12月1日まで開催されて、大きな話題を集めたロサンゼルス・オートショー。自動車ジャーナリストの竹花寿実(たけはな・としみ)が現地でガッツリ取材し、激推しの5台と次点2台を勝手に決めた!
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今年の東京モーターショーは、人気を盛り返し来場者130万人という大盛況だったが、海外では必ずしもそうではない。世界有数の自動車大国であるアメリカも、毎年1月に行なわれていたデトロイト・モーターショーは来年から開催時期も内容も大きく変えるようだ。
一方で、やはりモーターショーは、華やかな会場で最新モデルにいち早く触れたいというクルマ好きも多い。特にアメリカはクルマ文化が深く根づいていて、クルマが生きがいの"カーガイ"も多い。
今年は11月22日~12月1日に開催されたロサンゼルス・オートショー(以下、LAショー)は、そんなカーガイが楽しめる、モーターショーらしいモーターショーのひとつである。
LAショーでは例年、最新の環境対応車やスポーツカーが数多くワールドプレミアとなる。それはカリフォルニア州には独自の厳しい排出ガス規制があり、また、富裕層も多く住むためだ。
今年もそんなLAショーらしいクリーンで暑苦しいクルマが多数デビューした。今回はそのなかから最も注目すべきびんびんカー5台を、竹花が独断と偏見でピックアップしてみた!
まず1位はフォードが2020年末のデリバリー開始を公言したマスタング・マッハEだ。今回登場したこのマッハE(アメリカ人は"マーキー"と呼ぶ)は、なんと4ドアSUVクーペスタイルのバッテリーEVである。
独自開発のEVプラットフォームを採用したマスタング・マッハEは、後輪駆動と4WDがあり、後輪駆動モデルはリアアクスルに最高出力258PSまたは286PSの電気モーターを搭載。4WDモデルはさらにフロントアクスルに68PSを発揮する電気モーターを積む。
4WDモデルのシステム合計性能は、最高出力が338PS、最大トルク581Nmにも達する。さらに2021年には、システム合計で465PSと830Nmものバカ力を絞り出す最強モデル、マッハE GTも追加される!
リチウムイオンバッテリーはフロア下に搭載。蓄電容量は75.7kWhまたは98.8kWhで、航続距離はEPA(米国環境保護庁)のテストサイクルで338~482kmを確保しているという。
エクステリアはどことなくテスラ的だが、インテリアもテスラと同じく大型タッチディスプレイを用いた近未来的なデザインで、先進的なコネクティビティ機能を搭載している。チーフデザイナーのクリストファー・ウォルター氏によれば、今後は既存のクーペ/コンバーチブルもマッハEとの共通性を持たせたデザインに進化する予定とのこと。
果たして伝統のマスタング・ブランドは、今後もフォードのアイコンとして生き続けることができるのか、非常に興味深い。
2位はこちらもアメリカを代表するスポーツカーであるシボレー・コルベットの新型だ。コルベットといえば、フロントに大排気量のV8エンジンを搭載した、ロングノーズ&ショートデッキの典型的なFRスポーツカー・スタイルが特徴だが、今回登場した8代目は、エンジンレイアウトがなんとリアミドシップに変更されている。
キャビン後方に搭載されるのはLT2と呼ばれる従来のLT1をミドシップ用に改良してドライサンプ化した6.2リットルの自然吸気V8エンジンで、最高出力496PS、最大トルク630Nm。パフォーマンス・エグゾーストを装着すると501PSと470Nmとなる。トランスミッションは8速DCTと、グッと現代的に。
どこかホンダNSXを彷彿とさせるミドシップらしいプロポーションだが、ギラギラとエッジの効いたデザインは、やはりコルベットのそれ。
驚くべきはその価格で、なんと5万9900ドル(約650万円)と、ミドシップのスポーツカーとしては破格の安さなのだ。もはやNSXやアウディR8は勝負にならず、ポルシェ718ボクスター/ケイマンあたりも脅かしそうな勢いである。
3位はポルシェ初のEVであるタイカンに追加されたタイカン4S。これまでタイカンには「ターボS」と「ターボ」が設定されていたが、今回登場した4Sは、新しいエントリーグレードだ。
最高出力は571PSとターボやターボSより抑えられている一方で、航続距離はWLTPモードで最大463kmと最も長くなっている。それでも時速100キロ到達は4秒、最高速度は250キロと十二分に速い。ドイツでの価格も10万5607ユーロ(約1275万円)と、911カレラ程度に抑えられているので、まずまず現実的(?)といえる。
4位はレクサスLCコンバーチブル。これは1月にデトロイト・モーターショーで公開され、先日の東京モーターショーにも展示されたコンセプトカーの量産バージョンだ。
LCは、2017年に登場したクーペも非常に美しいデザインを纏(まと)っているが、今回のコンバーチブルは、ソフトトップの開閉状態にかかわらず、とても自然で違和感のないシルエットを実現している。
パワートレインは、クーペのLC500と同様に5リットルV8+10速ATを搭載。メルセデス・ベンツSLやBMW8シリーズ・カブリオレなどとガチンコで勝負である。日本では来年夏に発売されるもようで、価格は1500万円程度になるといわれている。
そして5位はミニJCW GPの最新バージョンだ。ミニの頂点に位置づけられるこのモデルは、過去2世代も過激なクルマだったが、今回の3代目は気合いの入り方が違う。ハイパフォーマンス・バージョンとはいえ、市販コンパクトカーとしてはありえないほど過激なデザインなのだ。
最大の特徴は、フローティング状態のカーボン製前後フェンダーで、2年前にフランクフルト・モーターショーで公開されたコンセプトカーのイメージそのまま。エンジンは310PSと450Nmを発揮する2リットル直4ターボで、最高速度は265キロに達する。ニュルブルクリンク北コースのラップタイムはガチで8分を切るというから驚く。
3000台の限定生産で、来年夏以降には日本にも240台が導入される史上最強のミニは、576万円で入手可能。今すぐ注文すべし!
さて、番外編として紹介したいのは、EVベンチャーのボリンジャー・モーターズが来年にも発売を計画している本格オフロード4WDのEVであるB1(ワゴン)&B2(ピックアップトラック)だ。
往年のランドローバー・ディフェンダーを思わせる武骨なデザインのこのモデルは、完全オリジナルの設計で、前後アクスルに合計で622PSと906Nmを発揮する電気モーターを各1基搭載し、優れたパフォーマンスを実現しながら、ハブリダクションシステムにより381mmの最低地上高を確保。
ローレンジギアや前後デフロックも備え、圧倒的なオフロード性能を有したハードコアなモデルなのだ。
来年以降に市販化する計画だそうだが、日本でも欲しがる人はいるだろう。ぜひオフロードで試してみたい!
オフロードといえば、VW(フォルクスワーゲン)ブースに展示されていたメキシコで開催される「バハ1000」出場マシンのコンセプトカーは極めつきだ。中身はアトラス(北米で販売されているフルサイズSUV)とは関係なく、完全に競技専用のバギーだが、カリフォルニアのクルマ文化が感じられる一台だ!