「僕ってネット上では『悪魔崇拝者』だと言われているんです。陰謀論まで出ています」と困惑するリュウジ 「僕ってネット上では『悪魔崇拝者』だと言われているんです。陰謀論まで出ています」と困惑するリュウジ

ひろゆきがゲストとディープ討論する『週刊プレイボーイ』の連載「この件について」。今回は料理研究家のリュウジさんを迎えての11回目は、前回に続いてなぜか炎上する「味の素」について。今回は「味の素は精製しているから体に悪い」「白い粉はダメ」という自然派志向の人たちの話。そして、リュウジさんが許せない人たちとは......?

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ひろゆき(以下、ひろ 前回は「味の素は舌がバカになると思われているから嫌われている」という内容でしたよね。

リュウジ(以下、リュウ そうですね。それで「味の素は調味料のひとつだし、ソースだって醤油だって使いすぎたら濃い味が好きになる」という結論になりました。さらに、味の素って「精製しているから」という理由でも嫌われているんですよ。

ひろ 精製っていうのは、不純物をなくして純度を上げていく作業じゃないですか。食卓にある塩や砂糖、小麦粉とかの食材や調味料はだいたい精製されていますよね。

リュウ でも、僕が味の素を使ったレシピを紹介すると「白い粉はダメだ!」「漂白されている調味料を勧めるな!」など精製アンチの人からよく絡まれるんですよ。

ひろ 純度が高いからダメというなら量を控えればいいし、精製されていないものでも大量に使ったら体には悪いですよね。

リュウ テレビ番組で味の素を使うと、「なんでコイツは不健康なものを広めているんだ」という反応が多いんですよ。フォロワーが多くて発信力がある僕の存在が、目につくんでしょうね。そういえば、僕ってネット上では「悪魔崇拝者」だと言われているんです。

ひろ え?(笑)

リュウ きっかけは『悪魔のレシピ』(ライツ社)というレシピ本を出したことだと思うんです。自分で言うのもヘンですが、これって〝悪魔的においしい〟という意味じゃないですか。それに僕も言葉遊びくらいしますよ。例えば、丼の真ん中にのせた卵黄を「プロビデンスの目」(フリーメイソンの象徴)に見立てて「悪魔のプロビデンス丼」というレシピを発表したら、そんな発信をするのは悪魔崇拝者に違いないと。ほかにも「人工的な精製品の味の素をたくさんの人に勧めることで、人類を少しずつ減らそうとしている」といった陰謀論まで出てきて困っているんですよ。

ひろ 僕もネットで絡まれがちですけど、リュウジさんはトンデモ系が多いですね。まあ陰謀論者にはいまさら何を言っても通じないから仕方ないとしても、そろそろ風評被害とか起きそうですね。

リュウ そうなんです。で、百歩譲って僕の悪口ならまだしも、僕をダシにして間違った知識が広がってしまう可能性がある。味の素は適切に使えば体に悪いわけではありません。でも、否定派が根拠のない投稿をすることで、知らない人に「味の素って体に悪いの?」みたいな悪影響を及ぼすんです。

ひろ リュウジさんは、味の素を使わない人を否定しているわけじゃないですもんね。

リュウ そうなんですよ。正直、僕は使っても使わなくてもどっちでもいいと思っているんです。でも、味の素は便利な調味料だし、料理を短時間でおいしくすることができる。正しい情報を知った上で使う使わないの判断をしてほしい。でも、ネットには「精製されているから体に悪い」みたいな間違った情報があふれていて、惑わされてしまうんです。

ひろ 厄介なのは、味の素否定派は「味の素や精製品を使わない人生のほうがいい」ということを教えてあげたいと思っていることですよね。そこには、ある種の正義がある。

リュウ ええ。「味の素をやめて自然派の食事にしたら体調が良くなった」と思い込んでいたりするので、悪気がなかったりもするんです。そして、僕のXをわざわざ引用してコメントするので、陰謀論の人たちの目について、それが拡散していく。それこそ悪魔崇拝だと言っている人とかは、めちゃ拡散しますね。

ひろ このまま交わることはないでしょうね。


リュウ そういえば、新たな勢力も登場したんです。味の素でうまみをつけると塩分が低くてもおいしく感じるという研究結果があるんですよ。だから、減塩というレシピでも紹介するようにしているんです。すると、どこからともなく「天然塩信者」が現れたんです。

ひろ どういう主張なんですか?

リュウ 「塩が全部悪いわけじゃない! 悪いのは精製塩だ!」「減塩なんてするな! 天然塩をいっぱい使え!」と。要は精製塩はダメだけど、岩塩や天日塩であればいくら取っても体にいいらしいという主張なんです。

ひろ 精製していない分ミネラルが多いとはいえ、いくら取ってもいいとはならないですよね。

リュウ ですよね。まあ、僕も自然派の人たちのことは否定しないんですよ。ただ、許せないのは、間違った認識を広めて商売をする人たちです。

ひろ というのは?

リュウ 今、人気の〝野菜だし〟があるんですけど、これが眉唾ものなんです。文字面だけ見た人は、あたかも「野菜のうまみだけを丁寧に抽出した自然派の調味料」というイメージを持つじゃないですか。でも〝酵母エキス〟という、味の素とほぼ同じ効果のあるうまみの塊を使っているんですよ。確かにルール的には酵母エキスは化学調味料ではない。でも、精製はしていないものの抽出したうまみを加えているんです。

ひろ へ〜。

リュウ 料理人なら誰でも知っていると思いますけど、野菜だけでは大したうまみは出ませんよ。

ひろ じゃあ、自然派の人たちは酵母エキスはなんだと思っているんですかね。野菜由来のうまみエキスだと思っているのかな。

リュウ だから「そのミスリードを誘う売り方はどうなの?」と思うんです。それに味の素社は酵母エキスをメーカーに卸しているんですよ。だから、普段食べている酵母エキスは実は味の素社製というのは十分ありえる話です。

ひろ ちょっと思ったんですが、味の素や化学調味料否定派の人は「自分の視界に入れたくない」んじゃないですかね。あの白い粉の味の素がアレルギー的に嫌いなんだけど、飲食店の料理に入っていたり、あるいは酵母エキスといった違った形で含まれている分には実は気にならない。

リュウ ああ、それはあるかもしれないですね。

ひろ やっぱり味の素も実は白い粉だから嫌われている説ありませんか? 茶色くすればアンチが減りそう(笑)。だって、砂糖も黒砂糖のほうがいいと言う人もいて、なんか色がついてると自然なイメージもあるじゃないですか。

リュウ 確かに! もともと味の素はサトウキビから作られているので自然由来っちゃあ自然由来なんですけど、茶色いと嫌がる人が少なくなりそうですね。

ひろ そういえば万能調味料の「味覇」って何色でしたっけ?

リュウ ベージュですね。確かに、味覇を使ったときには味の素ほどアンチは湧いてこないです。でも、味覇にも化学調味料が入っているので、アンチ味の素の人たち的にはアウトのはずなんですよ。

ひろ やっぱり「白い粉=精製している=体に悪い」というイメージはありそう。

リュウ そう考えると、茶色い味の素を作って「プレミアム」とか「オーガニック」みたいに売り出すと否定派は静かになるかもしれないですね。

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■西村博之(Hiroyuki NISHIMURA) 
元『2ちゃんねる』管理人。近著に『生か、死か、お金か』(共著、集英社インターナショナル)など 

■リュウジ(RYUJI) 
1986年生まれ、千葉県出身。料理研究家。近著に『虚無レシピ』(サンクチュアリ出版)など。公式X【@ore825】、公式Instagram【@ryuji_foodlabo】、公式YouTubeチャンネル『料理研究家リュウジのバズレシピ』

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