昨年11月に世界3000台限定で販売された、過激すぎるミニが話題になっている。
今回、自動車ジャーナリストの竹花寿実(たけはな・としみ)が千葉県のサーキットでガツンと試乗。その実力と魅力に迫ってきた!
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■すでに売り切れ!576万円の最強ミニ
――BMWミニの販売が好調です。
竹花 日本の輸入車モデル別販売台数で2016年度から4年連続でトップですから、確かに売れているんですけどねぇ......。
――なんだか奥歯にモノが挟まったような物言いですね。
竹花 ミニの人気は本物ですよ。ただ、昨年度に2万2000台超を販売して4年連続トップというのは、3ドアからSUVのクロスオーバーまで、「ミニ」と名のついたモデルをすべて合計した数字での話なんですよね。
――なるほど!
竹花 だからほかのモデルと台数を比較することにあまり意味はありません。とはいえ、プレミアムなB/Cセグメントカーで、これだけの台数が安定して売れているのはさすがBMWです。彼らはプレミアムカーの造り方や売り方を熟知しているなと。
――ちなみに海外での人気はどうです?
竹花 大人気です。昨年は世界で34万6000台超を販売しました。前年比は4.1%減ですが、主力のミニ3ドア/5ドア/コンバーチブルがモデルサイクルの後半に入り、売れ線のミニ・クラブマンがフェイスリフトのタイミングだったことを考えれば、決して悪くない数字です。
――人気が高いワケは?
竹花 やはり個性的なデザインが最大の理由でしょう。ミニほどオリジナリティがあって、しかも上質なコンパクトカーはほかにありません。モチーフはクラシカルですが、完全に現代のプロダクトで、しかもファッショナブルでスポーティなイメージづくりにも成功している。
――ところで、スゴいモデルに試乗したらしいスね?
竹花 乗りました。昨年11月に発売されたミニジョンクーパーワークス(JCW) GPというスペシャルモデルです。千葉県にある「袖ヶ浦フォレストレースウェイ」というサーキットで特別に乗ることができました。
――どんなクルマ?
竹花 ミニ3ドアのスポーティバージョンであるミニJCWをベースに、モータースポーツのノウハウを詰め込んだ、「歴代市販ミニ最強」のモデルです。
エンジンはミニJCWを75PSと130Nm上回る306PSと450Nmを発揮する2リットル直4ターボを積んでいて、足回りもトレッド拡大や10mmのローダウンに加えて、スプリングやダンパー、スタビライザーが専用にチューニングされ、トルセン式LSDまでついているんです。
――そいつはスゴい! ルックスもド派手です!
竹花 エアロパーツはちゃんとエアロダイナミクスを考慮して設計されています。前後のカーボン製オーバーフェンダーは、ボディとの間に空気の通り道があるフローティング構造ですし、巨大なリアウイングは車体上部の空気の流れを整流するためにとても複雑な形状になっています。
――走りは?
竹花 過去のどんなミニよりもスポーティ、いやレーシーでした。時速100キロ到達は5.2秒と、同じエンジンを積む4WDのミニJCWクラブマンには0.3秒負けるんですけど、軽快感は圧倒的で、超高速域でも直進性は抜群。コーナリングもキレキレで、地を這(は)うようにグイグイ曲がる、驚きの一台です。
――乗りてぇー!
竹花 まさにこれぞ「究極のゴーカートフィーリング」といった走りで、アドレナリン出まくりです。独ニュルブルクリンク北コースのラップタイムが7分56秒69と8分を切るのもうなずける出来栄えです。
――当然、お値段はけっこうするんでしょうね?
竹花 それが意外とそうでもなくて、ミニJCWの110万円高の576万円と、内容を考えれば安いくらいです。でも残念ながら、今回のミニJCWGPは世界で3000台、日本は240台の限定車が、2ヵ月で完売しています。
――残念すぎる(泣)。ちなみにミニの今後は? 確か電動化に積極的ですよね。
竹花 そのとおり。ミニは昨年3ドアの「クーパーS E」というEVを発表しましたが、パワフルな走りがヨーロッパで好評です。また今年5月にドイツで発表されたミニ・クロスオーバーのフェイスリフトでは、PHEVのクーパーS EクロスオーバーALL4のEV航続距離が、従来の最大42kmから最大61kmに拡大したので、ますます注目されると思います。
今のミニは、かつてのクラシック・ミニをセルフカバーしているだけのブランドではありません。個性を磨きながら絶えず進化し続けています。