11月10日に行なわれた天皇陛下の即位を披露するパレード「祝賀御列の儀」。天皇、皇后両陛下が乗られたオープンカーが大きな話題になった。そこで、庶民が乗れる最新のオープンカーを、モータージャーナリストの小沢コージが紹介!
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■トヨタとダイハツのコラボがコペンで実現
いや超カッコよかったぜぇ、天皇御即位パレードでのセンチュリーオープン! 両陛下の輝きはもちろん、あの奥ゆかしさを備えつつ、華やかで存在感あるボディがオザワ的にはタマらなかった。
日本にもロールスやベンツに負けない、ゴージャスなお宝オープンがあったってことに感激しきりだけど、さすがに一般人にセンチュリーオープンは買えるはずもなく......。
しかし嘆くことなかれ! 実はポルシェにもロータスにも造れない、もうひとつの大衆向けお宝オープンがニッポンにはあり、ソイツが先日ありえないコラボでパワーアップしたのだ!
そう、ダイハツ・コペンGR SPORTよ。「ええっ? コペンはダイハツのふたり乗り軽オープンだし、GRはトヨタのスポーツカーブランドじゃなかったっけ?」ってそのとおり。
両者は同じトヨタグループだけど、別会社で、かつて商品提供はあってもコラボはなかった。いくら仲良くてもフォルクスワーゲンベースのアウディチューンがないようなもん。だけど、ニッポンはあっさり領海侵犯! オキテ破りの共作が実現したワケよ。
つうかGRはいろんな領域で自慢のスポーツグレードを造りたかったけどトヨタに200万円前後の本格スポーツモデルはなく、片やダイハツは5年前に頑張って2代目コペンをリリース。それも軽サイズでは唯一無二の電動ハードトップや驚異の着せ替えコンセプトで3つの外観が選べてスゴいけど、もうそろそろテコ入れを図らねばならない。まさに両者の思いが合致し、ありえんコラボが実現。
まぁ、オザワ的には"トンビにおいしい油揚げをさらわれたダイハツ!?"的構図と見えなくもないけど、お客にしたらうれしい限り。なんせコペンGR SPORTは見事欠点を取り去り、素材の良さを引き出した一流料理人の手腕を感じる出来だからして。
肝心の実車だけど見た目にインパクトあるのはGRならではの超スクエアグリル! 同時にリアもスクエアにブラックアウト化され、中の一部もブラックで塗り直された前後ランプとのマッチングがスゴい。独特のワイルド感プンプン。
インテリアは外観ほどじゃないにせよ、専用のレカロシートやピアノブラックパーツが目につく。細かく見るとステアリングホイールやメーターも専用デザインでしっかりGRが監修しているのがわかる。ただし、このクルマの白眉は走りだ。それもチューニンググレードにありがちな常識から完全に逸脱している。
エンジンそのものはノーマルとまったく同じ660ccターボで、ピークパワー&トルクも64PS&92Nmと変わらない。だけど完全にひと回り上質な軽オープンスポーツに! 秘密は足回りとボディだ。
実は前後スプリングを既存スポーツグレード「S」はもちろん、ノーマルよりも柔らかくしてあって、乗り心地は2代目コペン全グレードの中で断トツにいいのだ。スポーツグレードのクセして。
ただしその分、GR SPORTの開発キーワードたる「しなやかさ」「ちゃんと動く足」「動かない目線」をモットーにボディを専用ブレースで補強。
コペン全グレードに追加したフロア下のフロントブレースやセンターブレース、GR SPORT専用のリアブレースが効いてて、ボディ剛性が段違い。足回りがちゃんと動く上、タイヤがあらゆる領域でちゃんと接地してる。しかも専用開発のカヤバ製ダンパーでしっかり動きをコントロールしているから思うように曲がること曲がること。
実際、走りは発進直後からひと皮むけたようでステアリングフィールが一段上質に。さらにその効果はハイスピードのコーナリングに入るとより顕著で、振動が全体的に抑えられているのはもちろん、乗り心地はいいわ、操舵(そうだ)感はいいわ、何よりカーブの奥までちゃんとステアリングが利いてアンダーステアが出ない。
もちろんそうはいっても軽は軽。荷物もほとんど乗らないけど、この手の本格オープンが200万円台で買えるなんてニッポンだけ。キミもオープンカーに乗ってみないか?