スイスで開催されたジュネーブモーターショーが超濃厚だったと話題だ。現地でがっつり取材した自動車ジャーナリストの竹花寿実(たけはな・としみ)が、独断と偏見で最強カー5台を決定してくれた。忖度ナシの最強グルマに刮目!
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――3月17日閉幕したジュネーブショーは、予想外に盛り上がったようですね。
竹花 ここ数年は世界中のモーターショーで規模縮小の傾向が顕著だったのですが、ハイパーカーやスーパーカーであふれていました。
――EVも多かったとか?
竹花 たくさん出展されました。市販モデルも多数お披露目されて、欧州のメーカーが電動化に向かって突き進んでいるのを印象づけていましたね。その一方で、今回で自動運転の話は一段落といった感じでした。
――なるほど。では竹花さんが独断と偏見で選んだベスト5をお願いします!
竹花 第1位はブガッティのラ・ヴォアチュール・ノアールです! とにかくスペックと価格が飛び抜けているので1位にしました。
――なんだか真っ黒ですね。
竹花 フランス語で「黒いクルマ」という車名です。ナマで見ると超カッコいい!
――どんなクルマですか?
竹花 ベースは1500PSの8リットルW16クワッドターボを搭載したブガッティ・シロンです。詳細は不明ですが、性能もシロンと同等なら最高速度は420キロ(リミッター介入)になります。
――うはーっ、420キロ!
竹花 車両価格は税別で1100万ユーロ(約13億8000万円)で、ビジネスジェット機のホンダジェットの2倍以上です。日本で買えば、消費税だけで88万ユーロ(約1億1000万円)になります。生産台数は1台のみで、すでに売約済みです。
――価格も超ド級! 続いて2位は?
竹花 ピニンファリーナのバッティスタです。EVのハイパーカー代表として2位にランクインさせました。
――これまたいかにも速そうな見た目ですね。
竹花 フェラーリをはじめ、数多くのスーパーカーを手がけてきたピニンファリーナらしい美しいデザインです。車名は同社の創業者バッティスタ・ファリーナから名づけられています。
――性能は?
竹花 速いです。最高出力が1900PS、最大トルクは2300Nmで、2秒未満で時速100キロに到達し、12秒以下で300キロに。
――2秒未満は強烈です! お値段も強烈?
竹花 世界150台限定で、価格は200万ユーロ(約2億5000万円)前後になる見込みです。1位に比べれば格段に大衆向けです。
――大衆向けって......。
竹花 (無視して)3位はラゴンダ・オールテレイン・コンセプトです。圧倒的な存在感で3位にランクインです。
――コレはミニバンですか?
竹花 4人乗りのスーパーラグジュアリーEVです。とにかく巨大で全長7mくらいでしょうか。アストン・マーティンが保有するラゴンダブランドの復活第1弾になるもようです。昨年も同様のコンセプトカーが披露されたのですが、今年はトレンドに合わせてSUVテイストに進化しました。
――7m......。市販予定は?
竹花 2022年に生産開始だそうです。中東あたりの大富豪が好みそうです。
――石油王御用達カー!
竹花 4位は新興メーカーのピエヒ・マーク・ゼロです。創業者のアントン・ピエヒ氏は、フェルディナント・ポルシェのひ孫だそうです。
――どことなく往年のポルシェを連想させるスポーツカースタイルでホッとします。
竹花 でもこのクルマも前後に203PSの電気モーターを搭載した4WDのEV。3.2秒で時速100キロに到達。EVの航続距離は500kmで、わずか4分40秒でバッテリーを80%充電可能という点は画期的です。
――わっ、なんかEVの充電問題が解決しそうですね!
竹花 5位はイスパノ・スイザのカルメンです。超個性的なデザインに注目です。
――クセ強ッ!
竹花 イスパノ・スイザは第2次大戦前のスペインの高級車メーカーですが、2005年にフランス企業の下で復活しました。今回のカルメンは1019PSの最高出力を誇るEVスーパーカー。年末から19台を生産予定。価格は税別150万ユーロ(約1億9000万円)です。買います?
――買えません!
●竹花寿実(たけはな・としみ)
1973年生まれ。東京造形大学デザイン科卒業。自動車雑誌や自動車情報サイトのスタッフを経てドイツへ渡る。昨年まで8年間、ドイツ語を駆使し、現地でモータージャーナリストとして活躍。欧州車のスペシャリスト