スマッシュヒットとなったスズキ・ハスラーを筆頭に、ハイトワゴンやスーパーハイトなどの定番ではない個性派…いや、もっとハッキリ言わせていただくと「イロモノ軽」がドカドカと出てきた。
ハスラーに続いて昨年末、デビューしたホンダN-BOXスラッシュ(以下、スラッシュ)やダイハツ・ウェイクがその代表格だ。売れ筋モデルとは一線を画す、個性あふれるデザインや使い勝手に走破性で、フツーの軽じゃ物足りない人たちに好評となっている。
思い返してみれば、こうしたイロモノ軽がもてはやされた時代が昔もあった。その典型がバブル時代である。
当時はホンダ・ビートにスズキ・カプチーノ、オートザムAZ-1といった軽スポーツがほぼ同時に出て、スズキ・アルトワークスや三菱ミニカ・ダンガンなどのホットハッチがパワー競争を繰り広げた。
面白いクルマが出てくる時代には、共通点がある。
まずは市場全体にイケイケの成長機運があって、そこに地力のあるメーカーがひしめいた時である。まさに、今の軽市場もいまだ右肩上がりの成長市場であり、ビッグ4がお互い一歩も譲らないガチンコ状態である。規模や経緯は違っても、今の軽業界はかつてのバブル時代に似ていなくもない。
今、一番新しい「イロモノ軽」
さらに、今春には軽自動車税の増税が待っている。消費増税フィーバーから時間もたっておらず、「今回は大きな影響なし」と言い切るメーカーが多い。しかし、こういう不透明時代にこそ、自動車メーカーは「利益率が高くて、指名買いしてもらえる高付加価値商品を造りたい」と思うもの。最近やけにイロモノ軽が増えたのは、こうした時代背景が無関係ではない。
そんなイロモノ軽で今、最も新しいのがホンダのスラッシュだ。ベースは車名どおりのN-BOXで、もともとムダに広かったN-BOXの頭上空間をスパッとチョップトップ。同時に生活くさい(!)スライドドアをやめて、代わりに隠しノブのスイングドアとした。
インテリアは昔のSMXというかトヨタbBというか、ちょっとラブホな雰囲気(失礼!)と重低音ドンスカの高出力オーディオも用意するカップル空間である。
元はボンネットや窓のベースラインが高いN-BOX。全高はほぼハイトワゴン級でも、やけに窓が小さいが、それがスラッシュ最大のキモ。最初のアイデアは社内デザイナーが手遊びで描いたスケッチだそうだが、社内でやけに好評だったので商品化に踏み切った。
スラッシュはさらに伝統のアメリカンカスタムの手法を取り入れて、カラーバリエーションやアクセサリーもテンコ盛りに用意。それがいちいちオッサンに懐かしく、若造には新鮮なのだ。
スラッシュは走りに特化したクルマではないが、Nシリーズそのものが年を追うごとに改良されており、スラッシュの乗り心地や静粛性はビックリするほど良い。新型ムーヴにも驚いたが、高級感や落ち着きでは、スラッシュが現時点で軽随一。この走りだけでも買う価値アリかも。
(取材/佐野弘宗 友清 哲 取材協力/森 慶一)