新型スカイラインの最強モデルが激アツだ。なんと受注の約3割が400Rで、20代、30代の男性購入者も少なくないという。てなわけで、気鋭のジャーナリスト・河口まなぶが公道試乗し、その人気の秘密に迫った!
* * *
日産スカイラインが9月に改良を受けて、ついに「日産」のエンブレムを鼻先にまとった! 「えっ? どういう意味?」と思う方もいるだろうが、実はこれまでスカイラインはなぜか、その鼻先に日産が海外で展開する高級ブランド「インフィニティ」のエンブレムをつけたまま売られていたのだ。まぁ、スカイラインは海外ではインフィニティQ50という名前なので問題ないけれど......。
で、日産のエンブレムが復活したのと同時に、新型スカイラインを"技術の日産"を象徴するモデルにするため、ハイブリッドモデルに「プロパイロット2.0」という手放し運転可能な運転支援システムを搭載。CMで矢沢永吉さんが手放ししているアレだ。
だが、はっきり言ってスカイラインはクルマ好きのハートをくすぐらなければならない。特に昔は"羊の皮をかぶった狼(おおかみ)"と呼ばれ、4ドアセダンなのに高性能でスポーツカーのような走りが特長とされていた。
実は日産、今回の改良でそんな往年のスカイラインのイメージも復活させてくれた!
それが今回紹介する「400R」というモデルである。今回400Rがアナウンスされて、クルマ好きはかなりザワついた。400Rにはスカイライン史上最もハイパフォーマンスなエンジンが与えられたからだ。コイツがマジでスゴい!
まず、400Rに与えられたのは、3リットルのV6ツインターボエンジンであるVR30DDTT。このエンジンは最高出力で実に405馬力を発生し、最大トルクで475 Nmを発生するギンギンのスペックとなっている。そしてこれに従来の7速ATを組み合わせている!
この400Rを真っ先に借り出し、公道、ワインディングなどを走らせたが、405馬力のツインターボは、発進から豊かな力でクルマをスッと軽快に前に押し出す。475Nmの最大トルクを持つだけに低回転からでも力が感じられ、走り全体にゆとりが生まれている。
そしてここからアクセルを踏み込むと、V6ツインターボが回転を高めトルクの波が押し寄せてクルマを鮮やかに加速させていく。それと同時に、V6ツインターボのエンジン音と、最近の流行であるスピーカーからのサウンドが融合され、スポーティな音を耳に届けてくれる。
最近の直噴ターボエンジンは高回転に行くに従って伸びがなくなってふん詰まってしまう感が否めないが、この400Rのエンジンは、直噴ターボエンジンとしては比較的高回転でも伸びが失われないこともあって、エンジンの気持ち良さを味わえる希少な一台だともいえる。
そうしてハンドルを操作していくと、ハンドルを持つ手に力を加えた瞬間にこれまでにないスッキリした感覚が伝わってくる。なぜならスカイラインは以前から、DAS(ダイレクトアダプティブステアリング)と呼ばれるバイワイヤ方式のシステムを用いており、ハンドルの舵角とタイヤの切れ角の関係をクルマの側で自在に制御することを可能としている。
しかも今回の400RはこのDASも専用チューニングがなされているため、スッキリかつ滑らかなフィーリングに加えて、よりシャープで反応に優れた味わいを生み出している。
さらに400RはIDS(インテリジェントダイナミックサスペンション)と呼ぶ電子制御の可変ショックアブソーバーを備えたサスペンションを持っており、ドライバーの好みによってショックアブソーバーの減衰力を変えることが可能だ。その上でこのIDSも400R専用のチューニングが施されているため、よりスポーティな走りを味わえる。
装着タイヤは19インチサイズのランフラットを採用することや、400Rならではのセッティングゆえに走行時には多少のゴツゴツもハッキリ感じるが、この感覚は400Rを求めるユーザーにとっては、まさにスポーツ性が高いがゆえと割り切れるものだ。
環境性能が重要視される昨今、こんな走りにこだわったアナログ的なクルマはなかなか出ない。もしかすると、コイツが最後になるかも。いずれにせよ、乗れば気持ちいい走りがたっぷり味わえる。400Rはまさに現代の"羊の皮をかぶった狼"な一台だ!
●河口まなぶ
1970年生まれ、茨城県出身。日本大学藝術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌(モーターマガジン社)アルバイトを経て自動車ジャーナリストに。毎週金曜22時からYouTube LIVEにて司会を務める『LOVECARS!TV!』がオンエア中。02年から日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員