この数年、「欧米と比較すると日本の電気自動車は周回遅れ」と言われ続けてきたが、ついにニッポンEVの反撃ののろしが上がった。その先陣を切るのが日産の最新技術をブチ込んだアリアだ。自動車ジャーナリストの小沢コージが解説する。
■日産アリアのe-4ORCEがスゴい
今まで散々、「EV開発で遅れてる!!」とか「ハイブリッド一本足打法で大丈夫なのか?」と世界から揶揄(やゆ)されてきたニッポン自動車業界だが、ついにイッパツ大逆転の兆しアリだ!
その主役はズバリ、新型日産アリアだ。昨年の東京モーターショーでコンセプトカーがご開帳されたクロスオーバーEVの意欲作だが、今年5月の日産決算会見で内田誠社長が「7月には発表」と明言。予想外の早い実車投入に、「6712億円の大赤字ショックを打ち消す目的か?」という声も聞こえるが、オザワに言わせるとそれはノーだ!
もちろん決算発表には明るい話題が必要だが、新車開発より新興国開拓を優先したといわれるカルロス・ゴーンが消えた今、アリア発売は急ピッチで進められたはず。何よりも世界初の量産ピュアEVリーフを売ったパイオニアたる日産が、EV界で猛威を振るう米テスラの大躍進を指をくわえて見ているはずがないのだ。
今や日産も「面白いEVを造ればちゃんと売れる!」とはっきり自覚しており、テスラの躍進に発奮したはず。その答えこそが新型アリアなのである。出来は間違いなく超期待していい。というか、この電動化時代に、もしアリアで失敗したら日産はヤバすぎるって!
まずアリアの注目はデザインとサイズだ。東京モーターショーでご覧になった方はおわかりだろうが、その伸びやかかつエレガントなフォルムはドコから見ても美しいのひと言。ぶっちゃけ、既存のガソリン車の枠から抜けきれなかった新旧リーフと比べるとぶっちぎりの鮮烈さだ。
あえて言うと、日産らしいアクの強さがないのがチト残念だが、デザインを担当したのは日産、インフィニティ、ダットサンの3ブランドを統括するキューバ系アメリカ人デザイナーのアルフォンソ・アルバイサ氏。
多文化を把握する感覚に期待大だし、驚くのは欧米メーカーからの引き抜きではなく、1988年から日産に所属するガチの生え抜きということだ。要するに世界における日産車の魅力を熟知するデザイナーである。
サイズも絶妙だ。古くさいセダンではなく、全長4600㎜×全幅1920㎜×全高1630㎜のミディアムSUV。寸法はコンセプトカーの数値なので実車は若干狭くなるかもしれないが、世界のド真ん中で戦えるジャンルだし、中身のパワートレインがマジでスゴい!
アリアには日産が世界に誇るスーパースポーツカー、GT-Rで培ったインテリジェント4WDや、前後ツインモーターが採用されるのだが、実は昨夏、オザワは駆動部分のコンセプトモデルに日産のテストコースでガッツリ乗っている。
見てくれは現行リーフだったが中身は完全に別物で、日産キモ煎りの次世代電動駆動四輪制御技術「e-4ORCE」を搭載。マジな話、コイツのインパクトがスゴかった。前後2モーターで308PS&680Nmと今や世界イチ売れているEVセダンであるテスラ・モデル3もビックリの加速力を持つ。
それだけじゃない! 日産独自の電動コントロール技術で「気持ちいいけど酔わない」運転を実現するというのだ。実は日産のコンパクトハイブリッド、ノートe-POWER、コイツは実燃費だとトヨタのアクアに負け、加速スペックも決してトップではない。
しかし、独自のワンペダルドライブ感覚が人気を博して売れている。関係者に聞いたら1万分の1秒単位の加速コントロールをひそかにしているそうで、その電動化技術の進化版をアリアは間違いなく搭載するとオザワはにらむ!
つけ加えるとアリアにはもうひとつ目玉がある。それは世界最先端の運転支援技術「プロパイロット2.0」の搭載だ。昨年、新型スカイラインに初めて搭載されて話題となった、この技術。ガチで運転支援レベル2で最高峰ともいわれる手放し運転(ハンズオフ)の未来感は圧倒的だ。
もちろん高速道路、それも制限スピード内でしか使えないが、しっかり運転手が前を見ていれば手を添えなくていい。今年、ホンダがレベル3の運転支援をぶっ込むとウワサされているが、アリアは実質そう変わらない先進ドライブ感覚が味わえるはずだ。
そうでなくとも現在のEVはポルシェ・タイカンしかりで、単純な加速力ではなく、ブランド独自の電動風味で勝負する時代に来ている。新型アリアがデザイン・動力性能・コスパでモデル3を超えれば、年間30万台レベルの驚異的大ヒットも見えてくる。新型アリアはそれくらいの可能性を持つタマなのだ。
オマケに今年日本ブランドからはホンダがホンダe、マツダがMX-30と意欲的なEVを市場にぶっ込む! どちらも電池搭載量が35.5kWhで航続距離が200㎞台ってところが腰が引けていて残念だが、独自のデザイン・走り味・パッケージングで勝負に打って出る。オザワに言わせれば、今年はまさにニッポンEV大反撃の年なのである。
なかでもワールドクラスのデザイン・動力性能・航続距離・コスパに優れているはずの日産アリア。そこらへんは来月登場でハッキリするが、マジでコイツに期待せずしてナニに期待するって話だよ!