今回試乗したメルセデス・ベンツ B180は「AMGライン」装着車。全長4430mm×全幅1795mm×全高1550mm 今回試乗したメルセデス・ベンツ B180は「AMGライン」装着車。全長4430mm×全幅1795mm×全高1550mm

全面改良によって3代目に進化したメルセデス・ベンツのBクラス。日本に投入されたばかりのガソリンモデルを竹花寿実(たけはな・としみ)が公道試乗し、その実力に迫ってきた!

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■完成度の高い新型Bクラス

メルセデス・ベンツの新世代コンパクトカーが続々と日本に上陸している。昨年10月に新型Aクラス、今年6月に新型Bクラスが発表されたかと思えば、7月には新型Aクラス・セダンが、8月末には新型CLAとAクラスのハイパフォーマンス・バージョンであるA35 4MATICがお披露目された。

これらはすべて、新世代FFプラットフォーム「MFA2(メルセデス・フロントドライブ・アーキテクチャ)」を採用したモデルたちだ。CクラスやEクラスといった、メルセデス・ベンツの伝統的なFRモデルとは異なり、高効率なパッケージングとリーズナブルな価格を実現した、より若いユーザー層をターゲットにしたモデル群である。

特に全世界ではCLAやGLAが大ヒットし、メルセデス・ベンツの販売台数を押し上げるとともに、顧客の平均年齢を若返らせている。

今回取り上げるのは新型Bクラスだ。Bクラスは、Aクラスをベースにミニバン的なトールボディに仕立てられたコンパクトMPV(マルチパーパスビークル)で、2005年に初代モデルがデビュー。今年6月に日本市場に導入されたのが3代目となる。

初代Bクラスは、背が高かった2代目Aクラスをストレッチしたモデルで、2代目はよりミニバン的なスタイルをまとっていた。先代は日本市場でAクラスの半分くらいの販売台数だったというから、大成功はしなかったが、それほど悪かったワケではない。だがヨーロッパ、特にドイツではすこぶる評判が悪かった。

何がドイツ人にウケなかったのかというと、ミニバン然としたデザインだ。確かにスポーティとは言い難いし、メルセデスらしい威厳にあふれたルックスでもなかった。

ドイツ人はことクルマの好みに関しては、保守的な傾向が強いので無理もないが、ドイツでは年配の女性が乗るクルマというイメージが強く、若いユーザーには人気がなく、パーソナルユースよりはタクシー需要が目立っていた。

メルセデス・ベンツ Bクラス 価格384万円~422万円 メルセデス・ベンツ Bクラス 価格384万円~422万円

このような状況はメルセデスもよくわかっていたようで、3代目では大幅にイメージチェンジを図ってきた。昨年10月にパリ・モーターショーでワールドプレミアとなったニューBクラスは、グッとスタイリッシュに変身した。

全長4425mm、全幅1795mm、全高1565mm、ホイールベース2730mmのBクラスは、Aクラスと全長および全幅、ホイールベースは共通だが、全高が145mm高い(ヨーロッパの数値)。Aクラスとの違いはルーフの高さだけ。

Bクラスのルーフの高さ自体は先代とほぼ同じだが、細身のヘッドライトや低められたボンネットフード、ショルダーラインの引き方など、メルセデスの最新デザイン・フィロソフィ「センシュアル・ピューリティ」を用いてスマートな造形となり、低く構えたスポーティな印象に。

【CHECK POINT1】2枚並んだ10.25インチの大きなスクリーン&スイッチが並ぶステアリングは激アツ 【CHECK POINT1】2枚並んだ10.25インチの大きなスクリーン&スイッチが並ぶステアリングは激アツ

【CHECK POINT2】搭載エンジンは1.3リットル直4ターボ。トランスミッションは7速デュアルクラッチ 【CHECK POINT2】搭載エンジンは1.3リットル直4ターボ。トランスミッションは7速デュアルクラッチ

今回の試乗車は、136psと200Nmを発揮する1.3リットル直4ガソリン・ターボを搭載したB180のAMGライン装着車で、18インチタイヤを装着し、全高が1550mmと、さらに低く抑えられた仕様だ。専用のエクステリアと5本ダブルスポークのAMGホイールが、外観をいっそう引き締めている。

走り始めてまず感じたのは、乗り心地がとてもフラットだということ。実は基本メカニズムが共通の新型Aクラスは、足回りが妙に固く、決して乗り心地が良いとはいえないのだが、新しいBクラスはとても快適な乗り心地で、225/45R18の大径タイヤも問題なく履きこなしていてバタつく感覚はない。Aクラスより明らかに上質な、とてもスムーズな乗り味である。

実は先代Bクラスも乗り心地は悪くなかった。先代Aクラスをベースにしたモデル群では、コンパクトSUVのGLAが最も快適性が高く、Bクラスはこれに次ぐ乗り心地を実現していた。メルセデスのFFプラットフォームは、重心が高いモデルに合わせて設計されているようで、新しい世代もこの傾向を受け継いでいるのかもしれない。

【CHECK POINT3】カッケー18インチのアルミホイールは「AMGライン」に含まれるオプション 【CHECK POINT3】カッケー18インチのアルミホイールは「AMGライン」に含まれるオプション

【CHECK POINT4】5名乗車時の荷室容量は455リットルだが、2名乗車時なら1540リットルにまで拡大できる 【CHECK POINT4】5名乗車時の荷室容量は455リットルだが、2名乗車時なら1540リットルにまで拡大できる

ハンドリングもステアリング操作にとても素直で、正確に狙ったラインをトレースする。車高が高いクルマはグラつくのではと心配するかもしれないが、まったく不安を感じさせない、とても好感が持てる走りを備えている。

動力性能は特筆するほどではないが、実用上不足を感じることはない。むしろエンジンは吹け上がりが軽やかで、リズムの良い走りが楽しめる。

インテリアは基本的にAクラスと同様。「ヘイ、メルセデス!」でおなじみのMBUX(メルセデス・ベンツユーザーエクスペリエンス)も標準で備わる。ダッシュボードは横長ディスプレイを配置したデザインが特徴だが、助手席側正面のパネル形状やドアグリップはBクラス専用だ。

Aクラスがスポーティな路線に行ってしまった今、普段の足として使いやすいのは、むしろBクラスだ。新しいBクラスの完成度は、実用ハッチバックとしてそれほど高い。

本来はAクラスがVW(フォルクスワーゲンゴルフ)のライバルだが、トータルで見ればBクラスのほうがゴルフといい勝負である。

ズバリ買いの一台だ!

●竹花寿実(たけはな・としみ) 
1973年生まれ。東京造形大学デザイン学科卒業。自動車雑誌や自動車情報サイトのスタッフを経てドイツへ渡る。昨年まで8年間、ドイツ語を駆使して、現地で自動車ジャーナリストとして活躍