先月、山形県で開催されたスバルの雪上試乗会で、自動車ジャーナリストの塩見サトシが新型SUV「フォレスター」を試乗! 雪道での実力にがっつり迫ってきた!
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■新型フォレスターにターボを搭載せよ!
4WDをラインナップするメーカーは毎年1、2月にこぞって雪上試乗会を開催する。その場合、クローズドの特設コースが用意されることが多い。コース(路面)の状態を管理しやすい、あるいは安全であるなど、さまざまな理由があるのだろう。
そんななか、スバルはここのところ公道で雪上試乗会を開催している。「クローズドコースではリアルワールドでの使い勝手をチェックしてもらえない」というのが彼らの言い分だ。広報戦略的に見れば、クローズドコースでの試乗会が多いなかで(写真のバリエーションを確保しやすい)公道試乗会を実施すれば目立つという目算があるかもしれないが、どうあれ悪路走破性に自信があるのだろう。
というわけで、昨年の青森県の酸ヶ湯(すかゆ)に続き、今年は山形県肘折(ひじおり)温泉で雪上試乗会が行なわれた。酸ヶ湯、肘折といえば、2000年以降の積雪ランキングで1位、2位の場所だ。
われわれの試乗車にはフォレスターのe-BOXER(ハイブリッド)とガソリン仕様が割り当てられた。実を言うと、これまで現行フォレスターについて、新世代プラットフォームがもたらす乗り心地やハンドリングなどは素晴らしいが、パワートレーンについては不満だった。
2リットル4気筒ターボエンジンを搭載した従来型のことをパワフルな実用車として大いに気に入っていたのだが、新型はハイブリッドのパワーアシスト(アシストしてくれる量も時間も)が足りず、またガソリン2リットル自然吸気はそもそも眠い。ざっくり言えば両方ともパンチがないのだ。路面を選ばずパワフルで、かつ実用的であってこそスバルのはずなのに。
今回雪上をロングランしてみて、多少印象が変わった。降雪時にはワイパーが届く範囲外に雪がこびりついて視界が狭まるし、積もった雪で道路幅も狭められている。そんななかを滑りやすい状態で走行することになるため、雪上ドライブは普段よりも確実に緊張を強いられる。
そういう状況では、パンチを求めている場合ではなく、アクセルの特性は適度にマイルドなほうが助かるし、ステアリングも神経質すぎないほうがいい。フォレスターはまさにそういう特性で、雪上でとても扱いやすく、長時間運転しても変に肩が凝ることもなく、同乗者と会話を楽しむ余裕もあった。
今回、開発者との会話のなかで感心させられることがあった。彼らは車両開発時に実際にチェーンを装着した状態で雪上をテストしているという。例えば前輪にチェーンを装着する場合、グリップ力は確実に向上するものの、前後のグリップバランスが崩れるという弊害も起きるのだが、それを軽減するようにシステムやタイヤをチューニングし、オプション設定するチェーンの銘柄も開発者が実際にテストして選んでいるという。
スタッドレスタイヤ全盛の時代にここまでチェーンのことも考慮するとは。彼らはこうした考え方を「総合雪国性能」と称していたが、人々がなんとなく抱いているスバルの特徴をうまく言い表した言葉だと思った。
ただ、雪とは無縁の地方の人にまで薦められるプラスαが欲しい。それはやっぱターボでしょ、スバルさん!