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アメリカと北朝鮮の戦争、「負ける」のは誰か?──「天皇機関説」事件から今と昔を読み解く

[2018年02月01日]

紛争史研究家の山崎雅弘氏(右)と、自衛隊問題に詳しいジャーナリストの布施祐仁氏(左)

1935年に起きた天皇機関説事件をご存じだろうか。おそらく、歴史の年表のひとつとしてしか覚えていないという人も多いだろう。しかし、その内容を見ていくと、現在の状況と驚くほど似通っていることに気づく。

先頃、その危険性について指摘した新書『「天皇機関説」事件』を書いた戦史・紛争史研究家の山崎雅弘氏と、自衛隊問題に詳しいジャーナリストの布施祐仁氏が「アメリカと北朝鮮の戦争、『負ける』のは誰か?」と題して対談を行なった。その様子をレポートする。

※この対談は、2017年12月5日、神楽坂モノガタリにて行われました。

布施 山崎さんの『「天皇機関説」事件』のあとがきに「日本人は形式を重んじる傾向が強く、その立派な大義名分を持ち出されると、たとえ実質に問題があっても、権威に屈服して従う人が多い」と書かれていましたよね。事件当時だけでなく、現在の日米関係をも言い当てていると感じました。

山崎 「大義名分」は当時も、現在の日本にも通じるキーワードだと思います。上意下達の「命令」であれば、上位の者がやめろと命じれば終わります。しかし「国体」や「愛国」といった大義名分が行動の動機になると、それを共有した人間が自発的に行動し、止められる人間がいないまま、大義名分に基づく行動が際限なく暴走するということになりかねないのです。

1935年に出た、右翼団体の機関誌『勤王』の「天皇機関説排撃号」の表紙には「大義名分の存否は国家興亡の繋がる處」と書かれているのですが、天皇機関説事件が始まった1935年から終戦の45年までの10年間は「国体」という天皇中心の国家システムを守るためならば、他のあらゆるものを犠牲にしても許されるという「国体」思想が事実上、無敵の「大義名分」になっていました。

前編①

布施 臣民がどれだけ犠牲になっても、「国体」さえ守ることができれば良いという思想ですよね。現在では日米同盟がそれに当たるのではないかと感じます。日米同盟さえしっかりしていればすべて良し、と思考停止しているように見えます。

山崎 私も同感です。まず天皇機関説事件の当時の様子から見ていきたいと思いますが、前置きしておくと、「天皇機関説」とは、日本という国家を「法人」とみなし、天皇はその法人に属する「最高機関」に位置するという学説です。これについて右派の政治家や退役軍人、そして右翼団体などが「天皇を『機関』扱いするのはとんでもない」と、表面的な言葉をあげつらって言いがかりをつけ、この学説を主張する憲法学者で貴族院議員の美濃部達吉を糾弾したのです。

美濃部は、社会的にも精神的にも大きな打撃を被りました。これは明らかな政治的攻撃です。国体あるいは「愛国」という大義名分を掲げ、疑問をさしはさむ者には「非国民」とか「反国体」などとレッテルを貼って罵倒したのです。

天皇機関説事件から2年後、日中戦争が始まります。平和から戦争へと突入していく背景に「自分たちは絶対的に正しいのだ」という主観的思考の肥大化と「本当に自分たちのやっていることは正しいのだろうか」と常に自省する客観的視点の欠落があったと私は見ています。

当時の図式を踏まえた上で、最近の話になりますが、2017年8月4日の神戸新聞に〈灘中に「教科書なぜ採択」盛山衆院議員ら問い合わせ〉という記事が出ました。灘中学校で、慰安婦問題や南京虐殺問題を事実として認めた歴史教科書を採択したことをめぐって、自民党の盛山正仁衆院議員や兵庫県議の和田有一朗氏が「なぜ採択したのか」と同校に問い合わせを行なっていた。加えて「文面が全く同一」のはがきが200通以上届き、和田校長は「はがきはすでにやんだが、圧力を感じた」と振り返っていると。

布施 同様に、例えば私が日米同盟に少しでも疑問をはさむようなことを言うと、「反日」とか「お前は中国や北朝鮮の味方か」などとレッテルを貼って糾弾してくる人たちがいます。日米同盟も「大義名分」になってしまっている。

山崎 灘中学校の出来事でも、大義名分として「日本の名誉」が持ち出されました。ただ、彼らが守ろうとしている「日本」とは、戦前戦中の大日本帝国のことです。一方で、そうした歴史修正主義的な行動は現在の日本の国際的な評判を落とし続けています。

その典型が、サンフランシスコの慰安婦像をめぐる論議ですが、主観的に「過去の日本」の名誉を守ろうとすればするほど、他国からは過去を反省しない、人権を軽視する国だと「現在の日本」の名誉は下がっていく。そうした乖離を自覚していないという構図も、現在起こっていることと天皇機関説事件は似ていると思います。


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