北欧を感じさせる独自のクルマづくりとともに、世界中のクルマファンにため息をつかせるほど、モダンで魅力的なプレミアムカーを続々とリリースしてきた新世代のボルボ。
ここ最近のSUVブームにおいては、ミドルクラスのSUV「XC60」やコンパクトSUVの「XC40」がバックオーダーを抱えるほどの人気ぶりだが、その一方で、エステート(ステーションワゴン)モデルも地道に、しっかり造り続けている。
オフロードで頼りになる走破性という点では、SUVの車内の広さや最低地上高の高さは魅力的に映るが、日常生活の運転を考えると、少しばかりその大きなボディを持て余すのは否めない。
そこで、ワゴンモデルの洗練されたシルエットと、アクティブに乗りこなせる地上高を絶妙にバランスさせているのが今回ご紹介するV60クロスカントリーだ。4月に発売された新型は、これ見よがしの押し出し感はなく、余裕のある大人に似合う。
平たく言えば、ワゴンのV60の最低地上高を65mm高めたもので、V60クロスカントリーの最低地上高は210mmもの空間を確保する。
それでいて、全高は1505mmにとどめられている。ホイールアーチをふちどるモールディングはオフロードを想起させるもので、各部のパネルは緻密に組み上げられている印象。全体を洗練されたイメージに引き立てている。
インテリアはV60と同様にハイセンスで都会的。車両の設定操作はインパネ中央の大型モニターの中に集約。スイッチ類の数は最小限に抑えられており、多くの機能はタッチパネルで操作するもので、一歩先の未来を感じ取れる。
実用面では荷物の積載性も高い。全高が低めの設定となるため、ルーフレールに趣味の道具をくくりつけることもできるし、車内に道具を積み込む際は、60:40の分割可倒式のシートをアレンジすれば、長さが180cm程度の長尺物をのみ込むだけのキャパシティを備えている。
エステートのV60の走りは、スポーティで引き締まった走りを披露する印象といえたが、V60 クロスカントリーは足元の動きがしなやかで4名乗車の状態でも、意のままのラインをトレースして走れる優れた操縦安定性は健在であった。
2リットル直4のパワーユニットは、いったん車速が乗ってしまえば、低回転を維持しながら静かにゆったりと流すことができる。踏み込めば、滑らかに力がみなぎる印象で、レスポンスよく力を絞り出すことで、軽快に走れるイメージに変わっていく。上まできめ細やかに回る回転フィールはガソリンエンジンならではの持ち味といえそうだ。
ボルボといえば、独自の安全哲学とともにクルマづくりを行なうメーカーとして知られているが、このモデルについても数々の運転支援機能が標準装備されている。運転のストレスや不安を払拭してくれそうだ。
ちなみに今回の試乗車は白いレザーインテリア。シート表皮はパーフォレーテッド加工が施されたナッパレザー。ヒーター、ベンチレーション機能、さらにはマッサージ機能も備えていた。
気になるスタートプライスは549万円からだが、どこから見ても1000万円級のクルマとしか思えないゴージャスで、洗練されたモデル。このクルマを選べるオーナーは相当な目利きといえそうだ!
●藤島知子(ふじしま・ともこ)
1975年生まれ、神奈川県出身。文教大学女子短期大学部英語英文科卒業。01年にスーパー耐久のレースクイーンを経験。その翌年からレーサーに転身。国際C級ライセンスを持つ。テレビ神奈川『クルマでいこう!』にレギュラー出演中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員