管理事務所で入館の手続きをして、業務用エレベーターで部屋へ向かうタワーマンションはまるでダンジョンのよう!?管理事務所で入館の手続きをして、業務用エレベーターで部屋へ向かうタワーマンションはまるでダンジョンのよう!?

連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第4回

ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!

* * *

私が主に配達するのは東京都中央区。銀座、日本橋といった商業地や、勝どき、晴海といったタワーマンションが立ち並ぶエリアのため、一軒家へ商品を届けることはほぼありません。個人のお宅といえばマンションとなります。

都心部ではセキュリティーに気を配った建物が多く、配達の際、
(1)建物1階の入口でインターホンを押して自動ドアを開けてもらう
(2)配達先の部屋のインターホンを押し、商品を受け渡す
と、届け先の部屋へ行く前に「関門」があるのがスタンダードです。

セキュリティーが厳しいところでは上記に加えて、「エレベーターホールの前でもインターホンを押す」というステップを踏んで、ようやく商品を渡すなんてこともあります。

さらにセキュリティーが厳しいところでは、エレベーターで到着したフロアにもインターホンがある建物があり、受け渡しまでに4回インターホンを押すこともあったりします(ちなみに、これまで配達した中で一番インターホンの関門が多かったのは6回でした)。

住人は、自動車で使うような電子キーを持っていて、インターホンの下にある読み取り部にキーをタッチするだけでOKなのでスムーズに「関門」を通過していきますが、われわれ配達員は大変です。

そんなセキュリティーのしっかりしたマンションへ配達したときのこと。とある酒屋さんから缶ビール24缶を持って配達に行ったマンションは、4回インターホンを押すタイプ。商品を渡してマンションを出ると、また同じ酒屋さんからの配達依頼。しかもまた缶ビール24缶。届け先は同じマンションの同じ部屋。

ウーバーイーツでは注文の量が多すぎる場合、配達員が複数人で手分けして商品を運ぶシステムになっているのですが、どうやら近くに配達員が私しかいなかったらしく、再び同じところへの配達依頼が来たようです。というわけで、先ほどと同様に4回インターホンを押したのですが、住人の方はインターホンからため息が聞こえるなど、明らかに面倒臭そうな感じの対応でした。

さらに缶チューハイ24本、ワイン5本、氷3袋&乾き物と、同じ配達先へ5回届けたのですが、届けるたびにストレスがお溜まりのようで、最後の商品を渡したときはこちらをにらみつけておりました。20回とはいえ、注文された方はインターホンが鳴ったら「解錠」のボタンを押すだけ。20回も「ウーバーです」との声とともにカメラの前で笑顔を作る方が面倒だし、にらみつけたくなるような案件なのになぁ......なんて思いはもちろん押し殺しておりましたが。

タワーマンションの中には、管理事務所で入館の手続きをして、配達員や引越し業者などが使う業務用エレベーターで部屋へ向かうところもあります。

業務で出入りする人の通路をひとつにすることで安全性を高めるのが目的だと思うのですが、業務用エレベーターはどのマンションも1台しかありません。20階建てほどのマンションなら1台でもさほど支障はないのですが、50階建てのマンションで1台、しかも引っ越しなどの作業が重なると、マンションに入ってから部屋にたどり着くまで10分を超える時もあります。

以前、引っ越しシーズンに配達した際、管理事務所で手続き(その際、住人の方に管理事務所脇にあるインターホンを使って到着の連絡をします)をして、業務用エレベーターへ行ったら、「開延長」の表示が出たっきりエレベーターが36階から降りてこず、なんだかんだで届けるまで15分かかったときは、注文した方から「何やってんの?」と怒られました。

住んでいる方は低層階、中層階、高層階専用のエレベーターが何台もあり、建物に入ったらすぐに自分の住むフロアへ行けるので、裏側のことはあまり知らないのでしょう。そもそも自分でセキュリティーの高い物件を「選んで」住んでいるのだから、メリット、デメリットくらいは把握しておいてほしいものですが、注文される方に商品を渡す際、その思いももちろん押し殺しております。

この業務用エレベーターを使って届けるシステムは、ほとんどのマンションの場合、管理組合がルールを決めるようで、ウーバーイーツなどを利用する人が多いマンションでは「フードデリバリーの配達は住民用のエレベーターを使ってOK」というルールにしているところもあります。もし、ウーバーイーツの配達員が部屋にくるまで時間かかってるなと感じるようでしたら、管理組合に配達ルールの変更を提案することをおすすめします。

このようにマンションにはいろんなシステムやルールがあるのですが、最近、湾岸エリアのタワーマンションを配達していてたまに見かけるのがエレベーターの故障の張り紙。

見ると「エレベーター自体は問題ないが、電子キーを読み取る機械が故障している。修理を依頼しているが半導体不足で部品の調達ができず、いつ直るかわからない。やむをえずエレベーターのセキュリティーシステムは解除して防犯上ゆるくなったので注意してね」とのこと。1ヵ所だけならともかく、3、4ヵ所でみかけたので、こんなところにも半導体不足の影響があって、深刻なようです。

●渡辺雅史(わたなべ・まさし) 
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。

★『チャリンコ爆走配達日誌』は毎週木曜日更新!★