来場者130万人超えで話題を集めた「東京モーターショー2019」には男が反り返る新型モデルがズラリ! 注目のバイクを気鋭のジャーナリスト・青木タカオが選んだ。
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■カワサキの隠し玉にファン感涙!
――東京モーターショーの二輪ブースをガシガシ取材されてましたが、率直な感想は?
青木 今回はマジでスゴかった。ズバリ、大漁です。
――では、青木さんがたぎったマシンを教えてください。
青木 1位はブッチギリでカワサキがぶっ放したニンジャZX-25Rです。待望の4気筒エンジン搭載が決定打で、感涙にむせぶファン続出ですよ!
――えっと、4発のニーゴーってそんなスゴいんスか?
青木 バイクブーム世代には信じられないかもしれませんが、2007年が最終となったホンダ・ホーネットやバリオスⅡ以来、4発250ccモデルは10年以上存在していませんでした。
――そうなんだ!
青木 バイク業界ではコスト高なニーゴー4気筒エンジンはもう二度と造られることがないと。ですから今、4発の250ccが欲しくなったら中古車を買うしかなく、人気車の相場は上がる一方でした。
――このご時世にカワサキはよくぞ4発を出しました。さすがは"漢(おとこ)カワサキ"です!
青木 しかも、トラクションコントロールやクイックシフター、パワーモードなど電子制御を満載し、装備面でもライバルに差をつけている。ニーゴーではありえなかったゴージャスさも見逃せません。
――ココまで聞いたら発売時期とお値段が気になります。
青木 まだ正式発表はありませんが、関係者を直撃したところ「来年秋頃には......」とポロリ。ただ、価格はまったく未定のようです。
――高回転までビンビン回って面白そう。で、2位は!
青木 はい、「ハンターカブの再来だ!」とファンがザワつきまくっている、ホンダCT125でしょう。
――ハンターカブってなんでしたっけ?
青木 1960年代から国内外で発売したCTシリーズは、丈夫で頑丈なスーパーカブをベースに、悪路も走れるようブロックタイヤを履き、マフラーもアップタイプに。急坂も上れる副変速機も搭載し、道なき道もトコトコ走っていけることから、配達業だけでなく狩りや釣り人の相棒となり、"ハンターカブ"と呼ばれていたのです。
――タフな男のサバイバルバイクの元祖なんスね。
青木 はい。で、このCT125は、最新スーパーカブ125をベースに蘇(よみがえ)ったワケで、泥や埃を吸い込みにくいハイマウント吸気ダクトやサイドエアクリーナーを採用。荷物もたっぷり積める平らでデカイ荷台やアップマフラーも健在! エンジン下のガードは、丸太や岩に乗り上げたときにスキッドプレートとしても役立ちます。
参考出品車ですが、担当者にねちねち聞いてたら「反響次第では」とのこと。これは発売もありえるなと。市販されたら、大ヒット確実だと思います。
――なるほど。で、3位は。
青木 ヤマハのテネレ700でしょう! 世界イチ過酷なラリーといわれるパリダカって知ってますよね? お正月の夜になると10日間くらいその日のダイジェストがテレビで放映されてた。
――砂漠の中をパジェロやバイクが疾走するヤツですね。
青木 それっ! 実はテネレはヤマハのアドベンチャー精神を語る代名詞で、パリダカでも勝利の栄冠を手にしてきた。その名を受け継ぎ、オフロード+アドベンチャー+ツーリングの各要素を高次元でバランスさせたのが、この新型テネレ700です。
――ほうほう。
青木 日本で砂漠を突っ走るようなシチュエーションはありませんが、長距離もこなすツーリングバイクとして優れています。もちろん、高速クルージングも得意ですし、乗車姿勢もゆったりとしていてホントに疲れない。いざとなれば悪路も走れるから、山奥で舗装が途絶えた先にもガンガン入っていける。大人の旅バイクとしてテネレ700はうってつけ!
――すでに発売されている地域もあるらしいスね?
青木 こういうのはアドベンチャーモデルって呼ばれていて、特にヨーロッパで人気が高いんです。テネレ700もヨーロッパで先行発売されていて、価格は9699ユーロ。日本円に換算すると117万円チョットだから、ニッポンだとチョイお安くなるかも。
――次点もあるんですよね?
青木 3位と迷いに迷ったのが、スズキのジクサー250SFです。若い層にも買いやすいニーゴークラスは昔と同じく超激戦区。開発者は「軽量コンパクトで、お求めやすい価格」とリーズナブルであることにもこだわったよう。
――エンジンが面白いとか。
青木 ええ。1985年の初代GSX-R750から続いたスズキ伝統の「油冷技術」を用いています。水冷より小さく軽く、空冷より放熱できるのが魅力です。
――最後に総括をおなしゃす。
青木 今回の東京モーターショーに登場したバイクは、どれもびっんびんでした!
●青木タカオ
1973年生まれ、東京都出身。法政大学卒業。バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。バイク専門誌を筆頭に執筆媒体多数。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み』(秀和システム)など。バイク専門誌編集長の経験もある