BMWの新型Z4は多くのクルマ好きが気になっているモデルだ。というのも、このZ4、間もなく登場するトヨタの新型スープラと共同開発されたクルマだからである。
トヨタとBMWがタッグを組んで兄弟となったスープラ とZ4は、オーストリアのマグナ・シュタイヤーの工場で生産される。ちなみにこの工場では、あのメルセデス・ベンツのGクラスも生産されている。マグナは昔からそれほど台数が多くない特殊なモデルをたくさん手がけてきた。
そんな場所から生み出されるスープラとZ4の中身はBMWのメカニズムとなる。ならばまだ日本デビューを果たしていない新型スープラの実力もはっきりわかるはず。
ということで、3月25日にニッポン導入が発表され、同日に販売が開始されたZ4に早速、試乗させてもらった。
ちなみに、僕・河口まなぶは新型スープラのプロトタイプもサーキットで試乗済みだ。早速、新型Z4に乗ってどう感じたかというと、「Z4はこれまでのBMWとちょっと違ったテイストのクルマになっていた」というのが第一印象だ。
では、何がこれまでのBMWと違うのか? ズバリ言うなら、「乗り味、走り味が違う」と断言してしまおう。
それってトヨタと共同開発したからBMWテイストが失われたってことか?と、誰もが思うだろう。コレについて僕は、それも理由としてはありそうだと思っている。
具体的に、どんな走りなのか? まず言えるのはこれまでのBMWよりも、乗り心地がいい。そう感じる。そして、これまでのBMWの中では最も過激な操縦性だ。
今回のZ4は、先代よりも全幅がワイドになった一方で、ホイールベースは逆に短くなっている。これはスポーツカーとして理想的でシャープなハンドリングを実現する方向であり、それはつまりスープラの狙う世界観でもある。2台は兄弟だから、そうした寸法は同じ。だからこそ、新型Z4はこれまでのBMWのテイストからすれば、回頭性の鋭い、シャープなマシンに仕上がっている。乗り心地がいいのに鋭いハンドリングでもあるのだ。
これまでBMWはどちらかといえば、乗り心地はややハードにした上で、鋭すぎず鈍すぎずのハンドリングを実現してきた。しかし、今回はそれと違う。当然、乗り味も走り味も今までとは違う。
しかし! そうはいっても使われるパーツをはじめ、すべてはBMWの設計だ。だからハンドルやペダルの操作感に始まるフィーリングは、やはりBMWの味なのだ。なのでややこしい話だが、カラダに伝わるフィーリングはBMWテイストだが、クルマの動きはこれまでと異なるため、これが融合した結果、「今までと違うテイスト」と感じるわけだ。
クルマの命はエンジンとも言えるわけで、ここに関しては真正のBMWテイストにあふれている。3リットルの直列6気筒ターボエンジンの極めて滑らかな回転感と気持ちいいサウンドは、これぞBMWと言えるものだった。
新型Z4はオープンカーながらも、実に鋭い切れ味を持ったスポーツカーであった。が、スープラの試乗でも似たような感想を抱いた気がするのも確かなのだ(笑)。
●河口まなぶ
1970年生まれ、茨城県出身。日本大学藝術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌(モーターマガジン社)アルバイトを経て自動車ジャーナリスト。毎週金曜22時からYouTube LIVEにて司会を務める『LOVECARS!TV!』がオンエア中。02年から日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員