上半期の新車販売トップは、ホンダの軽自動車N‐BOXに決定! この絶対王者に一太刀浴びせるクルマはあるのか? 小沢コージが解説する。
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■絶対王者を倒す筆頭は新コンパクトSUV!
つ、強すぎる。一時の吉田沙保里並みの絶対王者っぷりだぜ、ホンダN-BOX!
ホンダの軽を再生させるべく2011年に初登場した、この軽スーパーハイトワゴンだが、17年登場の現行2代目の強さがマジでハンパない。昨年末に乗用車で3年連続国内販売ナンバーワン。軽で5年連続トップに輝いたが今年もその勢いは止まらない。新車全体で4年連続上半期新車販売トップに輝いた上、軽に限ると6年連続である。
コロナの影響で販売台数こそ落ちたが、2位スズキスペーシアに4万台近い差をつけてのぶっちぎり。かつて33年連続で国内乗用車登録ナンバーワンに輝いたトヨタカローラを思わせる強さだ。
自動車業界からは「新型日産ルークスがN-BOX超えも!?」とか「スズキ、ダイハツも侮れない」なんて声が安易に出るが、オザワの見立てでは当分N-BOX優位は動かない。決して現N-BOXオーナーゆえのエコヒイキじゃない!
キモはホンダNシリーズ専用プラットフォームのスゴさで、いまだ全長3.4m枠に縛られた軽フォーマットのなかで、最大級の室内スペースを稼ぐ上、ノンターボの660cc直3エンジンがとにかくスゴい。58PSの最高出力からして断トツだし、効率も良く21.8km/リットルのクラス上位のWLTCモード燃費も叩き出す。
さらにつけ加えると、本当に強いのはホンダ流のビジネスだ。実はN-BOXとライバルであるダイハツタント&スズキスペーシアは意外と客層がかぶらない。ガチ比較で買う人もいるが、他社の軽は他銘柄の軽からの乗り換えが多い。
一方、N-BOXは軽より上のホンダフィットやカローラの客を奪っているのだ。要するにダウンサイジング需要狙いだ。だからこそN-BOXは競合より価格が多少高くても売れに売れるし、その分インテリアの質感や乗り心地がいい。しかも今はまだデフレマインドも社会に残る。安くてモノがいいN-BOXの天下は当分続くだろう。
とはいえ、今は100年に1度の大変革の時代。N-BOXを倒す王者は別ジャンルから現れるとオザワはにらむ。
まず次期王者筆頭はトヨタライズ&ダイハツロッキーの新いいとこ取りコンパクトSUVだ。何せライズは昨年11月に登場するなり今年1、2月、そして6月に軽を除く登録車で月販1位を獲得。姉妹車ロッキーを足すと、全体でN-BOXに次ぐ2位!
人気の秘密はトヨタRAV4似のリッパでワイルドなスタイリングと効率的な造りだ。ちなみにライズとロッキーの開発と生産はダイハツが行なっている。160万円台スタートの安さを実現した上、それを感じさせないクオリティも実現。まさに新世代のコンパクトSUVだ。
ハイブリッドこそ選べないが、新開発の1リットル直3ターボが選べ、適度なパワーと低燃費を両立。今年中にもしかすると王者N-BOX食いも!?
次の候補は昨年末に発売された軽SUVの新型2代目スズキハスラーだ。当初は軽単独ランキングで8位ぐらいだったが、直近6月はN-BOX、スペーシア、ルークスに次ぐ4位に急浮上。トップ常連のスーパーハイト系ダイハツタント超えまで達成である。
最大の魅力はイマドキのカッコいいSUVデザインをまといつつ、中身はかつての軽王者ワゴンRであることだ。
日本で猛威を振るう両側スライドドアはなく一般的なヒンジドアで狭い駐車場では少々不便だ。しかしワゴンRがそうだったがドア回りやフロア構造がシンプルな分、価格が絶対的に安い。N-BOXやタントが頑張っても120万円台半ばスタートなのに対してワゴンRは110万円を切る。
ハスラーは今のところ豪華装備と出し惜しみで136万円強スタートだが、その気になれば両側スライドドアより絶対に安く出せるはず。
そしてモデル末期に近い発売5年目のスモールミニバンのトヨタシエンタも、オザワがマークする一台だ。今まで年間販売でトップになったことはないが、アクアやプリウスに次ぐ陰の人気モノで息の長さがハンパない。
当初はコンパクトな7人乗り3列シート車のみだったが、一昨年に5人乗り2列シートの車中泊対応車を出したら人気爆発!
シエンタの真の本質はデカいN-BOXだ。小型なのに背高で両側スライドドアで超便利。数年後、超低燃費を誇る新型ヤリスの新プラットフォームをベースにシエンタが生まれ変わったらN-BOX食いはマジでありえる。シエンタの大化けにも注目だ!