世界194の国と地域で累計285万台を販売したグローバルモデルの新型が先月20年ぶりに全面改良。すでに年間目標台数1万5000台をゆうゆうクリア!
なぜ新型ジムニーはバカ売れしているのか? 富士山麓で開催されたメディア試乗会で、自動車ジャーナリストの小沢コージが公道とオフロードコースでたっぷり試乗取材。さらに新型ジムニーの開発責任者、米澤宏之氏を直撃した。
* * *
―今回はずいぶんターゲットを絞ったということですが。
米澤 開発を担当することになり、あらためてジムニーを調べてみましたが、つくづくライバル不在です。ラダーフレーム付きでFRレイアウトで、副変速機がついている軽サイズの四駆なんて世界のどこにもない。そうなったらそれをトコトン生かそうと。
―はやりのSUVデザインなんて完全無視?
米澤 例えばお客様がたくさんいるトールワゴンなんかだとお客様の動向を細かく見るし、トレンドも見ますよね。でもジムニーはメカニズムが特殊ですべてが専用です。
そうなると開発にお金がかかるし、かといって台数が出るクルマではない。つまり、なるべく細く長く売りたいし、はやり廃りになるべく影響を受けない、機能で買っていただくクルマであるべきだと。
―今回の新型はどのくらいの期間売ろうと考えています?
米澤 最低でも10年は。もちろん、今は自動車の大変革期なので20年後にクルマ業界がどうなっているかなんて誰にも読めませんが、可能ならばそこまでは売りたい。
―今回、20年ぶりのフルモデルチェンジです。なぜ20年もモデルチェンジしなかったんでしょうか。
米澤 しなかったというか、できなかった。長い間に開発企画が上がっては消え、上がっては消えました。たとえ新作を出したとしても、売れる台数が変わるかって考えたら。
―今、バカ売れですが、実はそんなに気楽じゃないと。
米澤 そりゃそうですよ。だからこそ、ジムニーにはライバルがいないわけで。
―新型の開発でターゲットにしたクルマってあります?
米澤 ライバルはいないのでターゲットは常にジムニーです。過去を超えたクルマを造る。つまり最低地上高や乗り越え角度を最低でも過去以上にし、加えて走りを良くしようと。
具体的にはラダーフレームの強度を1.5倍に上げて、足回りのパーツの強度も上げて足元をしっかりさせた。さらにステアリングダンパーやフレームとボディの間にマウントゴムをつけて操安性、乗り心地を上げました。
あと、市場を見ると乗るのはほとんど1名か2名なんです。家族でジムニーに乗るシーンはほとんどありませんから、後席を倒すと、フラットな荷室になるようにしました。
―新型は先進機能も投入しましたね?
米澤 ええ。先進予防安全のデュアルセンサーブレーキサポートは基本、全車標準ですし、被害軽減ブレーキやハイビームアシストがつけられる。さらにブレーキLSDをつけることで悪路での走破性を良くしましたし、急下りも安心のヒルディセントコントロールもつけました。
―ぶっちゃけ、ほかのクルマに比べて割は合わない?
米澤 割が合わないとはまったく思っていません。それどころか社長も言っていましたけど、「ジムニーじゃなくちゃいけない! これが絶対欲しい!」と言われるものを造れるのはエンジニアとして本当にうれしい。
しかも20年に一度じゃないですか。社内でもこのクルマのモデルチェンジに立ち会えるのは貴重(笑)。何しろ48年間造って、その間4世代しかない貴重なクルマですから。