昨年末に山梨県で開催された最新メルセデス・ベンツの試乗会に突撃。そこで気鋭の自動車ジャーナリスト・竹花寿実(たけはな・としみ)が、独断と偏見で勝手に最強の7台を決定。今、世界的に販売絶好調の理由にもガッツリ迫る!
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■メルセデス・ベンツが絶好調のワケ
――メルセデス・ベンツが絶好調スね。
竹花 昨年の国内販売台数は6万6523台で、2018年と比べると1000台ほど少なかったんですが、5年連続で輸入車トップになりました。プレミアムブランドに限れば7年連続ナンバーワンですね。
――売れてる理由は?
竹花 なんといってもAクラスやBクラス、CLAといったコンパクトクラスのヒットが大きい。先代Aクラスからグッとモダンなクルマになったんですが、これが日本で発売されたのが13年1月です。ちょうどメルセデスがプレミアムブランドでトップになったのと重なります。
――なるほど。それがずっと続いていると。
竹花 そのとおり。A、B、CLAはその後も売れ続けて、18年末以降に日本で発売された新しい世代も人気を博しています。昨年はコンパクトクラスだけで、販売台数の3割以上を占めているんです。
――なぜそんなに売れるんスか?
竹花 走りやパッケージングなど、クルマとしての出来が前の世代からグッと良くなったのはもちろんですが、若々しくてスタイリッシュなデザインと、「ハイ、メルセデス!」と呼びかけるだけで自然な会話形式でさまざまな機能やサービスが使えるMBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)が全車標準装備であるのも人気の理由だと思います。
――コンパクト以外の売れ行きはどんな感じ?
竹花 もちろん売れています。充実したラインナップを誇るSUVは堅調ですし、何より昨年はメルセデスAMGの販売が、国内で8000台を超えて過去最高を記録。
――えっ! AMGってけっこうなお値段ですよ!
竹花 コンパクトクラスやSUVで幅広い客層にブランドが認知されたことが効いているのでしょう。新車購入者の平均年齢もひと昔前より大幅に若返ったようです。メルセデスAMGの購入者は、通常モデルより平均年齢がさらに若いという話です。
――う、うらやましい......。
竹花 あとポップな広告戦略や、人が集まるところに「メルセデス ミー」という情報発信拠点を積極的に展開している点も、ブランド認知向上と顧客満足度アップに大きく寄与しているのは間違いないです。日本法人のメルセデス・ベンツ日本は、うまくビジネスをしています。
――世界的にはメルセデス・ベンツの販売ってどんな感じなんスか。
竹花 絶好調です。昨年は前年を1.3%上回る世界で233万9562台を販売して、9年連続で過去最高を更新するとともに、4年連続でプレミアムブランドで首位に立っています。
――うわっ、スゲェー! やっぱしコンパクトカーやSUVが売れている?
竹花 やはり大きな2本の柱になっています。AMGも前年比11.8%増の13万2136台と売れに売れまくっているんですよ。
――ほかは?
竹花 加えてCクラスとEクラスがそれぞれ35万台以上のボリュームを維持しているんです。
――世界的にはセダン人気も高い?
竹花 市場によります。現在最大のセダン市場は中国で、CクラスやEクラスには、中国専用のロングホイールベース仕様が用意されているほど。
――中国専用!
竹花 今や中国は、メルセデス・ベンツにとって販売の約3割を占める最重要市場になっています。
――なるほど。中国の販売がキモだと。
竹花 昨年も景気減速が叫ばれるなかで、前年比6.2%増という伸びを達成しました。中国が世界販売を押し上げたといっていいと思います。
■メルセデス・ベンツが誇るディーゼルPHEV
――そんな販売絶好調のメルセデス・ベンツの最新モデルを今回は、山梨県でガッツリ試乗しました!
竹花 はい。10台以上に試乗し、そのなかから男性を刺激する最強の7台を選びました。かなり悩みましたが。
――ということで、1位からおなしゃす!
竹花 1位はフラッグシップサルーンのSクラスです。走り、安全性、先進性と、どこを見ても、「これぞメルセデスの真骨頂!」という圧倒的な完成度の高さで、非の打ちどころがありません。
――さすが最強のSクラス!
竹花 乗り心地は、毛足の長い最高級の絨毯(じゅうたん)の上を歩いているようで、特にロングボディのリアシートはトロけてしまいそうな滑らかさ。
――はい。
竹花 自分で運転しても、あらゆる操作がしっとりと高級感にあふれていて、自然と丁寧な運転をするようになってしまう。
――なるほど。
竹花 もはや移動のための道具を超えていて、心を清らかにしてくれるクルマなんですよ。
――推しのタイプは?
竹花 3リットル直6ディーゼルターボを搭載したS400dがオススメです。力強い走りと上質な乗り心地のバランスが絶妙です。
――続いて2位は?
竹花 はい、"究極のオフローダー"Gクラスです! 2018年に初のフルモデルチェンジを受けた新世代Gクラスは、ルックスは先代のイメージを色濃く継承していますが、中身は最新のメルセデスです。でも乗り味もしっかりワイルド。
――とにかくGクラスはオーラがスゴいクルマです。
竹花 今回紹介するのは、最も手頃な価格(とはいえ税込で1192万円)のG350dです。この3リットル直6ディーゼルターボ搭載モデルでも味わいは濃厚です。将来的にはGクラスも電動化するといわれているので、今こそ乗っておくべき一台かと。
――3位は?
竹花 王道セダンのEクラスです。なかでも日本市場で初のディーゼル・プラグインハイブリッドであるE350deアバンギャルド・スポーツは注目の一台です。
――ディーゼルでプラグインのハイブリッド!?
竹花 都市部や近距離は電気で走って、長距離はクリーンで高効率な2リットル直4ディーゼルターボで走行。まさにオイシイとこ取りのエコカーです。快適性も素晴らしい。
■SUV、クーペにAMGがランクイン
――4位はメルセデス・ベンツ人気を支えるSUVスね!
竹花 オーバーミドルクラスSUVのGLEです。現行モデルは新開発のSUV用プラットフォームを採用しただけあって、とてもバランスのいい軽快な走りと高い快適性を実現しています。
――顔も印象的です。
竹花 押しの強いルックスもちょいワルな感じで、さりげなく目立ちたい人にはオススメです。動力性能的には2リットル直4ディーゼルターボのGLE300dでも十分です。
――なるほど。で、5位はなんですか。
竹花 GLCクーペです。昨年10月に上陸したばかりの最新アップデート版。スタイリッシュなミドルサイズのSUVクーペで、なかなかスポーティな走りが魅力です。
――そして6位がスゴい!
竹花 はい。AMG GT 4ドアクーペです。
――ムチャクチャ悪そうな顔してますね、コイツ(笑)。
竹花 顔だけじゃなく、中身も強烈。AMG GTというと、2ドアクーペを想像するかもしれませんが、この4ドアクーペもまったく侮れません。岩のような剛性感のあるボディと、ガチガチに引き締められた足回りは、ハイパフォーマンスカーであることを明確に主張しています。
――はい。
竹花 今回のテスト車は、トップモデルの「63S」ではなく、435PSの3リットル直6ツインターボを積んだ「53」でしたが、正直、このクルマに乗っていたら免許証が何枚あっても足りない(笑)。
――ラスト、7位は!
竹花 224PSの2リットル直4ターボを搭載したA250 4MATICセダンです。このモデルは、A180などと違ってリアサスがマルチリンクで、とても上質な乗り心地と、明らかに正確性の高いハンドリングを実現しています!
――ということは?
竹花 ズバリ買いの一台です!
――ちなみに次点はAMG A35スね?
竹花 Aクラスのボディに306PSの2リットル直4ターボをブチ込んだハイパフォーマンスバージョンです。
――推しは走り?
竹花 スパルタンな走りはもちろん、派手なエアロパーツやスポーツシートなどが、男を刺激してきます。ホットハッチ好きは要チェックの一台です。
――最後に総括を!
竹花 メルセデス・ベンツはラグジュアリーなイメージでひとくくりにしがちですが、実際にはそれぞれに個性的なモデルを幅広くラインナップし、どのモデルも徹底的につくり込まれています。
――確かにそうでした。
竹花 だからこそ世界中で支持されているのです。今後はEVやプラグインハイブリッドが続々と市場に投入される予定ですが、自動車を取り巻く環境が大きく変化する時代だからこそ、クルマづくりのマイスターである彼らの存在感が増しています。
――紹介した8台は買い?
竹花 余裕があればぜひ!
●竹花寿実(たけはな・としみ)
1973年生まれ。東京造形大学卒業。自動車雑誌のスタッフなどを経てドイツへ。ドイツ語を駆使して、現地で自動車ジャーナリストとして活躍。輸入車のスペシャリスト