ホンダ「ADV150」

2月6日、千葉県木更津市で開催されたホンダのメディア試乗会に突撃! 予約殺到で話題騒然となっている新型スクーター「ADV150」を、気鋭のモーターサイクルジャーナリスト・青木タカオが濃厚試乗。人気のワケと、その魅力に迫ってきた!

* * *

■新型150ccスクーターが売れに売れているワケ

――スクーター界に衝撃が走っているとか?

青木 オフロード、つまり未舗装路も走れる常識破りのシティコミューターが登場して話題です。簡単に言うと、ホンダがブッ放したSUV系スクーター「ADV150」がバカ売れ中です。

――ADV150って昨年の東京モーターショーに出展されていましたよね?

青木 はい。けっこう注目されていたんですが、年間販売計画台数3000台とかなり弱気で、ひっそりと発表されました。ところが、2月14日の発売を前に4000台以上を受注。国内の営業担当者も驚きを隠せない様子で、うれしい悲鳴を上げてました。

――人気のワケは?

青木 四輪ではSUV、ビッグバイク市場ではアドベンチャーと呼ばれるオン・オフ二刀流のバイクが世界的に大ヒット中なんです。しかも、ADV150は気軽に乗れる軽二輪枠(126~250cc)のスクーターなのも人気爆発の理由かと。

――昔、ビグスク(ビッグスクーター)ってはやりましたが、あの頃の主役は250ccでした。なぜ今は150cc?

青木 よくぞ聞いてくれました。背景にあるのは昨今の原二(原付第二種免許。排気量51cc以上、125cc以下のバイクに乗れる)ブームです。

【チェックポイント1】スクエアのメーターはラリーマシン的。アイドリングストップ時はインジケーター点滅

――いくら原二がブームといっても、原チャリ(原付)のほうが売れているのでは?

青木 出荷台数の動向を見ると、2017年に原付が17万4259台で、原二が8万8765台、その差は8.5万台ありましたが、18年は原付が14万3129台、原二が10万5536台をマーク。その差は3.7万台になりました。近いうちに原二が原付を逆転するともっぱらです。

――原二が人気の理由は?

青木 原二だと、交差点での二段階右折が不要ですし、四輪と同じ制限速度で走れる。ふたり乗りも可能です。

――そのルールは昔と変わりません。なぜ原二に火がついたんスかね?

青木 不景気が影響しています。軽自動車を経て、今、通勤の足は燃費抜群の原二スクーターになっています。リッター50kmは走りますから。

――確かに朝夕の通勤時間帯はピンクナンバー(原二)がガンガン走っています。

青木 原二なら保険もクルマのファミリーバイク特約が使え、経済性バツグンです。

【チェックポイント2】フルフェイスヘルメットも入る容量27リットルの収納スペース。機能性もバツグン!

――だとすると、ADVも125ccでいいですよね? でも、ADVは150ccです。

青木 高速道路を走れ、原二よりも高級感のある150ccスクーターの人気がジワジワ高まっているんです。日常の使い勝手が良く、高速道路にも乗れるから行動範囲も一気に広がる。それと、この排気量は今、ASEAN(東南アジア諸国連合)で主流なんです。

――150ccはASEAN各国で売れていると。では、ADVもグローバルモデル?

青木 そのとおり。つけ加えると、今、原二のコンパクトさが人気なわけで250ccだとサイズがでかすぎる。150ccがちょうどいいんです。

――なるほど。で、ADVの走りはどうでしたか。

青木 「これが脱スクーター」といえる安定性の高さがある。開発責任者に聞いたら、フレーム構造がスポーツバイクと同じだと。スクーターは乗り降りしやすいようフレームはアンダーボーンが一般的ですが、ADVは走行性能を優先した高剛性のダブルクレードル構造を採用。

――スゲェー!

青木 さらに前後サスペンションもクラス最長で、フロント130mm、リア120mmを確保!

【チェックポイント3】まさかのリザーバータンク付きリアサスペンション。スプリングも3段レートと本格的すぎる

――見た目だけじゃなく、中身も本格派だと。

青木 装備もワンランク上で、クルマのように便利なキーレスイグニッションですし、エマージェンシーストップシグナルといって急ブレーキ時には後続車などに即周知できるようハザードランプを高速点滅させて追突を防止する機能まで搭載しています。

――エンジンは?

青木 アイドリングストップ機構も搭載した環境性能に優れるエンジンではありますが、右手のスロットル操作にダイレクトに応答する、とても力強いエンジンです。一般道でクルマの流れをリードできるのはもちろん、首都高や阪神高速など都市高速でも余裕ある走りを堪能できます。

【チェックポイント4】エンジンのオン・オフだけでなく、ハンドルロックまでキーレス操作可能なのがうれしい

――購入時の注意点は?

青木 足つき性を重視するなら購入前に一度はまたがって確かめてほしいところ。

――ズバリ、ADV150は買いスか?

青木 開発責任者が、「オフ車らしく、足回りにこだわりました!」と語っていましたが、ホンダの走りに対する熱すぎる姿勢はスクーターでも健在です。

――ということは?

青木 男をガツンと刺激するスクーターが欲しいのであれば、コイツを買わない理由はないと思います。ちなみに価格は45万1000円です。

【チェックポイント5】荒れた路面も余裕の足回りで、乗り心地も良好。ブレーキは前後ともディスク式!

●青木タカオ 
1973年生まれ、東京都出身。法政大学卒業。バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに。バイク専門誌を筆頭に執筆媒体多数。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み』(秀和システム)など。実は現役の二輪専門誌編集長でもある

青木がねちねち取材していた営業責任者の古賀耕治氏(左)と、開発責任者の箕輪和也氏(右)