これはまさに電気自動車(EV)のスポーツカー! ついに登場したジャガー初のEVであるⅠ-PACEを試しての第一印象は、このひと言に尽きる。
なぜ、そう感じたのか? それは何より走らせたときのハンドリングが、まさにジャガーならではのスポーツテイストだったからだ。
僕・河口まなぶは仕事柄、実にさまざまなEVに乗ってきた。が、そのほとんどは静かで滑らかで力強いという、モーターで走るクルマならではの感触をまず伝えてくるものだった。例えばテスラは強烈な加速力を持っていたし、アウディe-tronは圧倒的な静粛を実現していた。
しかし今回はどうだ! 走らせた瞬間、このⅠ-PACEは鮮烈なスポーツカー的ハンドリングを見せつけてきたのだ。要はEVらしさより先に、スポーツカーのような乗り味、走り味がビシビシ伝わってきたのである。
もちろんⅠ-PACEもEVだから、当然のように先に記したEVの特徴である、「静かで、滑らかで、力強い」を備えている。その上でしっかりスポーツカーなのだ。
実際にスペック的に見ても、このⅠ-PACEは前後輪にそれぞれひとつずつ与えられた合計ふたつのモーターによって、最高出力は400馬力、最大トルクは696Nmという、ガソリンエンジンだとV8ターボ並みのパワー&トルクを発生する! そしてこれにより、時速100キロ到達タイムは実に4.8秒という俊足を誇る。だからI-PACEは動力性能的に見てもほかのEVに負けない。
そして静粛性の高さに関しても、さすがにアウディe-tronの驚異的な静粛性にはかなわないものの、テスラと同等レベルは備えている。ガソリン車と比較すると、かなり静かである。
さらに乗り心地は滑らかなことこの上なく、街乗りではアクセルを少し踏むだけで、スッと上品に前へと進んでくれる。
しかしながら印象的なのはハンドルを切ったときの感覚だ。今回試乗したⅠ-PACEはエアサスペンションを備えていたワケだが、エアサスならではの極上の乗り心地を実現しながらも、ハンドルを切るとボディがシャープに反応して気持ちよく向きがくるりと変わる。
22インチという超巨大なタイヤ&ホイールを装着するにもかかわらず、路面からの突き上げや衝撃は可能な限り丸め込んでおり、それでいてハンドル操作に対しては反応に優れているのだからさすが!
さらにつけ加えると、Ⅰ-PACEはEVだから、ガソリンエンジンのクルマよりも車両重量は重く、実際に2250kgとなる。しかしながら実際に乗るとこの重さを感じるどころか、むしろ2250kgと聞いて驚くほどしなやかな身のこなしを披露する。このあたりはまさに、「ジャガーならではのスポーティさ」をEVでもしっかり実現。
ちなみに、ジャガーが初めて開発を手がけたEVであるⅠ-PACEは、昨年3月に世界初公開され、同年9月にはニッポンで受注開始となった。発売と同時に世界中で絶賛の嵐となり、「欧州カー・オブ・ザ・イヤー2019」など各賞を戴冠。気になる航続距離は438kmで、85分で80%まで充電可能だ!
●河口まなぶ
1970年生まれ、茨城県出身。日本大学藝術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌(モーターマガジン社)アルバイトを経て自動車ジャーナリスト。毎週金曜22時からYouTube LIVEにて司会を務める『LOVECARS!TV!』がオンエア中。02年から日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員