最近のマツダは頻繁に、「商品改良」を行なうようになった。理由は常にクルマを進化させることで、鮮度と魅力を落とさないようにするためで、なるほど素晴らしい心がけ!と思えるのだが、この商品改良の間隔が驚くほど短い。
通常の商品改良といえば、6年から8年のモデルライフの中で2、3度行なわれる。またスバルのように年次改良という手法をとっているメーカーは1年に1回というところもある。しかし、マツダの商品改良は最近、かなり頻繁に行なわれている。
実際に今年6月、日本を代表するスポーツカーであるマツダ「ロードスター」が商品改良を行なって、これを試乗したわけだが、今回の商品改良のメインであるロードスターRFは、前回は2017年11月にリファインされたばかり。それからわずか半年ちょっとで、もう商品改良を行なってきたのだ。
そもそも現行ロードスターが登場したのが15年。そして翌年にはリトラクタブルファストバックのロードスターRFが追加された。そして17年の商品改良では、足回りの改良を行なった。それから半年が過ぎての今回の商品改良では、ロードスターRFに搭載された2リットルエンジンの性能向上が図られた。
RFは電動開閉式の屋根を持つため、ソフトトップに比べて約100kgも重い。そのため、エンジンがソフトトップは1.5リットルだが、RFはその重さを補うため2リットルとなっている。
このロードスターRFだけに搭載される2リットルエンジンの最高出力はこれまで158馬力だった。それが今回の改良で184馬力となった。加えて大きいのは、最高回転数が6800rpmから7500rpmへと引き上げられたことだ。エコカー全盛の昨今、高回転化によってエンジンの気持ち良さを向上させる取り組みを行なうあたりはさすがスポーツカーを長く造ってきたマツダならではである。
実際に乗ってみると......確かに7500rpmまで回る気持ち良さがあった。だが、意外だったのはこの高回転化だけでなく、日常で多用する常用域でのフィーリングも大幅にリファインされていた。ピストンひとつ当たり27g、コンロッドひとつ当たり41g軽量化し、さらにバランスを見直したクランクシャフトやその他の細かな変更は合計23点!
これまでよりも700回転も回るようになった新2リットルエンジンはアクセルを踏み込むだけで、軽やかにタコメーターの針が上昇し、それと同時に気持ち良い加速が加わる。しかも、それは全開時だけの話でなく、街中で走る際にふとアクセルを踏み込んだレベルでも味わえるのだ。
そしてもちろん、高速の合流や料金所からの加速では、7500rpmまで爽快に回転が上昇する。また排気系に細かな変更を施し、サウンドも気持ち良い響きを伴うものになっている。
ちなみにこれまでロードスターはその歴史の中で、"気持ち良い"と評価されるようなエンジンが搭載されたことがなかったのも事実である。それがついに気持ち良いと表現できるエンジンが搭載されたと断言できる。
ちなみに、エンジンのパワーアップに合わせて、トランスミッションの制御も改善しており、MT車では加速時の初期応答タイミングを早めている。AT車ではシフトタイミングの最適化を行なっている。
そしてかなり地味だが、ステアリングにテレスコピック機構が備わったことも高く評価すべき部分。ロードスターのコックピットはタイトなだけに、これまでは大柄な人は、空間に体を合わせていた感があった。上下42mmのチルト機構に加え、前後30mmの調整ができるテレスコピック機構を備え、自由度の高いドライビングポジションを確保できるようになった。
そして安全面でもついに緊急自動ブレーキや車線逸脱警報などからなる予防安全パッケージ「i-ACTIVSENSE」を全車に標準装備。「走りを存分に味わえるスポーツカーこそ、最も先進の安全性能を備えるべきだ」と考えている僕からすると、これは高く評価できる。
また、「交通標識認識システム」、疲労軽減に役立つ「ドライバー・アテンション・アラート」などの運転支援システムも採用。ホイール色もブラックメタリックに変更、ピアノブラックのドアミラーとの統一感を高めているのもポイントだ。
こうした細かな商品改良が重ねられることで、確実に「進化」するとともに「熟成」がなされており、ロードスターというクルマに深みが増してた!
●河口まなぶ
1970年生まれ、茨城県出身。日本大学藝術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌(モーターマガジン社)アルバイトを経て自動車ジャーナリスト。毎週金曜22時からYouTube LIVEにて司会を務める『LOVECARS!TV!』がオンエア中。02年から日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員