あのランボルギーニ初のSUVであるウルスに、ついに試乗することができた。ご存じのようにランボルギーニといえば、スーパーカーの代名詞。そんなブランドですらSUVに手を出す理由は、ビジネスになるから。周りを見渡せばSUVを出していないハイブランドはフェラーリ以外はない。だが、そんなフェラーリもSUVを開発中というウワサも。
さて、昨年2月に日本でも公開となったランボルギーニ初のSUVであるウルス。実は専用開発ではない。というのも、ランボルギーニはVW(フォルクスワーゲン)グループの一員であり、ここの資材を使うことができる。アウディQ7やポルシェカイエン、ベントレーベンテイガといったハイクラスのSUVは共通のプラットフォームを使用している。
ウルスもこのプラットフォームを活用し、開発されている。しかし、ウルスは泣く子も黙るスーパーカーブランドが送り出したSUVなので、このプラットフォームを使用するSUVの中で最高の、まさにハンパないスペックが与えられている。
搭載エンジンは他のモデルと共通の4リットルV8ツインターボエンジンだが、最高出力は650psで、最大トルクは850Nmという、超絶すぎる性能が与えられている。この結果、全長5112mm×全幅2016mm×全高1638mmという巨大サイズで、車重も2360kgを誇るスーパーヘビー級ボディーながらも、時速100キロ到達は3.6秒というSUV最速タイムを叩き出している。ちなみに最高速は305キロという強烈な数値を実現。こいつは相当なモンスターマシンだ。
見た目はSUVのフォルムながらランボルギーニワールド全開で、エッジの効いた角ばったデザインがそこかしこに展開される。そして圧巻はインテリア。ドアを開けてコックピットに収まると、そこにはメカメカしいランボルギーニならではのデザインが広がっている。
まず目の前には全面液晶のメーターがズラリで、アヴェンタドールやウラカンと同様のメーターデザインが展開される。まるでロボットアニメを彷彿(ほうふつ)とさせるようなグラフィックだ。
エンジンスターターボタンを押すと、ランボルギーニならではの獰猛なエンジンの雄たけびはない。やや大きめのボリュームのエグゾーストノートを伴い、エンジンが目を覚ます......ちょい拍子抜け。
走りだしてもコレが実にフツーで驚いた。アウディQ7、ポルシェカイエン、そしてベントレーベンテイガのどれと比べても間違いなく最もスポーティだ。どちらかといえば硬めの乗り心地ではあるが、それでもランボのアヴェンタドールやウラカンと比較すると、超極楽な乗り心地だ。
しかし、いざウルスを街中で走らせると、やはりその巨体を意識する。とにかく道路の幅を狭く感じてしまうのだ。特に高速道路の料金所ゲートでは、左右のゆとりの少なさをかなり意識する。
料金所からのダッシュはさすがランボルギーニのモデルである。アクセルを踏み込んだ瞬間、巨体の鼻先が一気に持ち上がり、逆にリアは地に着くかと思うほど沈み込んで猛然とダッシュするのだ。
とはいえ、ウルスは走りを語るクルマではない。存在感の大きさに価値があるクルマだ。ウルスを眺める。巨大な神輿(みこし)のようにも見えた。
●河口まなぶ
1970年生まれ、茨城県出身。日本大学藝術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌(モーターマガジン社)アルバイトを経て自動車ジャーナリストに。毎週金曜22時からYouTube LIVEにて司会を務める『LOVECARS!TV!』がオンエア中。02年から日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員