2017年12月に登場して以来、新車販売台数2年連続1位のカワサキ「Z900RS」

カワサキのネイキッドバイク「Z900RS」が2017年12月の国内発売以来、売れに売れている。いったい何がスゴいのか?

最新モデルを引っ張り出し、気鋭の二輪ジャーナリスト・青木タカオがガッツリ試乗。その人気の秘密と、実力に迫ってきた!

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■ノーマルなのに排気音はド迫力!

カワサキ「Z900RS」

――売れに売れているバイクがあるそうで?

青木 ズバリ、カワサキZ900RSです。2017年12月に登場して以来、250cc超クラス新車販売台数2年連続の1位! 同クラスは国内全体でも前年比5.1%増の6万6456台が新車販売され、カワサキが1万6608台で2年連続の首位。ホンダも前年比12.7%増の1万2306台で猛追はしていますが、Z900RSの勢いはしばらく止まらないでしょう。

――どんなバイク?

青木 見た目は旧車っぽいのですが、走りは最新。つまり、みんなが好きだった時代のシルエットやカラーをそのままに、ABSユニットはもちろんトラクションコントロールやLEDライト、倒立式フロントフォークやリアサスペンションモノショックなど現代的な装備をまとい、ライディング性能はもちろん、速さも安全性も超一級品です。

――そういうのがはやり?

青木 実は往年の名車をオマージュしつつ、最新技術を惜しみなく導入する"ネオクラシック"と呼ばれるカテゴリーがあるんです。そもそもの火つけ役はBMWやトライアンフといった老舗の欧州勢でした。そこで、"漢(おとこ)・カワサキ"も黙っちゃいられないとばかりに伝家の宝刀「Z」で対抗。コレが日本のみならず、欧州でも大人気に。

【チェックポイント1】速度計とエンジン回転計の真ん中にはギアポジション&航続距離などを表示するパネルが

――ちなみに日本でZ900RSを買っている人って?

青木 オジサンだけじゃなく、若い世代にもバズっています。

――それはなぜ?

青木 70年代を感じるティアドロップ型タンクや、滑らかに弧を描きつつ跳ね上がったテールエンド、真ん丸のヘッドライトやバックミラーなどが斬新に見えるそうです。

【チェックポイント2】2020モデルに追加された新色のイエロータイガー。ちなみに価格は132万8400円だ

――昔ながらのグラフィックカラーも時代にマッチ?

青木 初代は"火の玉カラー"、2代目の現行は"タイガーカラー"。これもZ1譲りです。ほかにもイエローボール、マルーンとブルーの玉虫などがかつてあったので、カワサキ関係者に「次のカラーは?」と期待して聞くと、「想像にお任せします」と教えてくれない。

私が売れると思うのは、バイクマンガの名作『あいつとララバイ』の主人公仕様です。その理由は......(以下、超長いので割愛)。

――で、Z900RSにはビックリすることがあると?

青木 エンジンを始動してまず驚くのが、新車時からついている集合管の排気音が迫力ありすぎってことです。アイドリングから「コレ......ノーマル?」って疑いたくなるほど重低音が効いてて、高回転まで引っ張ると男がたぎりまくるギンギンのエキゾーストノートが味わえます!

【チェックポイント3】エンジンを始動するとド迫力の排気音が! 排気管は1本。メガホンタイプのサイレンサーを装着

――音量規制とか厳しいはずなのに大丈夫なんスか?

青木 開発陣は「バイクは音が重要」ってことに気づき、どのエンジン回転域でどんな周波数の音が人間の耳や感性に心地よいかを徹底追求し、音量規制値内でサウンドチューニングを行なってマフラーやエンジンを開発。低速では野太く力強い音、高回転では甲高い管楽器のようにチューニングしているんです。

――なるほど。で、気になる乗り味・走り味は?

青木 低中回転域でのトルクを重視したエンジン特性、つまり街乗りで多用する常用回転域で力強い。実際、サーキットや峠で速くても、普段のチョイ乗りで扱いづらかったり、神経を使ったりすると、結局のところ気持ち良く走れません。Z900RSは最強のストリートバイクになっています。

【チェックポイント4】リアには「ホリゾンタルバックリンクリヤサスペンション」というモノショックが装着されている

――気になる戦闘力は?

青木 ラジアルマウントモノブロックキャリパーと300mmディスクの組み合わせとしたフロントブレーキであったり、重量わずか3.9kgのアルミ製スイングアームなど、足回りはひと昔前のレーシングマシン並みの豪華さと戦闘力。

――ほうほう。

青木 もちろん、制動力やコントロール性もバツグン。セーフティライドにも配慮されていて、スリップを低減するトラクションコントロールシステムも搭載しているんです。

【チェックポイント5】ホイールのサイズは前後共に17インチ。フロントには倒立式のサス。前後ディスクブレーキだ

――購入時の注意点は?

青木 ストリートバイクと言いましたが、そこは漢・カワサキのバイクですから最強すぎることは忘れないこと。

――どういうこと?(笑)

青木 つまり、前後サスのセッティングは走り屋が攻め込んでも音を上げないようハード寄り。その味つけはチンタラ走る人には硬く感じるかもしれません。ビギナーの方はバイク屋さんで、足回りをソフト寄りにセッティングしてもらってください。

――最後にカワサキが絶好調の理由って?

青木 カワサキはZだけじゃなく、WやH2、ニンジャ、伝統あるブランドをたくさん持っていることが大きいです。ただ、カワサキの関係者は、「断トツ人気はZ」とぶっちゃけていましたが(笑)。

――Z人気は今後も続く?

青木 いや、そうとも言えません。実は昨年の東京モーターショーで、ニンジャ250の4発(4気筒エンジン)が披露され、大きな話題を呼んだのを覚えていますか?

――もちろんですよ!

青木 ずっと関係者をネチネチ取材していたら、「発売は今秋」という情報を入手しまして。すでに話題沸騰状態の4発ニンジャが発売されたらバカ売れは確実です。Zもウカウカしていられませんよ!

●青木タカオ 
1973年生まれ、東京都出身。法政大学卒業。バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに。バイク専門誌を筆頭に執筆媒体多数。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み』(秀和システム)など。実は現役の二輪専門誌編集長でもある