トヨタは1月30日、2017年から世界ラリー選手権(WRC)に参戦すると発表した。

1999年をもってWRCでのワークス活動から撤退した同社にとって、これは実に18年ぶりの復帰となる。

参戦マシンは、60ヵ国以上で販売される小型車ヤリス(日本名ヴィッツ)のWRC専用バージョン。車両開発はドイツに本拠を置き、かつてのWRC参戦時にも車両開発を担当し、現在は世界耐久選手権出場カーを手がけているトヨタのモータースポーツ子会社、TMGが行なう。

トヨタが初めて国際的なレースカテゴリーで存在感を示したのは、実はWRCだった。90年と92~94年にはドライバーズタイトルを、93年、94年にはマニュファクチャラーズ(製造者)タイトルを獲得するなど90年代前半のWRCでは強豪の一角だったのだ。

だが、そんな過去の栄光があるにせよ、なぜここへきて、WRCへの復帰を決めたのか? ラリー専門誌『RALLY PLUS』の中山潤哉編集長が言う。

「WRCは17年から新しい車両規定に変更されるのですが、それがちょうど、ヤリスのモデルチェンジのタイミングと重なるようなのです。一新された世界戦略車種がWRCの舞台で露出することが格好のアピールになると考えたのでしょう」

現在のWRCは車両規定の関係で、2ボックスのファミリーカーがベース車両になっている。次期ヤリスのPR手段としてWRCを利用するのは、確かに悪くないアイデア。が、そうしたドライなビジネス上の判断だけが理由ではないようだ。

「豊田章男社長はモータースポーツ好きで知られていますが、この3年ほどは自身で国内のラリーに出場したり、WRCを視察に訪れるなどラリーに対する関心が高まっていました。そうしたトップの意向も少なからず影響しているはずです」(中山氏)

参戦発表会見で語っていたが、章男社長はWRCを市販車開発の場としても活用していきたい考えのようだ。

WRCで勝つための鍵

だが、やはり一番気になるのは、実戦での勝算。ここ2シーズンは、フォルクスワーゲン(VW)が圧倒的な強さを誇っている。しかも、ベースとなっているポロは市販車でもヤリスをはるかに上回る評価を得ているのだが…。

「VWが盤石の強さを見せている最大の要因は、強力なドライバーをそろえているからです。それに現在のWRCカーは外見こそ市販車と似ていても、中身はまったくの別物。だからベース車両の性能が成績に直結するわけではありません」(中山氏)

さらに、その改造内容も規定でがんじがらめにされていて、年々各メーカー間の性能差が出にくくなっている。

「とはいえ、車両開発能力の高さは不可欠なのですが、TMGには前回参戦時のスタッフも残っていて、その点でも不安はない。トヨタはいきなりトップドライバーと契約するより有望な若手を起用し、チームとともに成長させながらじっくり力を蓄えていく方針のようですが、私は参戦初年度から快進撃する可能性も低くはないと思いますよ」(中山氏)

かつての黄金時代の再来はなるか?