新型コロナウイルス禍により逆風が吹き荒れた新車販売。そんななか絶対王者と新型コンパクトが激熱の首位争いを展開。ぶっちゃけ、どっちが買いなのか? 自動車ジャーナリストの小沢コージが濃厚解説する。
■新型ヤリスは霜降り牛肉コロッケ!?
んん? 新型コロナの感染拡大が色濃く反映された4月の新車販売ランキングが摩訶不思議な順位になっており、オザワの目は釘づけになった。1位は変わらず常勝ホンダN-BOXで2位を約4000台引き離して1万4000台のぶっちぎり。
しかし、注目したのはそこじゃない。1万台超を売った2位のトヨタヤリスに心底驚いた。複数の関係者から「ヤリスの人気がスゴい」とは耳にしていたが、まさかココまでとは! マジな話、ここ数年登録車がトップ3に食い込むのを見たことがなかったからだ。
それにしても、1位のN-BOXの強さは驚異的だ。2011年に初代を発売すると、わずか5年で国内販売累計100万台達成はホンダ車で最速。そして8年で177万台もホンダ車最速。昨年、単独でも断トツの25万台を売った。
現在、新型コロナの影響で工場は休止。ディーラーも時短営業のなかでも1.5万台近く売っている。月販でも去年11月を除き、累計31ヵ月国内販売トップ。新車界の絶対王者は、新型コロナ時代に突入してもマジでクソ強い!
ちなみに現在、N-BOXは、安いノンターボが売れまくりだが、それも納得で、N-BOXのスゴさは実際オーナーでもあるオザワが誰よりも知っている。それは乗り物としての圧倒的な効率の良さにある。
何せ、たった141万円で高級サルーンを超える広さ、同等の乗り心地とクオリティが得られ、先進安全性のホンダセンシングは登録車並みのレベルよ。それでいて軽自動車税は年間1万円ちょいで燃費はハイブリッドカー顔負け。オマケにF1&スポーツカーイメージもあるホンダブランドの見えまでついてくる。
ついでに言うと車内で子供がラクチンに着替えられる高さと広さも持つ。事実、N-BOXを買うと、「アレ? なんでこれまで高い税金払って登録車を買ってたんだ?」となる。
ある意味、N-BOXは禁断の果実だ。新型コロナ時代に突入したことで、「意外とオフィス行かなくても大丈夫じゃん」と気づいた状況にも似ている。
特にホンダの軽はスズキやダイハツのそれと違い登録車からの買い替えが多く、N-BOXのラクさ、効率の良さに気づくと後戻りできない。それは上半身だけスーツでZoom会議に出席できるお気楽さに近い。
ちなみにN-BOXは軽、ヤリスは登録車とジャンルは違えど、価格はほぼ140万円スタートのガチライバルだ。確かに値段はN-BOXに近いがコンセプトは真逆。ヤリスは小さくかわいく走りがいい欧風コンパクトの強化ハイテク版。
原点は1999年発売の初代ヴィッツ。当時からメインマーケットは日欧で、3代目モデルまでの世界累計859万台超! 直近の販売内訳は欧州が6割強、日本が2割強だ。
要するに事実上の日本ブランドの欧州車なのだ。
しかも、新型4代目になり国内でも欧州名のヤリスに改名し、欧風テイストはより濃厚になった。全長ほぼ4mとN-BOXより約60㎝長いが室内はハッキリ言ってタイト。新型になってキャビンがグッと絞られてスタイル重視になったからだ。
だが、ヤリスはこれまでのコンパクトを超える居心地のよさがあるし、何よりステアリングフィールは圧倒的で、スポーツカー顔負けの質感だ。ヤリスでの遠出はガチで楽しすぎる。
さらに驚きはパワートレイン。売れ筋の1.5Lのガソリンもパワフルだが、全体の39%売れているハイブリッドがとんでもない。速いだけでなく、実燃費はリッター30㎞を軽く超えてしまうのだ。
一方でヤリスが売れた背景には新型コロナの影響があると思う。黙って買って間違いないのはN-BOXだが、コロナの感染拡大を体験し、死を意識し、この先どうなるかわからないこともわかった。何より自粛に耐えてきた。だからこそ、走らせて楽しいクルマにみんな乗っておきたい。それが新車販売2位にヤリスが躍り出た理由では。
オザワに言わせればN-BOXは安くて普通にウマくて満腹になるプレミアム牛丼。片や、ヤリスは高級すき焼き専門店の霜降り牛肉コロッケである。どっちを買うかは価値観次第だけど、購入するなら、ぜひ試乗をするべし!