「『いの一番』『ハイミー』にもっとがんばってもらえると、アンチ味の素は減るかも」と語るリュウジ 「『いの一番』『ハイミー』にもっとがんばってもらえると、アンチ味の素は減るかも」と語るリュウジ

ひろゆきがゲストとディープ討論する『週刊プレイボーイ』の連載「この件について」。料理研究家のリュウジさんを迎えての12回目は、前回に引き続き「味の素」について。同じうま味調味料の「いの一番」や「ハイミー」にはなぜアンチがいないのか。そして、知られざる(!?)味の素の歴史などを語ります。

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ひろゆき(以下、ひろ 「味の素」以外で、白い粉系のうま味調味料ってあるんですか?

リュウジ(以下、リュウ たくさんありますよ。市販されているものだと「いの一番」が味の素の次くらいに有名です。これはイノシン酸が強いんです。

ひろ 味の素とどう違うんですか?

リュウ 味の素のほうが直線的で強烈なうま味を感じますね。ほかにも「ハイミー」があります。これはイノシン酸とグアニル酸の割合が高く、グルタミン酸の割合が低い。すると、だしをちゃんと取ったような味がするんです。

ひろ へー。例えば、これまで味の素を使っていたリュウジさんのレシピを全部いの一番やハイミーに変えたらどうなるんですかね? アンチが一気にいなくなったりして(笑)。

リュウ アンチハイミーは聞いたことないですね。でも、マイナーだから、アンチがいないのかもしれません。

ひろ なるほど、味の素はブランドとしてデカすぎるんですね。

リュウ そうですね。例えば、塩はいろんなメーカーから出ていますし、天然塩や岩塩など種類も豊富です。だから、うま味調味料も塩のようにバリエーションが多ければ、アンチは少なかったかもしれないです。

ひろ あまりに有名でライバルがいないから、味の素がアンチを一手に引き受けているのかもですね。しかも、味の素だけでなく、うま味調味料や添加物のアンチからも叩かれていますし。

リュウ 僕は味の素を嫌ってる人と座談会みたいな感じで話をしたいと思っているんですよ。こういうのってSNSでやると意見のぶつけ合いになるじゃないですか。

ひろ そうですよね。質問しても返ってこないし、議論にならない。だから、いつまでたっても平行線なんです。そういえば、ネットではアンチ味の素を見るんですけど、リアルでは会ったことがないですね。

リュウ そうなんです。

ひろ 実は人数はすごく少ないけど声がデカいから、たくさんいると錯覚しているだけなんですかね? リュウジさんのSNSに絡んでくる人たちを数人ブロックしたら、かなり静かになるんじゃないですか?(笑)

リュウ ありえるかもしれないです。それから、味の素とかうま味調味料のアンチの人に聞きたいのは、「外食はしないんですか?」ということです。

ひろ 外食だとスーパーとかで売っている食品と違って原材料表記を見られませんからね。だから、アンチうま味調味料の人がよく行っているお店でも、普通に味の素が使われている可能性は高い。

リュウ あと、市販のちくわとかマヨネーズなどの加工品にもうま味調味料が入っていることがありますよね。

ひろ 気づかなければ、それでいいのかもしれないですね。

リュウ 日本ってゼロリスク信仰が根強いじゃないですか。ハムやベーコンも発がんのリスクが上がるというアンチがいますよね。でも、それは大量に摂取した場合であって、普通に食べている分には問題ないと思うんですよ。

ひろ 「だから、自然食品のほうがいいんだ!」となる人もいますが、そんなこと言ったら自然にも普通に毒はあふれていますからね。あとはオーガニックにこだわるあまり、食品添加物を使わないことで食中毒が発生する事故も起きているじゃないですか。製造業者が添加物を入れるのは、安全性の理由があるからなんですよね。

リュウ 「◯◯は買ってはいけない」「食べてはいけない△△」みたいな本や特集がはやったことがありましたよね。その中では味の素がやり玉に挙げられていました。ただ、この手の本は量の概念をすっ飛ばしているんですよ。1日の摂取量としてはありえない量で実験している。そんなこと言ったら、水も大量に飲めば死にますよ(笑)。

ひろ ネットで「マスコミが人数を強調するときは割合を疑え、割合を強調するときは実数を疑え」みたいに言われているんですが、マスコミにミスリードされているわけですね。

リュウ 最初から大企業を批判する目的だったり、お金のためにやっている人も多いと思うんですよ。不安をあおると儲かる世の中じゃないですか。

ひろ 不安をあおって信者から大金を巻き上げるカルト教団もありますからね。そうか、アンチ味の素というのはビジネスになるのか。なら、リュウジさんはそっち方面でもレシピ本を出せばいいんじゃないですか?(笑)

リュウ 不安をあおって儲けたいなんて気持ちは1ミリもないですが、味の素を一切使わないレシピ本は出したいと思っています。というのも、味の素を使わなくてもおいしいレシピを紹介できたら、理論武装できると思うんですよ。「リュウジは味の素を使ったレシピを出しててけしからん!」と言われても「いや、味の素を一切使わない無添加レシピも出してますよ?」と言えるじゃないですか。

ひろ それはできそうなんですか?

リュウ 手間はかかりますが、できます。最近は「無添加でどこまでおいしくなるか」みたいなのを突き詰める料理もけっこうやっているんですよ。この前は、鶏がらスープや味の素を使わず、昆布とかつお節とお肉だけでラーメンを作りました。ただ、そのレシピを作って思ったのは「昆布を味の素にしていたらもっと早いな」ということなんですよね(笑)。

ひろ 味の素を使ったほうが時短になったり、おいしい料理が食べられるようになるのに「使いたい人は使えばいいじゃん」とならないのは、味の素は何を失敗したんですか?

リュウ 味の素の歴史は100年以上あるんですけど、初期の頃は「耳かき1杯分でおいしいおわんが作れますよ」という感じの売り込みで売っていたんですよ。でも、精製の方法が確立されていなくて最初はめちゃくちゃ高価なものでした。高級料亭が「うちは味の素を使っています」と宣伝していたくらいですから。

ひろ 高級店が売りにするくらいだったんだ。

リュウ そうなんです。

ひろ じゃあ、味の素はむしろ高価なままのほうが良かったかもですね。

リュウ 高いままだったら、誰もが憧れる超高級調味料だったでしょうね。でも、味の素は企業努力で値下げをして庶民の手に届けようとした。その結果......。

ひろ アンチからめちゃめちゃ叩かれる存在になったと(笑)。それに加えて、やっぱり白い粉タイプのうま味調味料は、味の素が知名度的にほぼ独占状態ですからね。そりゃあ「◯◯は買ってはいけない」的な界隈の人たちにも狙われますよ。

リュウ なので、いの一番とかハイミーにもっとがんばってもらえると、アンチ味の素は減っていくかもしれないですね。

ひろ それにしても、庶民のためを思って価格を安くしたら、アンチが増えるというのは......。

リュウ だから不遇なんですよね。

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■西村博之(Hiroyuki NISHIMURA) 
元『2ちゃんねる』管理人。近著に『生か、死か、お金か』(共著、集英社インターナショナル)など 

■リュウジ(RYUJI) 
1986年生まれ、千葉県出身。料理研究家。近著に『虚無レシピ』(サンクチュアリ出版)など。公式X【@ore825】、公式Instagram【@ryuji_foodlabo】、公式YouTubeチャンネル『料理研究家リュウジのバズレシピ』

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