ソフトバンクとの自動運転技術会社設立など、新事業に取り組む豊田章男社長。「自動車メーカー」からの脱却近し?(写真/トヨタ自動車) ソフトバンクとの自動運転技術会社設立など、新事業に取り組む豊田章男社長。「自動車メーカー」からの脱却近し?(写真/トヨタ自動車)

11月1日、トヨタ自動車は国内メーカー初となるサブスクリプションサービス「KINTO(キント)」を、来年初めから開始すると発表した。

サブスクリプションサービスとは、月ごとに定額料金を支払うことで、好きなときに好きなだけ利用できるというもの。近年、音楽や動画の新たな利用方法として注目されている。クルマの場合なら、販売店で好きな車種を選び、乗り放題といった感じだ。

豊田章男社長は「必要なときにすぐに現れ、思いのままに移動できる、まさに『筋斗雲』のように使ってもらいたい」と、命名の由来を説明。

利用できる車種や月額設定などの詳細は未定だが、料金には保険料や税金、車両メンテナンス料も含まれるそうだ。

でも、そんな簡単にうまくいくものなのだろうか? モータージャーナリストの小沢コージ氏はこう分析する。

「このサービスは、トヨタにとって大きな挑戦だと思います。もちろん、お客さんにクルマを楽しんでもらいたいというのが第一義ですが、年々減少している国内年間販売台数150万台死守の意味合いも大きい。

この数字を本国で守り続けることは、日本で始まったトヨタのモノ作りを守るという意味もあります。そのためにも、このサービスを始めることで自社での登録(=販売台数にカウントされる)を増やし、数字をキープしようとする意図はあるでしょう。

さらに、トヨタは4系列ある販売チャネルを今後実質的に統合していくことで、どの店舗でも全車種を扱うようになります。そこにKINTOを導入することで、サブスクリプションやカーシェアなどの次世代サービスに全国の販売店を順応させようとする狙いもあると思われます」

では、気になる料金設定はどうなるのか。レクサスに乗れるという話もあるが......。

「予想ですが、メンテナンス代などがかさみ、けっこう高くなるのではないかと。ある程度の車種数に乗れて、月額10万~20万円前後とか。初期費用を抑えられる点は魅力ですが、長い目で見たら買ったほうが安いかもしれない。

なので、新しいモノ好きの富裕層やよほどのクルマ好きにしか需要はないかもしれないですね。

たとえるなら、高級ホテルのランチビュッフェ! 財力があって、思わずあれもこれも食べる人には一定の需要があるのかもしれません」

確かに、日常的にクルマ移動をする地域なら、中古で50万円の軽を買えば、あとは税金などの諸費用が年間数万円で済んでしまうから、そっちのほうがはるかにおトクだ。

ちなみに国内では、中古車販売店ガリバーの運営会社IDOM(イドム)によるサービス「NOREL(ノレル)」が、独自の中古車販売網から仕入れた優良な中古車を使い、最低月額1万9800円という安さで利用できるプランを実現している(現在は優良中古車の供給が追いつかず、新規募集を停止中)。

海外では、すでにメルセデス・ベンツやポルシェ、BMWなどのメーカーが、一部地域でサービスを開始している(BMWは月約12万円から。ポルシェは約22万~34万円)。

激化が予想される新たな移動ビジネス競争。メーカーでは日本初の参入となるトヨタはリードできるのか?