コロナ禍で先が読めないニッポン経済。いざというときに高値で売れる資産価値の高い車は魅力的だ。夏のボーナス商戦で狙うならどれだ!? ジャーナリストの渡辺陽一郎が解説!
■ランクルのリセールがマジでハンパねぇ!
――いよいよ夏のボーナス商戦本番ですが、今年はどんな感じですか?
渡辺 最近はクルマの売れ行きが鈍いため、時期を問わず限界に近い値引きで売っていますが、特に今年は3月の決算フェアが終わった直後の4月7日に、政府が史上初の緊急事態宣言を発令。
国内の新車の売れ行きも鈍り、4月の対前年比は29%、5月は45%、6月は23%のマイナスとなりました。この状態で値引きを抑えるのは難しく、販売店によっては「3月決算フェアがずっと続いている状態です」と話しています。
――ということは、今年の夏はお買い得であると?
渡辺 しかし、近年の新車の売れ筋は軽自動車やコンパクトカーです。この手のクルマは販売店の受け取る1台当たりの粗利がとても少ない。販売店は「メーカーの支給する販売奨励金も昔に比べて大幅に減っているし、特別な場合以外は支給されないこともある」とボヤいています。
――売れ筋の軽自動車やコンパクトカーから好条件を引き出すのは難しいと。なんかお得な買い方はありません?
渡辺 実はコロナ禍で中古車市場は大荒れなんですが、そこでコロナに負けず値崩れしない、数年後にも高値で売却できるリセールバリューの優れた車種を選ぶという発想の転換はどうでしょう?
――というと?
渡辺 コロナ禍で経済も雇用も先が読めません。だから、いざというときに高値で売れる、資産価値の高いクルマを持つのも賢い選択かなと。
――売却時を見据えろと。
渡辺 もちろん、新車購入で大切なのは自分の用途/好み/予算に合った車種やカラーを選ぶことですが、迷ったときはリセールバリューを考慮すると経済的です。購入して10年以上使うと差もつきにくいのですが、5年以内に次のクルマに乗り替えるなら、リセールバリューの良しあしで実は次の購入時の支払いに大きな差が出るんです。
――ほう!
渡辺 大手買い取り店などに聞いたらリセールバリューが最も高い車種はランドクルーザーでした。今年フルモデルチェンジするウワサもありますが、「現時点(7月上旬)で、3年落ちなら新車価格の70%前後で買い取ります」と言っていました。
――ちなみに普通のクルマの買い取り価格というのは?
渡辺 クルマによっても違いますが、平均すると40~50%。で、試しにトヨタの販売会社でランドクルーザーの残価設定ローンの見積りを取ったら3年後の残価率(将来の下取り価格)は65%でした。
――残価設定ローンは総額から残価を差し引いた金額でローンを組む方法ですね?
渡辺 そのとおり。残価率は販売会社によって多少異なりますし、販売会社が損をしないように若干控えめな比率にしてあります。
――なるほど。
渡辺 その残価率が65%なら大手買い取り店の場合、70%もありえる。ランドクルーザーZXの価格は約700万円なので、3年後の残価率が70%なら490万円で売却できます。
――なぜランクルは残価率が高い?
渡辺 買い取り店いわく、「ランクルはもともと販売台数が少ない(昨年の月平均は約220台)。その割に中古車を求めるお客さまが多い。しかもランクルは悪路に強く、海外でも人気が高いため中古車輸出も活発です。その結果、中古車市場の流通台数に比べて需要が多く国内と海外で争奪戦が起きている。ゆえにお客さまが売却するときの金額が高まる」そうです。
――ランクルはお買い得と。
渡辺 ただしランドクルーザーZXの価格は700万円なので、3年後に新車価格の70%で売却できたとしても、3年間に210万円使ったことになります。トヨタの大人気コンパクトSUVのライズなら206万円のZ(2WD)を買ったら3年後の残価率は51%ですから3年間に使う金額は109万円程度です。
――なるほど。ちなみにリセールバリューが高いクルマはほかにもある?
渡辺 ランドクルーザープラドも高いです。発売は2009年と古いんですが、トヨタの残価設定ローンでは、3年後の残価率を63%まで高めている。ただしランドクルーザーとプラドはかなり特殊なケースのクルマです。
――というと?
渡辺 この2車種は新車の登録台数が少ないので希少性がある。さらに新車価格が高いから中古車を希望するユーザーも多い。そこに海外の熱狂的な需要も加わり、リセールバリューを高めています。ハイエースも海外を含めて中古車人気が高いので高値で売却できますが、かなり特殊な例だと考えてください。
■SUVとミニバン、狙い目はどれだ!?
――一般的にリセールバリューが高い車のポイントは?
渡辺 カテゴリーで見るとSUVは安定した人気を誇り、急に廃れる心配はないでしょう。このほか衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールを備えているとポイントが高い。ボディカラーは新車を買うなら好きな色を選ぶべきだとは思いますが、リセールバリューを気にするならブラックマイカとかホワイトパールが人気です。
――注意点は?
渡辺 販売台数の極端に多い軽自動車やコンパクトカーは要注意です。発売直後に買えばいいんですが、新車から4年を経てマイナーチェンジ後のモデルを購入し、さらに5年間乗ったとします。そうすると売却時には、その車種は発売から9年が経過している。
その時点で人気車なら中古車市場に大量に流通しています。人気車は中古になっても購入希望者は多いですが、流通台数がそれ以上になると値崩れの恐れがある。コンパクトカーや軽自動車を数年で売却する場合は発売直後を狙うべきです。
――ちなみに今、リセールバリューの高い激推し車は?
渡辺 ハリアーは今年6月に登場した大人気SUVの新型です。そのために残価設定ローンの残価率も3年後で56%。ランドクルーザー&プラドと違って60%は超えませんが非常に高い数値です。
――意外といったら失礼ですが、デリカも人気が高いと。
渡辺 激戦区のミニバンのなかではマイナーな存在ですが、ディーゼルを搭載する走破力の優れたミニバンはデリカD:5だけです。熱狂的なファンも多く、中古車人気も高い。買い取り店では「3年落ちなら新車価格の60%以上」といいます。
残価設定ローンの残価率も3年後で55%だから高い部類に入ります。デリカD:5の発売は07年と古いですが、19年に実施された大幅なマイナーチェンジによりフルモデルチェンジ並みの人気です。
――ジムニーも強そう。
渡辺 ジムニーはかなり期待できます。生産規模は18年の発売当初は1ヵ月に1700台前後。昨年から2400台程度にまで増やしましたが、やはり納期は今でも約1年と長いため、中古車市場でのジムニーの高い人気は維持されていますね。
――ミニバンはどうです?
渡辺 価格が400万円を超える一部のミニバンもリセールバリューが高い。特に18年にマイナーチェンジを受けた現行アルファードの後期型は、フロントマスクの変更が奏功して売れ行きを伸ばしました。
――6月の新車販売台数ランキングでは5位でしたしね。
渡辺 それまでは姉妹車となるヴェルファイアの登録台数が多かったんですが、マイナーチェンジ後は順位が逆転してアルファードの販売が好調です。中古車市場でも引く手あまたで、アルファードの後期型は好条件で売却できます。
――そのほかのミニバンは?
渡辺 日産の残価設定ローンでは、セレナeパワーの残価率を3年後で60%まで高めています。今の日産は売れ筋車種が限られており価格が300万円以上で堅調に売れる車種はセレナeパワーだけ。そこで戦略的に残価率を高めて月々の返済額を減らして販売促進を図っている面も。中古車市場で人気のミドルサイズミニバンなので有利に売却できるでしょう。
――ほかに注目は?
渡辺 駆け足になりますが、ホンダのS660、日産のエクストレイル、そしてホンダのN-BOXのカスタムも注目です。ただしリセールバリューも大切ですが、まず試乗をしてください。新車は決して安い買い物ではありませんから。