ウーバーイーツの配達中に遭遇した動物たちとのエピソードを紹介します ウーバーイーツの配達中に遭遇した動物たちとのエピソードを紹介します

連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第44回

ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!

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YouTubeやTikTokで犬や猫の動画を検索すると、ペットたちの愛らしい姿やクスッと笑ってしまうハプニング映像が出てきます。多くの人にとって人懐っこい動物たちを見ると心が和むものです。そこで今回は、これまでウーバーイーツの配達中に遭遇した動物たちとのエピソードを紹介します。

まずは多くの配達員が経験したであろう、あるある系のエピソードから。

マンションなどの集合住宅にお住まいの注文者の中には、インターホンを鳴らすと飼っている犬が吠えて近隣住民に迷惑をかけるという理由から、置き配を指定される方がいます。配達員用のアプリに表示される「お客様からの注意事項」の欄には「インターホンを鳴らすと犬が大騒ぎしてしまいます。管理会社を通じてクレームが届いたこともあるため、絶対に鳴らさないでください」などが書かれていたこともあります。そんなわけで、マンションの部屋の前に置き配する際は、細心の注意を払って商品を置くようにしています。

とある夏の日の深夜、配達で向かったのは湾岸エリアの集合住宅。犬は人間よりもはるかに鋭い聴覚を持っているので、そーっと部屋の前に近づいても足音をキャッチされ、チャカチャカと玄関へ向かってくる足音が聞こえてきます。

私の場合、家のドアの前に到着したらリュックを下ろし、商品を取り出してドアの前に置き、商品とドアの位置関係がわかるような写真をスマホで撮影してその場を立ち去り、帰り際に注文者に「配達が完了しました。商品は写真のような感じで置きました」とメッセージを送信して配達完了という流れで置き配しています(写真撮影とメッセージ送信は必ず行なうルールになっています)。なので、到着後にリュックを下ろして商品を取り出すのですが、ドアの前に置くのは食べ物。人間の3000倍から1万倍ともいわれる嗅覚を持つ犬が商品の匂いに反応しないわけありません。

ドア越しにギャンギャン吠えられる中、商品を置いて写真撮影。帰り際「BAD評価がつけられるんだろうな」と思いながら配達が完了した旨を注文者にメールしていると、隣の部屋のドアが開いて「静かに運べ!」とお叱りを受けました。その後、注文者からはBAD評価がつけられなかったのでホッとしました。

続いては、私がよく配達を行なっているタワーマンションでの話。

以前、この連載の「部屋にたどり着くまで10分以上かかる!? タワーマンションへの配達はつらいよ」や「業務用エレベーター利用者たちの悲喜こもごも!? 配達員トーク」でも触れましたが、タワーマンションの中には、配達員などが利用する業務用エレベーターが設置されているところがあります。そして多くのマンションで「配達員、引越し作業員、ペットを同乗する住民は業務用エレベーターを使うこと」というルールになっています。

3年前のクリスマス、とあるタワーマンションにチキンを運んだ時のこと。36階にある部屋へ向かおうと、1階の業務用エレベーター乗り場で待っていたら、住民の男性が中型犬を連れてやってきました。犬はよくしつけられているのか、こちらのリュックの中身に興味津々という感じで私やリュックに熱い視線を投げかけてきますが、吠えることは一切しません。

エレベーターに乗り込み、私が36、住民の方が28のボタンを押し「すみません。ウチの犬が」「食べ物が入っているから仕方ないですよ」と飼い主の方と軽く言葉を交わしていると、閉じ込められた空間、フライドチキン、人間以上の嗅覚、という3つの条件が揃った環境で我慢の限界が来たのか、犬が急に吠え出し、立ち上がってリュックに手を伸ばしてきました。飼い主の方がうまく対応してくれて事なきを得ました。突然の犬の乱心にも驚いたのですが、それ以上に衝撃だったのはエレベーターを降りる前に「すみません、まだ子どもなので」と言われたことでした。商品を狙われたことより、あの大きさで子犬ということにビックリしました。

犬の話が続いたので、最後は猫の話を。

コロナで外出する人が少なかった4年前の秋。浅草付近で受けたのはレストランからの配達依頼。店の前に到着し、邪魔にならない位置にリュックを置き、商品を受け取りに店内へ。4人分の弁当を受け取り「土日の夜、外食代わりにレストランの弁当をウーバーで頼む人が増えたな」と思いながらリュックの前に。そして中に弁当を入れようとした瞬間、曲げた背中にズシリと重みが。反射で背中を反らすと建物の間に駆け込む黒い影。よーく見ると、丸々と太った猫。その体型から、おそらく配達員を常習的に狙っているのでしょう。

コロナで外に出る人間が減り、餌をもらえなくなったのかもしれませんが、もし配達する商品に手をつけられたらBAD評価どころではありません。なので思いっきり怒鳴りつけてやりました。

「この、泥棒猫が!」

ここまで49年生きてきていますが、ドラマなどでありそうなこのセリフを叫んだのは後にも先にもこの一度きりです。

他にも、猫が飛び出してきたと思ったらハクビシンだった話や、岩に乗り上げて転びそうになって岩の場所に戻ってみたら亀だった話など、動物にまつわるエピソードはいろいろありますが、そのあたりはまた別の機会でお話しできたらと思います。

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渡辺雅史

渡辺雅史わたなべ・まさし

フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。

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