしょう。しかし前編でもお話ししましたが、自分のニオイはそもそも気づきにくいもの。だからこそ他者が「臭いですよ」と言ってくれることはすごくありがたいじゃないですか。大事な取引先に訪問した際にニオイで悪い印象を与える場合もあるわけですし、女性から嫌われることだってある。とにかくニオイのことを指摘してくれる他者は大事にすべきだと思いますよ!

―では、「こいつ臭いなー」って同僚が職場にいたら、なんと伝えるべきでしょうか。

奈良 本人に直接言うのではなく、職場全体で注意喚起すべきですね。これは実際にある企業であったことですが、職場の全員が集まっている場所で「みんなで考えたいことがあります、制服が臭う人がいるので互いに気をつけましょう」と発言したのです。すると後日、ニオイの発生源だった人のニオイがなくなったそうなのです。

―職場全体のニオイ対策として伝えるんですね。けど、中には「俺は臭い奴だ」って開き直ってる場合もありますよね。そういう場合は?

奈良 うーん。そういう人はきっと彼女もいないし独身でひとり暮らしなんでしょうなあ。とはいえ、女のコのいるお店とかでも好かれたいじゃないですか。30歳にもなって勉強しろってのはきついけど、体を洗うとかは意識があればできること。なのでもう、「彼女がほしいんだったらどうすればいいと思う?」って話をイチからわかりやすく説明するしかないんじゃないですかねえ。

―面倒くさいですねえ(苦笑)! とにかく「臭い」と言い合える人間関係作りが大事ということですね。

奈良 そうです。まずはオカンにでも「俺って臭い?」って聞いてみてはどうでしょう。そうしたら、なんらかの返事が返ってくるでしょう。あるいは友達でも彼女でも、その質問をすることでお互いのニオイを語り合える関係が作れますよね。

―確かに…常に一緒にいる相手だからこそ、共有する空間を快適にするためにも大事なコミュニケーションです。

奈良 その通りです。ニオイを語り合える仲は貴重です。そしてそれができることは、それだけ絆が深いと言えます。ニオイのコミュニケーションは愛情表現といっても過言ではありません。

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というわけで、「俺は大丈夫」と思わずに、まずは自分の鼻の両脇や耳の裏をこすって嗅いでみたりして、セルフチェックしてみてはどうだろう。ちなみに記者は先日、奈良さんの言葉を思い出して外出先で何気なく脇をクンクンしたら、そこはかとなく漂う酸っぱいニオイ……ガーン! 単純に暑い日で汗かいたってことだけど、そこからはボディペーパー常備で脇拭きを欠かしておりません!

(取材・文/河合桃子)

●奈良巧(なら・たくみ)1958年生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。50歳で退職後、奈良巧事務所を設立。現在は週刊誌、月刊誌等のフリー記者・編集者・カメラマンとして活動。得意テーマは加齢臭、アンチエイジング、現代栄養学とサプリメント、コンビニ・ファミレス・外食文化と健康について。最新刊『におわない人の習慣 最新版 加齢臭読本』(草思社)好評発売中