輸入車で最も売れているSUVは泣く子も黙るドイツ勢で、メルセデス・ベンツやBMW、アウディなど、揺るぎない存在感を放つブランドばかり。
一方で、"隠れたモテ系SUV"としてオススメしたいのが今回ご紹介する、ボルボ XC90です。
XC90は7人乗りの3列シートを備えたボルボの最上位に当たるSUV。現在のボルボを象徴するフロントフェースは、北欧神話の武器「トールハンマー」をモチーフにしたヘッドライトやボルボのエンブレムを配した大型のフロントグリルが特徴で、ワイドに構えたボディが堂々たる風格を漂わせています。
それでいて、どこかフォーマルなイメージは、迫力で勝負するドイツ勢とは一線を画す、ボルボらしい品格があふれる一台といえるでしょう。
車内に乗り込むと、北欧の風を感じさせるモダンでラグジュアリーな空間にウットリ。武骨なSUVとは違い、リラックスできる環境が整っています。
仕立ての良いレザーシートは座り心地がよく、天然の素材感を生かしたウッドはインパネやシフト周りの広範囲に採用。リモコンキーまでレザー仕立てが用意されているなど、ハイセンスな仕上がりになっています。
インターフェースも先進的で、エンタメ機能や車両設定はインパネ中央の大型モニターで操作が可能。手持ちのスマホと連携すれば、端末にメモリーした音楽を再生したり、Googleマップなどのアプリも利用できます。
先進運転支援機能も充実していて、快適でご機嫌なドライブをさりげなくサポートしてくれるあたりに大人の包容力を感じます。
試乗したのは、「XC90 D5 AWD Inscription」のエアサス搭載車。「D5」はボルボで最も高出力な2リットルのディーゼルターボエンジンで、235馬力、480Nmの分厚いトルクを発生するもの。今年3月に追加設定されたモデルです。
低回転時に落ち込むトルクを補うために、トルクのレスポンスアップを促す「パワーパルス」と呼ばれる仕組みが新たに採用されています。
2tを超える車重でありながら、走り出しは実に滑らかでスムーズに前に出ていける感覚。「パワーパルスの効果は走り出しだけ」と言われるものの、そのわずかなサポートがクルマの身のこなしに作用して、ストレスのない走行フィールを与えてくれます。
驚かされたのは乗り心地の良さで、まるで絨毯(じゅうたん)の上を走っているかのよう。ディーゼルが生み出した力をうまく引き出す8速ATの制御も相まって、アクセルペダルはひと踏みで欲しいだけの力を得られるから、車速もコントロールしやすい。
全幅は1.9mを超える割に、運転席にはさりげなく車両の傾きや幅がとらえやすい設計が施されていて、狭い道を走るときもひと回り小さいクルマを運転しているような、プレッシャーが少ないのもうれしいところ。カメラ画像を駆使することで、見えない死角を補えるのも安心感につながっています。
彼女や家族を乗せてドライブするとき、余裕をもってハンドルを握るアナタの姿はきっと包容力のある大人の男性に映るハズ。ボルボのフラッグシップSUVは、乗り手の株を引き上げてくれること請け合い。まさに、隠れたモテ系SUVといえるワケです。
●藤島知子(ふじしま・ともこ)
1975年生まれ、神奈川県出身。文教大学女子短期大学部英語英文科卒業。01年にスーパー耐久のレースクイーンを経験。その翌年からレーサーに転身。国際C級ライセンスを持つ。テレビ神奈川『クルマでいこう!』にレギュラー出演中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員