6月20日に発表されたばかりの5代目スバル新型フォレスターを、早速試乗したのでリポートしよう。
ただし、実際の発売は2.5リットルが7月19日から、そして新たに誕生したe-BOXERを搭載したAdvanceは9月14日の発売となるから注意!
そんな事情もあってナンバープレートがまだつかないため、試乗は静岡県伊豆市の日本サイクルスポーツセンターというクローズドコースとなった。
すでに今年3月のNYモーターショーでワールドプレミアされ、その後もさまざまなショーで披露されてきたフォレスター。ウェブ上ではけっこう話題になっており、「現行型と比べて変わった感じがしない」といった意見も多い。確かに河口も、「デザインはややコンサバティブかな?」と感じていたことを告白しよう。
しかし、今回の試乗会で初めて太陽の光の下で新型を見て、その印象は確実に変わった。実際、新型のほうがはるかに洗練され、クラスがひとつ上がった感すらあり、たたずまいには落ち着きが漂っていた。
その理由は、これまでよりいっそうワイドに見えるからだ。新型は全幅は数字的には20mmの拡大だが、全高は先代とほぼ同じとなる。その結果、全幅と全高の比率で今までよりもワイドに見えて、低く構えて踏ん張った感じが増したわけだ。
さらに全長も15mmしか伸びていない。にもかかわらず、横から見ると新型は先代よりも前後方向に伸びやかに見える。
これはボディサイドに入るキャラクターラインなどが生み出す効果。これがタフで力強い印象を生み出し、現行型にない落ち着いた雰囲気を出している。インテリアも同様で、先代と比べると各部が洗練された上で力強さやSUVらしさが増した。
こんな具合で実際に見ると、デザインに関してはむしろ「先代と似ている」という印象はない。むしろ、いっそう飽きのこない新デザインへと進化した。
最初に試乗したのは、2リットルのボクサーユニットにマイルドハイブリッドを組み合わせた話題のe-BOXER搭載のAdvanceというグレード。事前の予約で、ユーザーの約4割が注文したという超人気モデルだ。
2リットルのボクサーユニットは最高出力145馬力、最大トルク19.2kgmを発生。そしてこのエンジンとトランスミッションの間に、最高出力13.6馬力、最大トルク6.6kgmを発生するモーターを組み合わせる。このシステムはXVハイブリッドも使うのだが、フォレスターは電池がリチウムイオンに変更され、出力がわずかに増したのが特徴なのだ。
発進および低速走行ではEVモードでスルスルと走る。とはいえ、力強さにあふれる感じではない。しかしながらe-BOXERのモーターは、特に発進から低速でさりげなく実力を発揮する。エンジンが生み出す力に、プラスアルファのモリモリ感を加えてくれるのだ。
つまりe-BOXERの走りはこれまでのターボとは違う、最新の電動パワーユニットの味がある。軽快感があり、レスポンスもいい。実に魅力的で、街中や普段使いを重視する人には、e-BOXERをオススメしたい。
そしてシャシーに関しては、新たなSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)を用いた第3弾として成長を果たし、実に優れた走りを実現。
まず乗り心地はとても良いのが印象的。それだけに後席も含めて快適さは一段上になったと評価できる。またこれまで以上にどっしりと幅広のスタンスで地面に対して踏ん張る感じがあるため、全体的に1クラス上になったようなゆとりを感じる。
ステアリングのフィールも優れており、切り始めは穏やかなものの、切り込んでいくと頼もしい感触が得られる。
それだけに流して走っていると、SUVらしい悠々とした走り味と落ち着きある乗り味が感じられ、休日の遠出などの移動の時間を癒やしに変えてくれる懐の深さがある。
一方でワインディングを走らせると、想像以上にコーナリングに優れていて、実に爽快な感覚がある。特に日本サイクルスポーツセンターは、タイトなカーブが多いが、そうしたシーンでハンドル操作に対して、素直に向きを変える感覚が気持ちよかった。
今回試したe-BOXERを搭載したAdvanceは、しっとりとした落ち着きを伴った乗り味走り味が特徴だ。ちなみに2.5リットルエンジン搭載車はさらに軽快な走りであった。
●河口まなぶ
1970年生まれ、茨城県出身。日本大学藝術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌(モーターマガジン社)アルバイトを経て自動車ジャーナリスト。毎週金曜22時からYouTube LIVEにて司会を務める『LOVECARS!TV!』がオンエア中。02年から日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員