不特定多数の人と接触しないで済むマイカー利用が注目されているのは言うまでもないが、これからのクルマ選びにおいて必須オプションになるのが「サンルーフ」だ。
日本ではすっかり下火になりつつも、3密回避にはもってこいの換気能力を発揮。「新しい生活様式」ならぬ「新しいクルマ選び様式」の最強アイテムを一挙大公開!
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■開閉式サンルーフは最強の換気アイテム
新型コロナ後の世界では、昨今の自動車業界最大の懸念となっていた「日本人のクルマ離れ、マイカー離れ」にも歯止めがかかるかも......と、ちょっとだけ期待している関係者が実は少なくない。
何せ、公共交通機関はどうしても「3密」になりやすい。だったらクルマ移動......となっても、レンタカーや最近ハヤリのカーシェアでは、いつ誰が触ったクルマかもわからず、なんとなく不安に感じる人も多いだろう。
クルマでの3密回避のポイントはやはり「換気」だ。となると「窓全開」で走るのが最も効果的だが、雨天や高速道での窓全開はさすがに厳しいしなあ......と悩んでいた週プレは、リモート編集会議の真っただ中に「サンルーフがあるじゃないか!」と気づいてしまったのだ。これって、もしかしたら大発見じゃねーの!?......と。
そこで、週プレでもおなじみの自動車評論家の佐野弘宗氏に聞いてみた。
「サンルーフ(sunroof)という英単語は"日光が入る窓がついた自動車の屋根"という意味です。本来の意味ではおなじみの開閉式のほか、欧州車に多い固定式ガラスルーフなども含まれるので、固定式と区別するために開閉式を"スライディングルーフ"と呼ぶこともありますが、日本でサンルーフというと、基本的には開閉式を指します。
確かに開閉式のサンルーフは最強の換気アイテムといえるかもしれません。サンルーフなら、全開にして高速道路を走っても車内は意外なほど平和ですし、それでいてオープンカーに近い開放感と換気性能を発揮します。
それに、雨が降っても、サンルーフの後端をピッと引き上げる"チルト機能"を使えば、よほどの暴風雨でなければ室内に雨が浸入してくることもありません。チルト状態で走ると、走行中の気流の負圧で、室内の空気をどんどん吸い出してくれるんです」
■オコボレ(?)のサンルーフ車を狙え!
よし、やっぱり、アフターコロナのクルマ選びはサンルーフを見直せ!!......である。
「ただ、ひとつ注意が必要なのは、サンルーフを用意する国産車が最近めっきり少なくなっていることです。
今から20年ほど前までは、セダンにミニバン、SUV、そして軽自動車に至るまで、それこそ"サンルーフがあるのは当たり前"でしたが、今やサンルーフを用意する車種が数えるほどしかないメーカーも多く、スズキとダイハツに至っては(他社からのOEM商品を除けば)開閉式サンルーフがあるクルマは国内に一台もないんですよ!!」
ええっ!? アフターコロナで大ブレイク必至(?)のサンルーフはなぜ減っているのか。
「ズバリ、あまり売れないからです(笑)。世界的に見ると、日本はもとからサンルーフ装着率が低めの市場でした。しかも、最近の日本では窓や屋根を開けて走るクルマも明らかに減りましたし、直射日光=紫外線はお肌に悪い......という健康意識も高まっています。
自動車メーカーに限らず、多くの企業が"少ししか売れないものは最初から造らない"という効率重視の経営に傾倒した影響もあるでしょう」
だが、サンルーフが世界的に人気がない......というわけではないらしい。
「自動車メーカーによると、中国市場では"予算があればサンルーフ"というくらいに人気だそうですし、中国に次いでアメリカ市場でもサンルーフは根強く支持されています。中国とアメリカという世界の二大自動車市場がこれですから、サンルーフはいまだ世界的人気の装備といっていいでしょう。
また、欧州では開閉式サンルーフこそ下火ですが、ヨーロッパ人は基本的に日光浴が好きなので、固定式のガラスルーフはいまだに増えています。
正確には、日本メーカーがサンルーフを避けがちなのも、あくまで国内向けだけ。実際、セダンやSUVなどのグローバル商品では、日本にもオコボレ(?)でサンルーフが用意されるケースは少なくありません。
ただ、ミニバンや軽自動車などの国内専用色が強いクルマには、対照的にサンルーフが用意されないのがお約束になってしまっています」
■迷ったら選んで損なし!
......というわけで、この原稿を書いている2020年5月18日現在の国産新車のラインナップを調べてみた。
例えば、日産はスカイラインやシーマ、フーガ、ティアナといった高級セダンにこそサンルーフをそろえるものの、それ以外はエクストレイルとエルグランドに用意するのみ。軽やコンパクトカーは全滅。
ホンダに至っては国内でサンルーフがあるのはシビックハッチバック、CR-V、アコード、レジェンドの4台。ちなみに、アコードとレジェンドはサンルーフ付きしか選べない。これ以外には、軽も含めてサンルーフを選べるホンダ車はない。
こうした日産やホンダとは対照的に、サンルーフが充実しているのはトヨタだ。
例えば、高級車ブランドのレクサスはさすが全車グローバル商品だけに、LC以外のすべてにサンルーフの用意がある。ただ、そのLCにも、開閉不能なパノラマガラスルーフが用意されている。
トヨタブランド車でも、カムリやRAV4、プリウスといったグローバル商品にはきちんとサンルーフが用意されているし、クラウンという日本専用色の強いセダンでもきちんとサンルーフが選べる。
さらにうれしいのは、ノア/ヴォクシー/エスクァイア、そしてアルファード/ヴェルファイアなど、国内専用色の強いミニバンにも、ツインムーンルーフという大面積サンルーフがあることだ。ミニバンのサンルーフは今では、特に貴重である。
「トヨタはアイシン精機という大手サンルーフメーカーをグループ内に抱えることもあってか、サンルーフの設定には積極的です。絶対的な販売台数の多いトヨタは結局のところ、サンルーフだけでなく、細かなオプションやいろんな選択肢を用意してくれていますよね」
マツダ、スバル、三菱は今や日本専用商品も少ないので、国内向けのサンルーフも数こそ少ないが、比率は意外に高い。特にマツダは、マツダ2、CX-3、ロードスターという3台以外はすべてにサンルーフの用意がある。
「マツダは他社と比べても国内生産比率が高く、海外向け商品の多くも日本から輸出しています。どうせ国内で造っているんだから、国内でも売っちゃおう......と、オコボレというか"ついで"の感もありますが、われわれとしては素直にうれしいですね。
もっとも、マツダはサンルーフだけでなく、多くの車種にMTを積極的に用意したりと、国内専用車を造らない代わりに"日本のファンにもできるだけ選ぶ楽しみを提供したい"というのが社是になっているそうです」
このように、日本では以前よりは確実に減っているが、それでも地道に探せば、まだまだ選びがいもあるサンルーフ。また、新車ではあまり売れない......ということは、中古車になると必然的にレアアイテムにもなる。
「クルマによっては、サンルーフ付きというだけでリセールの査定価格で10万円の差がつくケースもあるようです」
と佐野氏。
ここに紹介したように国産新車のサンルーフのオプション価格は実質8万~15万円なので、「迷ったら選んで損はなし!」なのである。
3密回避にも絶大な効果がある上に、リセールバリューも有利なサンルーフは、ずばり「アフターコロナの新しいクルマ選び様式」ということだ!?
※価格はすべて税込みです。