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■2000万円クラスでトップを走るNSX

世界的に見てもまれなほど、狭い島国に自動車メーカーがひしめく自動車大国ニッポン! そんなニッポンのクルマの頂点にあたる2000万円オーバーのスーパースポーツカーは、今現在、わずか1車種のみが新車として販売されている。

そのモデルの名は、ホンダNSX。このジャンルは、欧州メーカーが主体となって、最新鋭の技術やクラフトマンシップを惜しみなく採り入れたモデルを登場させている。そうしたなかで、NSXはまさにホンダの技術の結晶ともいえる存在なのだ。

ちなみにこの2代目NSXは2017年2月から18年9月までの間に日本で400台を販売した。その数字は2000万円以上の2ドアラージクラスでナンバーワンの売れ行きを誇る。つまり、ライバルであるポルシェやランボルギーニに勝っているのだ。

18年10月、2代目NSXが登場から2年を迎えたタイミングで商品改良を施した。フロントバンパーはボディと同色に塗ることで、地を這(は)うように低くアグレッシブなイメージを強めた顔に変更。

新採用の塗装色「サーマルオレンジ・パール」は、初代NSXのイモラオレンジ・パールを彷彿とさせる艶やかなカラーリングで、スーパーカーとしての存在感を際立たせている。また、オプションで設定されているカーボンセラミックブレーキのキャリパーはレッドやオレンジにすることができるそうだ。

インテリアは、レッド、エボニー、オーキッド、サドル、そして新色のインディゴから選べる。インテリアデザインは改良前とあまり変わらない インテリアは、レッド、エボニー、オーキッド、サドル、そして新色のインディゴから選べる。インテリアデザインは改良前とあまり変わらない

2代目の発売当初に購入したオーナーがうらやむ変更点は、走りの"深化"であろう。動力源はV6 3.5Lツインターボエンジンに、前輪に2基、後輪に1基のモーターを組み合わせた「SPORT HYBRID SH-AWD」と呼ばれるホンダ独自のハイブリッドシステム。

今回の改良では、人間中心のスーパースポーツカーへとなるべく制御が見直されている。車両の運動能力を大幅に進化させたのは、前後のシャシーのロール剛性強化と磁性流体式のアクティブダンパーの採用だ。

街乗りにおける低速走行時は、ストイックなスポーツカー特有の突き上げを感じさせず、カーブの途中で路面のうねりを乗り越えたりしても、いやな揺すられ感がない。

体の芯(しん)を支えてくれるスポーツシートの出来映えもさることながら、走行中に目線がブレないフラットライドな走りは、タイヤが路面を丁寧にとらえて走るからで、ドライバーは「クルマをコントロール下においている安心感」と「クルマを操る楽しさ」を受け取ることができる。快適性も高く、女性をエスコートするドライブデートでも、車内で会話が弾むレベルに仕上げられているのもうれしい。

着座位置が低いスーパースポーツカーとして気になるのは、やはり車両感覚のとらえやすさだが、その点、NSXは運転席からの視界が想像以上に開けていたりと、安全面への配慮がうかがえる。

ドアミラーは根元を伸ばして外側に配置し、フロントガラスを支えるAピラーの柱と重なりにくい設計で、交差点の右左折などの際に死角になりにくい。また、フロントフード両端の峰が車幅をとらえる目安となって、狭い道で低くワイドなクルマを取り回す不安を減らしてくれる。

後部は、エンジンと荷室にあてられる。パワーユニットは、モーターと組み合わせた縦置き3.5LV6ツインターボ。音もエンジンも元気ビンビン! 後部は、エンジンと荷室にあてられる。パワーユニットは、モーターと組み合わせた縦置き3.5LV6ツインターボ。音もエンジンも元気ビンビン!

■トータル出力は驚異の581馬力!

箱根の三国峠にNSXを引っ張り出す。カーブを曲がるとき、車体を狙った位置にスッと持ち込める姿勢をつくりやすいことにも、ホンダの技術が息づいている。

そんな走りを実現しているのが、前輪左右の車輪の駆動力をふたつのモーターで制御する「トルクベクタリング」だ。平たく言えば、左右の車輪の動きをコントロールすることで、曲がりやすい姿勢づくりをサポートするもの。

今回の改良では、駆動力の特性が見直されており、カーブの進入で旋回性を高め、立ち上がりでは安定した姿勢とともに、これまでよりもワンテンポ早いタイミングで加速していく体勢に持ち込みやすくなった。

曲がりやすい姿勢づくりは、本来は熟練のドライバーがステアリングやペダルの操作などを駆使して行なうもの。その点、新型NSXの場合、こうした姿勢づくりをクルマが技術的にサポートすることでカーブの外側にはらみにくく、ドライバーはイメージした走行ラインを着実にたどりながら、運転する楽しさに没頭できる。

ともあれ、NSXのトータル出力は581馬力だ。みなぎるパワーを優れた運動性能をもって走らせていける感覚は、もはやトップアスリートの身体能力を手に入れた気分。

クワイエットモードにして、モーターのみで静かで滑らかに走りだすときは忍び足のように。スポーツモードでアクセルペダルを踏み込めば、エンジンパワー+モーターの後押しとともに体がシートに押しつけられ、圧倒的なトルクとサウンドで胸を高鳴らせてくれる。

ゆったり流すときも、ダイナミックな走りで持ち前のポテンシャルを発散する場面でも、特別なクルマに乗っている、そんな気分に浸らせてくれる。新型NSXは紛れもなく、スーパースポーツカーなのである。

週刊プレイボーイ増刊『クルマプレイボーイ』(2月21日発売)カラー特集『2370万円ホンダ最強スポーツカー新型NSXに最速試乗して開発責任者を直撃だ!!!』より