VWポロは世界で最も有名なハッチバックであるゴルフの弟分として1975年にデビュー。3代目から日本に導入されるようになった。
弟分だけにどの世代も同時代のゴルフよりもコンパクトだが、ゴルフが大きくなるにつれてポロもそれなりに大きくなり、6代目の現行型は全長4075mm、全幅1750mm、全高1440mm、ホイールベース2550mmと、4人家族のファーストカーとしても機能するサイズに。
現行型は2018年に1リットル3気筒ターボエンジンを搭載したノーマルモデルと2リットル4気筒ターボエンジンを搭載したGTIの2種類で登場した。やや動力性能の開きが大きなラインナップだったが、今年1月、その間を埋める1.5リットル4気筒ターボエンジンを搭載したRラインというモデルが追加された。
Rラインの価格はノーマルモデルのハイラインが267万9000円、GTIの348万円の真ん中よりも少しノーマル寄りの298万円。カーナビは別料金だ。
ドイツ車はコンパクトカーであっても速度無制限区域のあるアウトバーンをバビューンと飛ばせないと話にならない。鋭い加速が求められるわけではないので必ずしもハイパワーは必要ないが、ハイスピードに耐える骨格は不可欠というわけだ。ドイツ車の堅牢(けんろう)さはハイスピードなお国柄によるものというわけだ。
加速重視のクルマづくりを優先しないため、ドイツ車のベーシックグレードをゴー&ストップの多い日本、特に都市部で使うとかったるさを感じることもある。従来のポロのベーシックなほうに積まれる1リットル3気筒ターボは、多段ATと組み合わせられていることもあって、決してかったるいとは言わないが、活発でもない。
かといってGTIは前述したとおりなかなかよいお値段なので、そこまでいらないという人も多いはず。Rラインはそういう人のためのモデルといえる。
新開発の1.5リットル4気筒ターボは最高出力150ps、最大トルク250Nmと十分なパワースペックを持ち合わせ、一方で低負荷時に2気筒を休止して燃費を稼ぐ優等生エンジンで、ゴー&ストップの多い日本でも痛痒(つうよう)なく走らせることができる。カタログ燃費は17.8㎞/リットル(JC08モード)とまずまず。
最も得意とするのはやはり高速巡航で、スタビリティが高くとにかく安心感が高いため、高速道路を長時間走らせても疲労が少ない。
ノーマルモデルとの差別化はエンジンだけにとどまらない。電子制御式デフ、スポーツサスペンション、リアディスクブレーキ(ノーマルはドラム)など、GTI寄りの装備が備わる。
こうした装備から引き締まった足回りを想像する方もいるかもしれないが、2段階のダンパー特性のうちノーマルを選んでいる限り快適そのものだ。いやスポーツを選んでいても硬いわけではない。スポーティー=硬い足というのはもはや完全に過去のハナシなのだ。
じゃポロはどのグレードを選ぶべきかといえばミもフタもないが、GTI、Rライン、ノーマルの順にオススメしたい。スポーティーモデルを選ぶことで失う快適性がほぼないことと、失う燃費性能もわずかだからだ。予算いっぱいのモデルを選んで間違いない。
●塩見サトシ
1972年生まれ、岡山県出身。関西学院大学文学部卒業。1995年に山陽新聞社入社。『ベストカー』編集部を経て、04年に二玄社『NAVI』編集部に入社。09年『NAVI』編集長に就任。11年に独立。執筆媒体多数。ラジオやイベントの司会なども手がける。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。公式Twitter【@Satoshi_Bagnole】