ポルシェ 911カレラ4S

11月に世界カー・オブ・ザ・イヤーの試乗会がアメリカ・ロサンゼルスで開催された。選考委員であるモーター・ジャーナリストの小沢コージは、ノミネートされた最新ポルシェを現地で試乗。その実力に迫ってきた!

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男ならいつかは乗りたい代表のポルシェ! 超ナイスバディで中身も最高な逸品だがオザワ、ラッキーにもアメリカで開催された世界カー・オブ・ザ・イヤーの試乗会で最新ポルシェ3台をまとめて乗れたので報告というかジマンしよう!

しかもコイツらが3車三様。まず乗ったのは60年代から続く伝統のリアエンジンスポーツ911。見た目的にはライトデザインやリアのエンジンカバーの縦模様がチト変わった程度。とらやの羊羹(ようかん)のようなド定番。「進化するとこないんじゃない?」と思わせといて、昨年末7年ぶりに進化した8代目992型の4WD版カレラ4Sの出来がマジでハンパない。

昨年の「ロサンゼルスショー」でデビューした8代目「ポルシェ911(992型)」。リアスポイラーは走行中にせり上がる

ボディは一見、旧型のリファインで全長×全幅は4519mm×1852mm、ホイールベース2450mmで旧型のワイドボディとほぼ同じ。しかし骨格は新世代MMBプラットフォームで全体の7割がアルミ化! ホワイトボディで12kg軽くなった上、剛性も5%向上!

エンジンは「ポルシェよ、オマエもか!」って感じで、基本は旧型でダウンサイジングターボ化した3リットル水平対向6気筒ツインターボだが、高効率化されてパワー30PS、トルク30Nmアップの450PS&530Nm。

インパネには最新のインフォテインメントシステムがぶっ込まれている。ちなみにお値段は1772万円!

ただポイントはギアボックスで7速PDKから8速PDKに進化。この真意は新たに電気モーターが入るスペースを生むためで992型から911もついにハイブリッド化されるのだ。

が、乗った感じはそんなのどーでもいい! とにかく走りだしから超乗り心地よく、滑らかでステアリングフィールがビビッド。加速も踏んだ分だけ伸びてターボラグが一切ない。450PSってとんでもないが、乗るとまったく怖くない。アルコール度数が超高い上質ウイスキーをビールのように気楽に飲めちゃう。その気持ちよさがヤバい。

ポルシェ 718スパイダー 今年6月に発表された718スパイダー。4リットルの水平対向6気筒に6速MTを組み合わせる。最高出力420PS。価格は1215万円

片や現行4代目ボクスターに追加された718ボクスタースパイダーは逆に超スパルタン。公道のレーシングカーとも呼べる、走るウオッカのようなビックリ快楽マシンだ。

そもそも911の弟分として生まれたオープンミッドシップのボクスター。それだけに動力性能は911より控えめだし、味わいも軽かった。

結果エンジンは3年前に4代目が出たときは911の3リットルターボから2気筒落とした2.5リットル4気筒ターボのみ。馬力は過去の6気筒時代より上がったが回転フィールはラフ。速く、燃費も向上したが、ポルシェらしくないとの声しきり。

よってこの夏急遽(きゅうきょ)復活したのが新6気筒モデルで、さすがに911の3リットルターボは載せられないのか、選ばれたのが割とお金をかけずに造られたノンターボ4リットル水平対向6気筒でコイツがまあ気持ちいい!

パワーはエコ化で落とされているが420PS&420Nmと十分。しかもギアボックスは6MTだけだから一瞬、昭和のスポーツカーが蘇(よみがえ)ったような走りが味わえる。

インテリアにはアルカンターラ素材があしらわれている。GTステアリングホイールが男をたぎらせる!

クラッチは重め。だが、走りだせばステアリングフィールはタイヤ表面についた砂粒に気づくほどビビッドで、何よりイマドキ8000回転まで回るバイクのようなエンジンが超極楽!

こんな濃厚かつ粗野なオープンスポーツは今後造れなくなる。貴重な大トロの切り身を、乱暴に醤油だけで食っているような感覚だ。要するに911カレラ4Sは近未来、ボクスタースパイダーは絶滅寸前のスポーツカー。

ポルシェ タイカン ポルシェ初のピュアEVは、今年9月にデビュー。ボディサイズは全長4963mm×全幅1966mm×全高1378mm

一方、最後に味わったのは今年9月に世界発表、ついにポルシェも造らざるをえなくなったピュアEVのタイカン

コイツはぶっちゃけポルシェが北米EVベンチャー、テスラにあおられ造らざるをえなかったクルマとオザワは勝手に解釈する。それは全長4.96m、全幅1.96mのポルシェらしくない4ドアセダンというボディ形状からもうかがえ、確かにピュアEVだけに巨大電池を積むのはクーペじゃ無理だろう。

充電口は右フロントフェンダーに。急速充電に対応

しかしそれだけじゃない。ポルシェは2018年世界年販が25.6万台と24.5万台のテスラに肉薄されている。かつて売れないとされていたEVをテスラが売った事実をポルシェは無視できないはず。しかもセダンのモデルS、SUVのモデルX共に1台1000万円前後の高価格で合計世界で年10万台も売る。これは間違いなく驚異。

何より注目のタイカンはテスラがやれないことばかりやってくるので驚いた。全高はモデルSより67mm低い超スポーツカースタイルで、片や居住性はほぼ同等。前後トランク容量は狭めだがフロント81リットル、リア366リットルと十分な上、床が半端なく低い。テスラ並みの93.4kWhの電池を積んでいるとは思えない。

メーターには16.8インチのディスプレイを採用

さらにパワースペックは前後ツインターボでもって、タイカン・ターボSのオーバーブースト時のピークパワーは761PSとものすごいものの、厳密にはテスラS P100Dの796PSに負ける。しかし時速100キロ到達は2.8秒とほぼ同等な上、タイカンは走りが超気持ちいい。マジな話、911より滑らかで911よりポルシェ風味が濃厚。

正直、びんびんにシビれたが、3台全部そうだけど、価格が1000万円超えだからなぁ(笑)。