左足を負傷中のオザワだったが、メディア4耐の決勝では10台以上をごぼう抜きするまさかの離れ業を披露! その快速ぶりにピットはお祭り騒ぎとなった

初代ロードスター発売の1989年に始まり今も続く、マツダの良心とも呼べるレースイベント「メディア4耐」こと「第29回メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」。

当日の9月1日、茨城県下妻市の「筑波サーキット」には『ベストカー』など自動車専門のメディアが集結。毎年夏の終わりに行なわれる業界対抗レースだが、わが「チーム週プレ」は2年前より本格的にクルマ記事を再開し、11年ぶりに参戦がかなった。

実は週プレ、第1回から14回参戦し、優勝2回という名門なのだ。だが、今回は全27台中(リタイア1台)最下位というトホホな結果に!

というのもチーム週プレはある意味、ウソ偽りなしでおバカすぎる走れ正直者作戦でチャレンジ。メンバーは十数年、筑波サーキットを走っていないバラエティ自動車ジャーナリストの小沢コージがエース。そしてMT車もロクに操れない担当Kに、現在50代半ばのA部長。この2名は共にサーキット完全未経験。あとはジムカーナをカジった元・大学自動車部の2年目N。

しかも、あろうことか本番2ヵ月前に担当Kが左手の薬指を骨折。1ヵ月前にはオザワが重度の左足肉離れに。加えて今回Nがバカ正直にチーム週プレのマシンの面倒を見てくれる「ズィーツーオート」の代表である辻俊行さんをクソまじめにも助っ人ドライバーとして登録。

どのチームもプロドライバーをアドバイザー的に登録し、助っ人扱いなんてひとりもいない。おかげで一番速い辻さんが4時間中40分しか走れないことに......まっこと正直者ちゅうのはツラいのぅ! 

それに比べて他チームはとんでもない。約20年前に一度だけメディア4耐に出た小沢は知っているけど、ぶっちゃけドライバーの半分はほぼプロレベル。

もちろん、メディア4耐は高額賞金のかかった全日本格式レースではなく、エンジョイレースなのでそこまでガチじゃないし、マシンもわずか131馬力のノーマル状態のロードスター。ロールバーにビルシュタインダンパー、レースタイヤはついているけど、せいぜいそれくらい。

だが、ドライバーレベルはハンパない。今年だって全日本ジムカーナで前人未到の100勝目を達成した筑波マイスターの山野哲也に、元ベストカー編集者だが、ほぼ現役GTドライバーといっていい大井貴之(たかし)。同じくプロドライバーの松田秀士、桂伸一。

さらには元F1パイロットの片山右京までシレッと出場。いわば元W杯スキーヤーがそろうチャリティスキー大会に、スキー履いて数日のド素人がボーゲンで出るようなもん。

しかも、当日までにみっちり練習するつもりが、ドタバタの週刊誌なので、筑波じゃないミニサーキットを2日間走った程度。まさに超付け焼き刃状態での出場となり、オザワはドキドキ状態で本番を迎えた。

4時間耐久レースの時間割【8時30分 検査】 参加ドライバーはライセンス、免許証、レーシングギアなどの検査を受ける

実際、台風近づく9月1日の決勝日は最初からトホホだった。まず決勝前に30分走れる公開練習に担当K、A部長、2年目Nが10分ずつ出走。3人とも筑波サーキットを走るのも、新型ロードスターでサーキットを走るのも初体験。しかも雨降り模様である......。

トップが1周1分11秒台のところをNが1分21秒台、Kが1分27秒台、A部長が1分31秒台。すでに最大1周20秒も差がついているじゃんかよ! マジっスかぁ!

で、昼から始まった予選にオザワが出撃。トップが1分10秒台。遅れること3秒の1分13秒台でグリッド25位を確保。十数年ぶりの筑波サーキットとはいえ俺も遅すぎ!

【13時 予選走行】 10時15分から10時45分まで公開練習があり、13時前から予選走行。各チームエースを投入

16時スタートの決勝もこれまた不幸なことに直前に雨が降りだし、第1走者のA部長は安全走行で1周目から見事に最後尾。1周最大30秒差をつけられ30分後には早くもトップから3周差に。

だが16時半過ぎに神風が吹いた。クラッシュがあり、赤旗中断で今までの結果はチャラに! 17時過ぎからの実質3時間レースに。

【16時 レーススタート!】 写真は決勝スタート直前。チーム週プレのトップバッターはA部長が務めた

ところがここでチーム週プレは後々に響くミス戦略をチョイス。ここ数年、給油量の規制で燃費レースになっていたメディア4耐。要はみんな燃費を考えてあえてゆっくり走る戦略に出ていたのだが、残り3時間だけなら燃費は気にしなくていい。

だが、週プレは相変わらずマジメに燃費規制を続けたのである......。結果、17時過ぎから2番手で走ったオザワは最高エンジン回転数を6000回転に抑えたおかげでロクにジャンプアップもできずに20位台でKにバトンタッチ。

ここで辺りが暗くなり、急激に雨脚がきつくなる。当初は1周1分30秒台と頑張っていたKだったが、最終的には1分50秒台にまでガクンとペースダウン。

【18時30分 レース中盤!】 どんどん遅くなる担当Kのラップタイムをモニターで確認するオザワとA部長

【19時20分 給油】 最終走者が全開走行するため給油。ドライバーとピットスタッフが行なう

結果、4人目のNにバトンタッチする頃には断トツのビリに。こうなるともうお手上げ状態で、Nや辻さんが1分20秒台でなんとか食らいついても最後の20時過ぎのゴールの時点でトップから12周差の25位という完全無欠の最下位でゴールとなった。

とはいえ、明日への勇気も湧いてきたのも事実。急造素人チームでロクな準備もできなかったし、しかも途中で夜の豪雨レースになったにもかかわらず、一回もスピンせずに見事に完走できた事実と、レース後のメンバーの様子である。

【20時10分 レース終了】 残念ながら最下位でゴール。ただ、素人集団が無傷で完走できたのも事実である

特に初の筑波サーキットで初の雨天、初の夜レースですっかり心が折れたと思っていた担当Kは、「あれだけブチ抜かれりゃ悔しいし、ふがいない自分に怒りが沸いています。来年こそは1分20秒台を切ってリベンジします。俺、MT車買いますよ!」と燃えまくり。

さらに、ご老体のA部長も、「もう来月から毎月最低1回のサーキット練習を始めます。来年のメディア4耐は今、この瞬間から始まってるんです!」と大絶叫。タイム的にのびしろ十分な2年目Nはそもそもクルマバカで、愛車はMTなので特に心配はない。

こんな燃えるサイクルを素人レーサーにも植えつけることこそが、マツダがロードスターを造り続け、モータースポーツを浸透させたい理由に違いない。走るのが単純に楽しい。それがロードスターの魅力なのだ!