せっかく苦労して取った運転免許証なのに、今はただの身分証明書でしかなくなっている......。でも本当は、もっとあちこち走り回りたい!
そんな20代男性ライターが一念発起し、ペーパードライバーを卒業すべく教習所や出張講習の"再教習"に挑んだぞ!
■いきなり路上は怖いからまずは一日教習所!
何を隠そう、自分は免許を持っているのに車を運転しない、ペーパードライバーだ。
普段は電車移動で事足りていても、車でないとアクセスしにくい絶品グルメの店にだって行きたいし、どこか旅に出たときも、公共交通機関の利用だけでは行動範囲が限られてしまっているのが現状。
そんな不自由な生活、いいかげんにうんざりしてきた!
そこで、3年前に地方の教習所の合宿で免許を取得してからガチで一度も運転していないライター(20代後半男性)が、意を決して"脱ペーパードライバー"に挑戦したリポートをお届けしよう。
まずは、数時間から1日で終わる、自動車教習所のペーパードライバー向け再教習を受けるのが賢明だろう。
だが、教習所にはとにかく怖かったという記憶しかない。何が怖かったかって、助手席に座る指導員から飛んでくる、容赦ないダメ出しだ。
ところが、ウワサによると、「ほめる教習」なるものを採用している教習所もあるらしい。ペーパードライバーにはピッタリなのでは!?
というわけで、埼玉の「羽生(はにゅう)モータースクール」にて、約5時間のペーパードライバー講習(入学金+普通車の5時間の講習で、税込3万2400円)を受けることにした。
指導員の渡辺挙同(たかとも)さん、よろしくお願いします!
「まず、基礎的な操作の復習から始めましょう。この講習を受ける皆さんは、けっこう忘れているものなんですよ」
教習車の運転席に座るものの、緊張で体が硬くなっているところに、優しく語りかけてくれる渡辺さん。シートの位置やハンドルの高さの調整方法、サイドミラーの合わせ方、シフトレバーのD・P・R・Nの使い方など、本当に初歩から再確認する形だ。
「では、教習所のコースを一周してみましょう!」
恐る恐るブレーキから足を離し、少しずつアクセルを踏み込むと、渡辺さんが早速、「スムーズに発進できましたね」とほめてくれた。
序盤こそカーブを曲がり始めるタイミングがつかめず、どうにもふらふらしてしまったが、コースを何周か回っているうちに安定してくる。あれ、意外とイケるんじゃ?
だが、その自信はいとも簡単に打ち砕かれた。S字カーブにチャレンジするも、後輪が縁石に乗り上げてしまったのだ。実は3年前も、S字カーブのせいで仮免試験に落ちた苦い思い出が......。
「でも、このミスのおかげで、前輪と後輪の"内輪差"を学べたんじゃないですか? 後輪は前輪よりも内側を通るので、もう少しハンドルをゆっくり切ってみましょう」
渡辺さんの励ましとアドバイスで過去のトラウマを払拭(ふっしょく)し、2回目でS字カーブへのリベンジに成功。さらには、クランクや縦列駐車といった課題をひとつひとつ丁寧にクリアし、3年間のブランクを確実に埋めていく。
「ペーパードライバーでも、実際に運転してみるとすぐに感覚を取り戻せる方は、たくさんいますよ。では、まだ時間があるので路上も走ってみますか?」
ろ、路上!? 予想外の提案だったが、教習所近辺は交通量が少ないと聞き、勇気を出してトライしてみることに。
路上を走っていると、教習所にはなかった道路標識がいくつも目に飛び込んでくる。
「この道は時速50キロまでしか出しちゃいけないんですよね?」など、不安に思ったことは渡辺さんにしつこいくらい質問していたのだが、「周りの情報をキャッチしようとする姿勢が素晴らしいですね」と、またもほめられてしまった。なるほど、これが「ほめる教習」か......!
「"叱る教習"だと、生徒さんは『指導員に怒られたくないから』という理由で、初歩的な質問をためらってしまったり、その場限りの反省しかしなかったりする場合もあるんです。
でも、『ほめる教習』なら、指導員に対して緊張しなくなるので、今のように遠慮なくいろいろな疑問を尋ねることができるから、不安も和らいでいくはずです」
「ほめる教習」サイコー! モチベーションが上がるし、もっとほめてほしいくらい。
そんなこんなで講習は終了。ちなみに、ペーパードライバーが日常的に運転できるところまで持っていくには、渡辺さんいわく「5~10時間の受講が目安」になるらしいぞ。
■隣にプロがいれば首都高も怖くない!?
翌週、ペーパードライバーを卒業するにはまだ心配だったため、希望の場所まで講師に来てもらい、路上で実践的な練習ができる出張講習の3時間コースに申し込む。
お世話になるのは、出張ペーパードライバー講習を行なっている「jetblue」代表の河津光晴さん。元レーサーという運転のプロだ。
新宿駅西口で待ち合わせをし、河津さんが用意してくれた車に乗り込む。なぜ新宿なのかというと、地方の合宿で免許を取得して以来、一度も東京の道を走ったことがないからである! 首都高を経由し、レインボーブリッジを渡るくらいの実績をつくっておかないと、ペーパードライバーから抜け出せる気がしない。
いざ走ってみると、羽生モータースクールの周辺を走ったときに比べて、明らかにハードモード! 人や車の通行量が段違いだし、車線も複雑。河津さん、東京ではこれが普通なんですか!?
「東京と郊外ではレベルがだいぶ違いますね。人がたくさんいると、道路を急に渡ってくるような人も現れやすいですし、それをどう把握するかが難しいところでしょう」
建設中の新国立競技場を横目に、外苑出入口からいざ首都高へ。加速車線から本線に合流する際のドキドキは半端なかったが、ハンドルに河津さんが手を添えてくれていたので慎重に対応できた。
その後もカーブやトンネルの多さにハラハラしつつも、目標としていたレインボーブリッジを無事に通過! 首都高を降りてお台場で休憩している間、河津さんに出張ペーパードライバー講習の反響を尋ねてみた。
「今回は遠出しましたが、自分の生活圏内で講習が受けられるというのが本来のメリットなんです。ご要望があれば皆さんのマイカーを使った講習も可能ですので、違和感なく練習をスタートできるはずです。
なお、私はママさんに教えるのがメインなのですが、30代の男性もよく担当します。お子さんの送り迎えに必要になったり、ひとり立ちするにあたり自分の車を買ってみたくなったりと、事情はさまざまですね」
そういえば、親から「何かあったときは車で病院に連れてってくれ」と頼まれたことがあったな。やはり運転ができるに越したことはないだろう。気を取り直し、お台場エリアで運転の練習を再開。帰り道も首都高を利用し、新宿まで戻ったのだった。
仕上げに、運転に対する恐怖心も薄れてきたので、恋人と......ではなく、男友達との日帰り鎌倉ドライブを計画。東京都心から神奈川県南部の海エリアへと高速で向かった。
出発から1時間。ここまでは順調に走り続けたが、横浜の狩場インターチェンジで、右から車が合流してくるイレギュラーな箇所があり、「ペーパードライバーに不親切だろ!」と、ついついキレてしまいそうになる。
下道に出てからも、救急車のために道を空けるなどの不慣れな状況に遭遇しつつも、どうにか鎌倉に到着した。
江の島をバックにしたサンセットのベストタイミング! 途中でトラブルが発生して時間をロスしていたら、この絶景は拝めなかっただろう。
多少のお金と時間はかかったが、思い切ってペーパードライバー講習を受けてみてよかったと、胸を張って言える。「あなたの決断は正解でしたね」と、「ほめる教習」ばりに自分をほめてあげたい!
さあ、世のペーパードライバー諸君よ、今こそ立ち上がれ! ペーパードライバーは恥ずかしいことじゃないし、ひとつずつステップを踏めば、脱出の糸口は必ず見えてくるぞ。
来年は車にガンガン乗って、行動の幅を広げようぜ!!
(取材協力/羽生モータースクール、jetblue)