「ロールス・ロイス ファントムに試乗してみませんか?」
と、この上なく身に余る申し出をしてくださったのは、ロールス・ロイス・モーター・カーズアジア太平洋北部地域広報マネージャーのミッチェル・ローズマリー氏だ。
僕、河口まなぶのYouTubeチャンネル『LOVECARS!TV!』で、ロールス・ロイスのフラッグシップであるファントムに試乗させてくれるというのだ。
そこでローズマリー氏に、「『週刊プレイボーイ』の連載ページでも取り上げたいのですがいかがです?」とお願いしてみた。すると、その返事は「ぜひ! うれしいです!」。さすが世界のロールス・ロイス。
早速、試乗と撮影の段取りを決め、待ち合わせ場所の東京駅に向かうと、ファントムとローズマリー氏のほかに、見知らぬ男性がいた。ローズマリー氏を見ると、「今回はせっかくなので、運転手付きでの体験もしてみてください」とさらに太っ腹企画に! 運転手付きのロールス・ロイス ファントムに乗るなんて人生初。この仕事をやっていて本当によかった。
さて、そんなわけでファントムの後席から試乗を始めたわけだが、まずはファントムのプロフィールを。今回試乗したファントムは、2017年にフルモデルチェンジした8代目だ。しかしながら現在のロールス・ロイス・モーターカーズは1998年にBMWが買収。そこから03年に先代ファントムは送り出された。ゆえに、今回の新型はBMWグループとなって2度目にして、実に14年ぶりのフルモデルチェンジとなった。
このモデルから、ロールス・ロイス専用の「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」と呼ばれる車台で造られることになった。これは今後、すべてのロールス・ロイス車で使われるもので、9月20日に公開となった最新SUV「カリナン」も同じアーキテクチャーを使っている。さらに電動駆動にも対応しているため、今後、ロールス・ロイスから電気自動車も登場するという。
ちなみにファントムのボディや窓はすべて二重構造! そしてフロアなどの二重部分にはフェルトが張られ、発泡材が充填(じゅうてん)され、遮音は徹底!
観音開きのドアにあるボタンを押すと、巨大な後席ドアが開く。目に飛び込んできたのは、豪華絢爛(けんらん)な内装である。乗り込んでドアを閉めると強烈に静か! さすが"世界で最も静粛なクルマ"といわれるだけのことはある。これは先の遮音材が相当に効いているようで車外の音はほぼ聞こえないレベル。聞けばファントム一台には、約130kgの遮音材が使われているそうだ。
そしてシートは見ただけで相当ゴージャスとわかる革が使われている。聞けばこの革を取るための牛は、蚊などの虫が生息しない標高の高い所で飼育され、牧場は牛が体を当てても傷つかない柵で囲われているという徹底ぶり。革の色はもちろん、内装色に至るまですべてがオーナーの好みで指定可能だ。
すべて自分好みで造れるクルマなのだ。ローズマリー氏も、「購入される方の多くはクルマを買うのではなく、別荘や美術品、投資などと同じような位置づけで購入を考えます。また事業の成功などの際に、自分へのご褒美として購入される方も多いですね」と話す。
シートに身を預けるとフワフワの極上。さらにアームレストの根元には、シャンパンクーラーが普通に備わる。そして天井を仰ぎ見ると......ナントそこには星空が! これはオプションで用意される「スターライトヘッドライナー」と呼ばれる装備で、職人の手によってLEDの星が1344個も埋め込まれている! しかもこの星空、自分が生まれた年月時の星空を再現することもできる。
さて、後席の試乗を堪能させていただき、つかの間の夢を見た後は、自身で運転した。
今回試乗したファントムは、通常のモデルよりも全長とホイールベースが長い、EWB(エクステンデッド・ホイール・ベース)。全長はほぼ6mだ。ホイールベースは3770mmだからコンパクトカーが収まってしまう。これでも先代モデルから比べると10cm近く短くなっているという。
豪華装備や遮音材の関係で車重は2750kgと超ヘビー級。しかし搭載エンジンは6.75リットルのV型12気筒ツインターボ。最高出力は571馬力。100キロ到達は5.4秒! 操作フィーリングはすべてが極上タッチだった。気になる走行風景は僕のYouTubeチャンネル『LOVECARS!TV!』で確認できるので、ぜひご覧ください!
●河口まなぶ
1970年生まれ、茨城県出身。日本大学藝術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌(モーターマガジン社)アルバイトを経て自動車ジャーナリスト。毎週金曜22時からYouTube LIVEにて司会を務める『LOVECARS!TV!』がオンエア中。02年から日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員