ツーリングシーズン到来! てなわけで、新型コロナ禍による自粛疲れを癒やす最新バイクはどれか? モータージャーナリストの佐川健太郎(さがわ・けんたろう)氏が解説する!
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■1位はコスパ最強!? BMWの新型だ!
――5月末に新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が全面解除されました。今月19日からは県をまたいでの移動もオーケーになったということで、いよいよツーリング自粛も解禁かと。
佐川 しかも今は絶好のツーリングシーズンです。自粛疲れを癒やして気分をリフレッシュし明日への活力を養うためにも、バイクに乗って遠出をするのはいいと思います。
――で、今、魅力的な新型バイクがズラリ勢ぞろいだとか?
佐川 そうなんです。国民ひとり当たり10万円を配る「特別定額給付金」もそろそろ懐に入りそうですし、この際それを頭金にして憧れのマシンを手に入れるチャンスかもしれません。低迷している経済の活性化にも貢献できて、バイクを通じての出会いや経験が新たな人生を切り開く転機になるかもしれませんよ!
――ということで、今回は佐川推しの最新ツーリングバイクをご紹介いただけますか。
佐川 はい、ではベスト5を独断と偏見で。庶民感覚から外れたくないので、今回はとてつもなく高額なラグジュアリーツアラーなどは除外しています。で、第1位はこれしかありません。BMWのF900XRです!
――いきなりBMW!? 高級外車の代表格では?
佐川 と思いきや、BMWのなかでも超コスパに優れたモデルがF900XRなのです。BMWというと伝統の水平対向エンジン、いわゆるフラットツインを連想する人が多いと思いますが、「F」シリーズは並列2気筒を搭載する比較的新しいラインで、軽量コンパクトな車体と扱いやすいエンジン特性が特長です。
そのなかで今春デビューしたてのF900XRは見た目のとおり、オンロードとオフロードのいいとこどり。
――今春に試乗されているんですよね?
佐川 ええ。欧州で開催された国際試乗会に参加してきましたが、パラレルツインのはじけるサウンドが心地よく、荒れた峠道でも長い足がショックを吸収してスーパースポーツ並みに走る。場所さえ許せば200キロ近い高速クルーズを悠々とこなす。
さらにスゴいのは電子制御サスペンションで、4種類の走行モードや路面状況に合わせて瞬時に乗り心地を最適化する機能が装備されています。純正のラゲッジシステムも完璧。まさに至れり尽くせりの装備で価格は115万円くらいからで、同クラスの国産モデル並みに抑えられていることが驚きです。
――このジャンルはやはりBMWが強いですね。で、第2位は?
佐川 ホンダのCRF1100L アフリカツインアドベンチャースポーツを推したいです。近年はアドベンチャーブームといわれますが、その原型はラリーマシンです。ガッツのある大排気量エンジンと強靱(きょうじん)な足まわり、空力ボディによって道なき道を高速で走破していく。ラリーマシンはいわば究極のツーリングマシンの姿なのです。
ホンダは今年のダカールラリーで31年ぶりとなる悲願のニ輪部門総合優勝を果たしました。そのファクトリーマシンの設計思想とテクノロジーを惜しみなくぶち込んだのが新型アフリカツインです。
なかでもアドベンチャースポーツは長距離ツアラー仕様で、もともとの走破性の高さに加え電制サス(ES)やビッグタンク、有段式オートマ(DCT)付きも設定されるなど、さらに快適に距離を伸ばせるようになっています。平均的な日本人でも余裕のローシート(高さ810mm)が選べるのもうれしい。これなら日本一周はおろか世界一周もたやすい。
――続いて3位は?
佐川 3位はヤマハのツーリングセローです。セローは空冷250cc単気筒のシンプルなエンジンと軽量スリムな車体を生かし、"二輪二足"のコンセプトどおり両足をバタバタ着きながら、山道でも渓流でもどこでも入っていける抜群の機動力が魅力です。そのツーリング用強化パッケージがツーリングセローです。
大型スクリーンやエンジンガード、大型キャリアを装備し、キャンプにも最適なタフ仕様になっています。しかし悲報が......。登場から35年の長きにわたって愛されてきたセローもついにファイナルエディションに(号泣)。買うなら今しかありません!
――マジか! 欲しい人は10万円を握り締めてバイク屋へ突っ走るべし!
佐川 そして4位ですがハーレーのソフテイルスタンダードかなと。これは今年出たばかりの最新モデル。「ハーレーならやっぱビッグツインの醍醐味(だいごみ)! でも、ギンキンの巨大ツアラーは値段的にも買えないし......」という人にオススメの一台です。
古き良きハーレーを彷彿(ほうふつ)させる超クールなチョッパースタイル、魂を揺さぶるような鼓動感はハーレーでしか味わえません。映画『イージーライダー』気分で時計を投げ捨てて旅に出かけるのもアリかと。
――そして5位は!
佐川 KTMの390アドベンチャーです。ポイントは普通二輪免許で乗れる本格派スモールアドベンチャーなこと。フレーム構造や足まわりなどの車体の基本設計は、ダカールラリーと共に歩んできた歴代KTMアドベンチャーシリーズの伝統的な流れをくんでいます。まさに小さな巨人。
今年の初めにカナリア諸島を300kmほど走破してきましたが、溶岩が転がるガレ場でもアクセル全開で突っ走れるポテンシャルの高さは本物です。
あと、次点にどうしても入れておきたい激推しの一台がありまして......。
――それはなんですか?
佐川 ホンダのADV150です。理由はスクーターなのにアドベンチャーとツアラーのメリットを兼ね備えている点。ベースがスクーター界の優等生のPCX150で、突っ込みどころのない完成度なのですが、ADV150ではさらにサスペンションを強化し2段階調整式スクリーンやワイドバーなどダート走行を前提とした装備になっています。
見た目もなんとなくアフリカツインに似ていますが、それもそのはず、開発者は両モデルとも手がけた人だったりします。シート下に荷物も入るし、150ccとパワーも十分で高速道路も走れるため、その気になれば高速を使ったタンデムツーリングも可能なわけです。もしかすると、最もコスパに優れたツーリングマシンといえるかもしれません!
(写真協力/BMW ホンダ ヤマハ ハーレーダビッドソンジャパン KTMジャパン)