スクータータイプの電動バイクはすでに存在するが、またがって乗るロードスポーツ系は、このハーレーダビッドソンが世界初。早速、アメリカで試乗してきたぜぇ~!
■3秒で時速100キロ! 快速電動車の実力とは!?
バイク好きでなくてもハーレーダビッドソンの名を知らない者はいないだろう。コカ・コーラと並んで世界一ぎんぎんな米国産ブランドだ。誕生したのは1903年。以来、1世紀以上にわたり、Vツインエンジン特有のはじけるサウンドと男がたぎる鼓動感で世界中のファンを魅了。
だが、ここにきてその流れが大きく変わってきた。バイクユーザーの高齢化が日本でも取り沙汰されているが、その波はハーレーにも及んでいる。彼らの主要マーケットである先進国でも若い世代のライダーを育てていくことが急務になっているのだ。
加えて世界的な排ガス規制の強化など、化石燃料を燃やして走るクルマが今後はEV(電気自動車)に置き換わっていくのは時代の趨勢(すうせい)。ならばと、新時代のリーダーとなるべく電動化への先陣を切ったのがハーレーであり、その第1弾がLiveWire(ライブ・ワイヤー)というわけだ。
ちなみにLiveWireとは送電線を表す言葉だが、転じて活動的でエネルギッシュという意味もある。まさに電光石火の走りをイメージしたネーミングといえる。
前述したように、ハーレーといえば......という強烈な固定イメージがあるが、それは彼ら自身も当然わかっている。開発者の話では従来のハーレーの象徴だったVツインエンジン同様、空冷フィン付きの巨大バッテリーとシルバーに輝くモーターユニットを、今後展開していく電動ハーレー・シリーズの新たなアイコンとして育てていきたいようだ。
さて本題。今回、米国の西海岸にある静かな街、ポートランドで開催されたLiveWireの国際試乗会に参加してきた。実は2015年にプロトタイプが発表されてはいたが、量産市販車としては今回が初お披露目である。
未来的だがどこかレトロな雰囲気を持った不思議なデザインに惹(ひ)き込まれる。実車は想像していたよりコンパクトで、特に車体のスリムさには驚いたが、一番の特徴はやはりパワーユニットだろう。
大容量リチウムイオンバッテリーと最高出力150馬力を発揮する水冷式モーターの組み合わせにより、なんと3秒で時速100キロに到達する! これはガソリンバイクでいうと1000ccクラスのスポーツモデルに匹敵するスペックだ。
電動バイクの強みは出足のよさである。瞬間的に100%のトルクを引き出せる電動モーターの特性によるところが大きいが、それだけではない。クラッチもミッションもないため、発進時もアクセルをひねるだけでよく、半クラに失敗してエンストしたり、シフトミスを気にする必要がない。
ぎんぎんの加速がどこまでもシームレスに続くのだ。さらに言うと、蓄電するための回生ブレーキ(エンジンブレーキに相当)が強力に利くため、街を流す分にはブレーキ操作すらいらないほど。この感覚は四輪のワンペダルドライブに近いかも。とにかく操作がシンプルでイージーなのだ。
かといって退屈ではない。ワインディングも想像以上にスポーティで、日本の峠道のようなタイトコーナーの連続でも左右への切り返しも軽快。アクセルと直結した路面を蹴り出すトラクションがファン・トゥ・ライドへと誘う。
それに音がいい。モーターの「キーン」という澄んだ高周波音とともに駆動系が発する「ヒュイーン」というメカノイズの協奏曲。従来のハーレーで特徴的だった3拍子のドコドコ感とはまったく異なる、一種クセになる独特の気持ちいいサウンドなのだ。
最近のバイクではお約束の電子制御も投入され、4種類のライドモード(スポーツ、ロード、レイン、レンジ)に加え自分でセッティング可能なカスタムモードやコーナリングABS&トラコン、そして強力な回生ブレーキによるリアロックを防ぐDSCS(スリッパークラッチの役目)も採用。安全面も抜かりない。
気になる航続距離だが急速充電60分でほぼフル充電の状態で最大235km、街乗りや高速道路を含めると153kmとなっている。また、電動バイクの普及には充電ステーションのインフラ整備が不可欠だが、日本導入時には全国ディーラーを中心に整備していく予定だ。
発売時期は未定だが早ければ2020年から日本国内投入の可能性も。ちなみに価格は今回の米国仕様で約320万円~。続報に期待したい!
●米国で試乗してきた人・佐川健太郎(さがわ・けんたろう)
1963年生まれ。早稲田大学教育学部卒業。モーターサイクルジャーナリスト。RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。95年、趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWebメディアなどで活躍。また、「ライディングアカデミー東京」の校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員交通心理士。MFJ認定インストラクター