自動車メーカー各社が初売りセールでしのぎを削った1月。なかでも軽自動車は各社が力を入れているだけに、近年は様々な特典が付くようだ。
しかし、もっとお得な買い方があるーー。それは時折、店頭に出てくる「未使用車」に注目すること。自動車ジャーナリストの遠藤徹(とおる)氏が解説する。
「軽を含めた自動車は、基本的に販売店がユーザーから注文を受けてメーカーに発注して、それに基づいて生産します。ただ、それだけだと生産計画がスムーズに遂行できないので、販売店は数ヵ月先(一般的には3ヵ月先)の販売台数を予測して見込み発注をします。それでも、予測通りに売れるとは限りません。
その場合は売れ残ってしまうので、会社名義でナンバーを取得して、名目上“中古車”にして中古車業者に流したり、自社の中古車展示場などに並べて売るわけです。それが一般的に“未使用中古車”とか“新古車”と呼ばれています。
これが各メーカーや販売店の台数稼ぎに使われるケースは以前からありました。ですが、最近はダイハツ、スズキ、ホンダを中心に軽の販売競争が激化しているので、特に軽で増えており、一説には軽の新車販売台数の10~20%が未使用中古車で占められる…という見方もあるくらいです」(遠藤氏)
遠藤氏によれば、最近目立っている未使用中古車の銘柄は、ダイハツだとタント、ムーヴ、ミライース、ウェイク、スズキはワゴンR、スペーシア、ハスラー、アルトエコ、ホンダはN-BOX、Nワゴン、N-ONEなどだそうだ。つまり、軽の人気モデルばかりだ。
「これらの未使用中古車は新車より15万~20万円ほど安く、走行距離は50km未満が多い。展示すると1週間以内で買い手がつくケースがほとんど」(遠藤氏)というから、狙っている軽の未使用車に運よく出会えたら、速攻で動くべし!
値引き交渉は月末がお得?
ちなみに、現在の販売店は年がら年中セールをしている。だから、初売りだからといって、ほかの時期のセールと比較して特別にお得なわけではなかった。
「ただ、セールと称するからには、販売店各社は販売目標を定めてそれをクリアしようと頑張ります。ですから、初売りセールもうまく活用して、サービス企画だけでなく、値引きのさらなる拡大や下取り価格の上乗せを目指すといいでしょう。相手には目標があることを見越して、あえて目標達成の秒読みに入る月末に交渉決着をもっていくと、大幅値引きがゲットできたりもしますよ」(遠藤氏)
当たり前だが、1月の初売りの翌月は2月である。2月といえば、クルマの最大商戦「年度末決戦」の幕開けでもある。初売りをキッカケにセールスマンをつかまえて、あえて腰を据えて長期交渉して年度末に持ち込む…という高等戦術もアリか?
また、軽といえば、今年の4月に登録される新車から「軽自動車税」が増税となる。軽自動車税は1年に1度ずつ支払うもので、現行の年7200円から1万800円(自家用・乗用の場合)と、1.5倍に引き上げられるのだ。当然、3月までにナンバーをつけられれば軽自動車税の税額は従来どおりのままなので「駆け込み需要」も予想される。
「1.5倍の増税といっても、金額にすると年間3600円。また増税ショックの緩和策として、2015年度に販売される新車の軽自動車のみ、特例としてグリーン減税も適用されます。昨年の消費税ショックのような混乱はないと思っています」(某軽メーカー担当氏)
しかし、どうせ買うならわざわざ高い軽自動車税を払うのは愚かだ。3月いっぱいのナンバー取得を目指すのは当然!と考えている人は多数いるわけで、特に人気車種を狙っているなら、そろそろ動き始めないと「納車が間に合いません!」という事態にもなりかねない。
今年の軽の初売り商戦…というか、軽商戦は、いよいよこれからが本番。メーカーもユーザーも健闘を祈る!
(取材/佐野弘宗)