今年50周年を迎えた三菱デリカ。11年ぶりの新型は、国内最狂のゴツ顔に。街乗りなら「D:5アーバンギア」(左)、アウトドア志向なら「D:5」(右) 今年50周年を迎えた三菱デリカ。11年ぶりの新型は、国内最狂のゴツ顔に。街乗りなら「D:5アーバンギア」(左)、アウトドア志向なら「D:5」(右)

三菱は11月21日、デリカ新型モデルの受注を全国で始めた。今回の大改良の狙いは何か? 開発責任者・尾崎行信氏にじっくり聞いてきた。

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■07年の発売以来、最大の改良を加えた!

――まさに「激変!」って感じの顔の新型ですが、実はマイナーチェンジなんですね?

尾崎 ええ。ただ、かなり手を加えたので、今回はビッグマイナーチェンジかなと。

――改良前と比ベパーツはどの程度変わったんですか?

尾崎 6割ですね。

――この新型は三菱オリジナル? それともアライアンスを組んでいる日産との合作?

尾崎 今後はアライアンスとのシナジー効果が徐々に出てくるとは思いますが、今回出したデリカに関しては三菱のオリジナルです。

――率直に聞きます。どうしてこんなゴツ顔にしたんですか? 責任者として、このゴツ顔を見た瞬間に「よし、コレだ!」となった?

尾崎 いや~、最初は驚きましたよ、「えっ」ってなりましたから。相当インパクトのある顔になったので(笑)。

改良前はこんな穏やかな顔 改良前はこんな穏やかな顔

――やっぱし。

尾崎 ただ、見慣れてきたら「コレはコレでアリかな?」と思いました。

――正直言って現行のデリカユーザーはこのデザインに困惑すると思いますが、今まで三菱に目がいかなかった層への訴求はできる気がします。どうですか?

尾崎 そのとおりです。新型デリカは新規ユーザーを取り込むのが命題です。そこを意識しないと、次にデリカがフルモデルチェンジするためのお金がためられない。

――このゴツ顔を売って開発費を稼ぐ必要があると。要するにゴツ顔は数を売るため?

尾崎 売らないとフルモデルチェンジできませんから。

――顔が2種類ありますね。これはどういう意図ですか?

尾崎 「D:5」はアウトドア志向の方に、「アーバンギア」に関しては街乗りを中心とした使い方だけど、いざというときはアウトドアもいける。そういう位置づけです。

――どちらが売れると予想されているんですか。

尾崎 D:5ですね。アーバンギアは価格が高めですし、既存のアウトドアユーザーはD:5かなと。まだ価格は詳しく言えませんが、385万円から425万円を予定しています。

「LEDのヘッドライトを縦長に配置。そして排気量2.2リットルのディーゼルエンジンのATを6速から8速へ変更したのも見どころ」と語る三菱自動車 製品開発本部 プロジェクト開発 マネージメント部 主任の尾崎行信氏 「LEDのヘッドライトを縦長に配置。そして排気量2.2リットルのディーゼルエンジンのATを6速から8速へ変更したのも見どころ」と語る三菱自動車 製品開発本部 プロジェクト開発 マネージメント部 主任の尾崎行信氏

――なるほど。で、今回の大改良で最も気になった点がエンジンですよ。ディーゼルが搭載されていますが、三菱が世界に誇る「PHEV(プラグインハイブリッド)」を搭載していません。これはどうしちゃったんですか?

尾崎 気持ちはわかります。

――だってアウトランダーPHEVは大容量1500WのAC100V電源が用意されています。AC100V電源があれば、家庭用の電気製品をアウトドアでも使えます。しかも1500Wという容量は一般的な車載電源の10倍以上だから、ホットプレートも使えちゃう。アウトドアを楽しむ層が多いデリカユーザーはPHEVが絶対に欲しいはずです。

尾崎 その気持ちはよくわかります。ただ、理由がいくつかあるんですよ。

――教えてください。

尾崎 まずデリカにPHEVシステムを投入すると売価は500万円を軽く突破します。

――でも、アウトランダーPHEVのシステムはデリカに載ることは載るんですよね?

尾崎 いやいや、載せるにはかなりの改良が必要になります。いや、ホントに。

――どの程度の改良が?

尾崎 シャーシを変更しないとキツイと思います。仮に載せても重量は2t超になってしまうのでデリカらしさがなくなってしまうかなと。

――ということは、PHEVが載るタイミングはフルモデルチェンジ時ということ?

尾崎 ノーコメントでお願いします(笑)。ただ、考えてはいます。やはりアウトドアをされる方は野外で家庭用の電気製品を使えたら便利ですから。でも課題がいくつもあって、それをどう解消していくか考えなければいけない。

――なるほど。ちなみに新型の目標台数はどの程度を見込んでいます? 改良前のモデルは1000台をコンスタントに売っていましたよね。

尾崎 私が言うことじゃないかもしれませんが、願わくば月に3000台は売りたい。

――その数字は新型を見ると簡単にクリアできそうです。

尾崎 いやいや、厳しい数字です。ただ、それだけ売れたらとてもうれしいし、先ほどのフルモデルチェンジの話も具体化してくるのかなと。

――三菱の顔といったら50年の歴史を持つデリカだと思います。その認識で間違いはありませんか。

尾崎 国内ではそうですね。ただ、社の方針として電動化技術を掲げているのに、肝心の電動車がデリカにはない。そこがちょっと引っかかりますが(笑)、デリカが三菱の顔であり続けるようにしたいとは思っています。

――いっぱい売れて開発資金を稼いで、デリカにPHEVが載るときを楽しみにしています!!

◆【画像】で振り返るデリカの50年の歩み

初代・デリカ トラック(1968年) 同クラス初となる3人乗りが話題となったデリカの小型4輪トラック。エンジンは1.1リットルで58馬力を発揮 初代・デリカ トラック(1968年) 同クラス初となる3人乗りが話題となったデリカの小型4輪トラック。エンジンは1.1リットルで58馬力を発揮 初代・デリカ コーチ(1969年) このコーチは後に登場する「スターワゴン」「スペースギア」へと続くデリカ最初のワゴンモデルである 初代・デリカ コーチ(1969年) このコーチは後に登場する「スターワゴン」「スペースギア」へと続くデリカ最初のワゴンモデルである 2代目・デリカ スターワゴン(1979年) 1982年10月には小型キャブオーバー車としては、日本初となる4WDを追加搭載して話題をかっさらった 2代目・デリカ スターワゴン(1979年) 1982年10月には小型キャブオーバー車としては、日本初となる4WDを追加搭載して話題をかっさらった 3代目・デリカ スターワゴン(1986年) 軽量化とボディ剛性を狙って、デリカ初となるモノコックボディを採用 3代目・デリカ スターワゴン(1986年) 軽量化とボディ剛性を狙って、デリカ初となるモノコックボディを採用 4代目・デリカ スペースギア(1994年) 安全性を向上させるべく、フロントエンジンレイアウトを採用した 4代目・デリカ スペースギア(1994年) 安全性を向上させるべく、フロントエンジンレイアウトを採用した 5代目・デリカ D:5(2007年) 4WDシステムは前後輪へのトルク配分をコントロールする電子制御に 5代目・デリカ D:5(2007年) 4WDシステムは前後輪へのトルク配分をコントロールする電子制御に