採取した皮膚から、全て手作業で肌細胞を抽出して培養していく(写真提供/株式会社セルバンク)

はたからは「年齢よりも若い」と見られても、本人が「老けた」と思うか思わないか――。男女問わず、そこが永遠の問題らしい。

実年齢49歳とは思えない若いルックスとされる「週プレNEWS」貝山弘一編集長も最近、ほうれい線が気になり始めたという。

そこで、まず前回(『ヤケドの治療から始まった! 肌の再生医療の第一人者が手がける最新アンチエイジング』)紹介したのが、アンチエイジングの最先端治療である「肌の再生医療」。その体験取材をさせていただくことになり、編集長もノリノリ…だが、そこでまず内心ドキドキの出来事が待っていた?

■治療はインフォームドコンセントからスタート

向かったのは、医学博士・北條元治(ほうじょう・もとはる)先生の「肌の再生医療」を専門に手がける、「RDクリニック」

最初に治療の流れを説明すると、[カウンセリング]→[血液検査]→[皮膚採取・細胞培養]→[肌細胞移植1回目]→[肌細胞移植2回目]→[定期検診]となる。

皮膚の培養にはおよそ1ヵ月を要し、肌細胞の移植は1回目と2回目で1~3週間空ける。カウンセリングから2回目の肌細胞移植まで約2ヵ月ほど必要で、美と若さを追求するにもそれなりの時間はかかる。

というわけで、この日はまず[カウンセリング]だ。病気やアレルギーなどに答える問診票に続いて、今回は北條先生自らの問診がスタート。気になる箇所を聞かれた貝山編集長は、「ほうれい線と手首のシワですね」と即答。

手首? 事前に聞いていた記者だが、実はなんの話をしているのかサッパリわからなかった。当日やっと納得。確かに手首には鎖のように横断するシワが若干走って見えるが…。こればかりは本人が気になるかどうか。

「意見を聞かれて『気にならないですよ』と伝えることはありますが、どちらにしても本人の希望によるものですからね」と北條先生も苦笑。

とりあえず、どこに治療を施(ほどこ)すかは施術前に持ち越すことに。続いてカウンセリングは、肌の仕組みから衰える理由などの説明へ…。

■だからシワができる! 肌は中から変えないと若返らない

肌は、「表皮」と「真皮」の2層構造。表皮は厚さ約0.1ミリだが、外部からの刺激や乾燥から真皮を守る役割を担っている。そのため、とても頑丈でどんな美容液も真皮まではなかなか通さない。真皮は厚さ約2.0ミリ。表皮と皮下組織を支えて肌の張りを保つ役目を持っている。この真皮の肌細胞によるメンテナンス機能がしっかりしていれば、若々しい張りがある肌を保つことができるのだ。

肌は2層構造。真皮にある肌細胞が肌全体のハリや潤いを保っているのだ(イラスト提供:RDクリニック)

どこまで治療しても本人にしかならない

ところが、歳を重ねるほど真皮の成分の70%を占めるコラーゲン繊維が減少。肌細胞のコラーゲン合成力は20歳を超えると減少が始まり、50歳を超えると20歳の頃の約半分(!)まで減少するというのだ。コラーゲン繊維が老朽化すれば脆(もろ)く切れやすくなる、そうなると表皮を支える力も衰え、肌からハリが失われてシワ、たるみの原因となってしまうというワケ。

メンテナンスとして高級な美容クリームを塗りこんでも、表皮のメンテナンスはできるが真皮に届くまでには至らない。コラーゲンの食材を摂取しても、そのまま真皮のコラーゲン繊維になるわけではないのが現実。真皮の老化を自力では覆(くつがえ)せないのだ。

■減った肌細胞を増やせば、肌は再生する!

また、真皮を支えるのは、ハリと弾力をもたらす「コラーゲン繊維」、保湿をして表皮の潤いにも関係する「ヒアルロン酸」、肌に弾力性と保湿を持たせる「エラスチン」など。これを生成してメンテナンスするのが、肌細胞だ。シワやたるみができるのは、この肌細胞が減少するか、老化して機能しなくなることに他ならない。そこで今回、体験するのが「肌の再生医療」である。

自身の皮膚から抽出した肌細胞を取り出し培養、それをシワやたるみなど気になる箇所に注射で移植。それによって、肌組織が改善されて肌そのものの機能が若返るというものだ。

カウンセリングは治療の説明や効果、リスクを丁寧に説明していく

北條先生「美容整形は別のものを新しく付け加えたりクリエイトするものですが、うちでやっているのは1回失われてしまった機能をとり戻すという治療。そう考えると『肌の再生医療』は美容医療というより一般的な医療に近いですね」

続いて、リスクについても説明してもらう。肌細胞は注射で移植されるため、施術翌日はその箇所が腫れたり赤みが出ることもあるとか。また注射の痛みを軽減するために消毒や麻酔クリームもするが、稀(まれ)にアレルギーが出る場合も。とはいえ、これまで深刻なトラブルが起こったことはないそうだ。

北條先生「使うのは本人の細胞なので、どこまで治療しても本人にしかならないということです(笑)」

美容整形の場合、一度でもすると、次を求めてしまうためゴールがないとも言われている。しかし、自らの細胞を使う「肌の再生医療」は自分以上の自分にはなれないということ。あくまでも自身の細胞の力で少し前の若い自分に“戻れる”というニュアンスなのだ。

改善された効果は無くなることはないが、老化が止まるわけではないので、2~3年ごとの移植を勧めているとのこと。また最初に大量に培養した肌細胞は凍結保管をすることで、数年おきに若い頃の細胞で施術することもできる(コースによって料金プランが異なる)。

皮膚を採取した箇所から出血が…

■いよいよ治療スタート。皮膚を採取する!

さて、カウンセリングに引き続き、行なわれるのが採血――。

血液検査では、梅毒、B型肝炎、C型肝炎の他、さらにHIV、成人T細胞白血病の感染まで厳しくチェックされる。これらに罹患(りかん)していた場合は治療を受けることができない。

血液検査で不適格になるのが一番、心に強いダメージを受ける? というわけで、今回の体験取材でもっとも緊張した面持ちで神妙な貝山編集長

血液検査の結果が判明するのには約1週間かかる。次のステップに進めるか、体験取材が中止になるか…(主に貝山編集長が「シャレにならないよ~」と憂うつ顔)。今回、心臓がマックスでドキドキのシチュエーションだ。

判定結果は…無事にクリア! 後日、いよいよ皮膚を採取する日となった。

再び来院。検査判定を胸をなで下ろしながら聞いた後、早速、肌細胞を培養するため皮膚を耳の後ろから採取する。

皮膚は耳の裏から採取する。大きさはだいたい米粒大くらいだ

北條先生耳の後ろは、最も紫外線などのダメージを受けていない箇所なんですね。採取するのは米粒ほどの大きさ。傷跡はほどんどわからないくらいです」

麻酔を注射してからメスで皮膚を切り取り、跡は溶ける糸で縫う。ものの5分程度の短さで、当日からお風呂に入り、髪を洗うこともできるとのこと。

メスを入れられる時も特にイヤそうな雰囲気もなく、痛みに強いのか終了後もいつもと変わらなかった編集長だが、実はその後…。

採取した皮膚。ここから肌細胞を取り出し、1万倍に増殖するのだ

まだ血が出るんですよ。枕に血がついたり。糸も溶けるって言っていましたけど、なんか引きつれる感じもして…」

2週間経過しても、なお皮膚を採取した場所から血が出るという。風呂あがりに耳の中を強く拭きすぎて傷を引っ張ったとか、寝てる間に無意識に掻いたとかでは……と思った記者だが、超不安そうな本人を前には言えず。

さらに約2週間後、細胞の移植当日に確認したところ、結論としては傷の治りが遅かっただけ。糸もちゃんと溶けているということでひと安心。

1回目の肌細胞移植を前に細胞の増え方も上々と聞いて、ご機嫌になった貝山編集長。いよいよ次回は施術の模様をリポートする!

取材協力/北條元治先生医学博士、東海大学医学部外科学形成外科学 非常勤講師、RDクリニック顧問。『医者が自分の家族だけにすすめること』(祥伝社)、『保湿とUVケアだけが美肌を作る』(青志社)、『びっくりするほどiPS細胞がわかる本』(ソフトバンク クリエイティブ)など著書も多数

「RDクリニック新宿」都内は銀座、三田、新宿の3ヵ所、大阪、名古屋など全国7ヵ所で「肌の再生医療」を受けられる。料金システムや詳細はRDクリニックまで http://www.rederm.com/

(取材・文/渡邉裕美 撮影/五十嵐和博[カウンセリング、採血分]、榊智朗[皮膚採取、北條先生分]