6月に発売されたトヨタが誇る2台の大物SUV、ハリアーとRAV4 PHVが売れに売れ、大きな話題を呼んでいる。ということで、横浜で開催された試乗会に自動車ジャーナリストの小沢コージが突撃。試乗はもちろん、関係者も直撃し、その人気の秘密に迫った!
■すでに4万台超を受注! ハリアー人気がスゴい
ぬぉぉぉ、こりゃエロいぜ! ついにオザワは今年最大の注目車に乗ることができた。それは4代目トヨタハリアーだ。1997年デビューの元祖クロスオーバーSUVで、あのBMWX5やポルシェカイエンより先にワイルドなクロカン4WD風の外観と高級サルーンの快適性や走りのよさを組み合わせたイマドキの高級車である。
新型の初期受注は4万台突破も予想される大人気ぶり。ハリアーの佐伯禎一チーフエンジニアは「いい男に見られたい、ひと回り大人に見られたい、そういう方たちが多くいらっしゃったということでしょう」と冷静に分析。
だがオザワはつけ加えたい。ハリアーには欧米車にはない和のエロさ、奥ゆかしいセクシーさがあり、それを今の日本人が追い求めた結果ではないかと。
今でこそ大人気のSUVだが、その先駆けたるハリアーはほんの10年前にはモデル消滅の危機にひんしていた。というのも、ハリアーは初代からアメリカでレクサスRXとして売れ行きを伸ばし、2009年発売の3代目からデザインがマッチョにグローバル化。同時にハリアーの名前や和のテイストは封印し、日本でもレクサスに統一される予定だったのだ。
ところが2代目ハリアーが思わぬミラクルを起こす。ほかにない端正なSUVデザインであることが受けまくり、「20代のサラリーマンがローンで買うクルマ」として有名に。結果、10年間も延長販売され、トヨタも重い腰を上げ、ついにハリアーを完全復活させたのだ。
それが国内専用モデルとして2013年に復活した3代目である。サイズ控えめで見た目はリッチかつスマート。内装もお金をかけすぎず、本革なしで上質さを追求したら大評判に! 国内で31万台も売れた。そして、今年、国内市場メインで4代目へと生まれ変わったのである。
対面した新型ハリアーだが、安心したのは進化したハリアーネスだ。グリルをはじめ基本はクリーンな水平基調で、3代目からの正常進化。ハデな変形ライトや過剰なコークボトルラインは使わず、あくまでも端正さをキープしている。
しかし骨格は現行RAV4と同じ新世代のGA-Kプラットフォームを使っているため品質が高いだけでなく、ホイールベースが3㎝延長されて伸びやかに。同時にグリルやテールランプは3代目より凝ったLED照明を使いつつも薄く控えめ。主張を抑えつつハリアーらしさをしっかり出している。
特に和のセクシーさがビンビンなのが内装だ。3代目も本革を使わず人工革で輸入車に負けないゴージャスさを醸し出していたが、4代目はさらに一段シブさを演出。
シートはファブリック、ファブリックと人工皮革のコンビ、そして本革の3パターンから選べるが、どれもこれ見よがしなツヤありではなくシブいマット調。ウッド調パネルもテカテカとは無縁な、流木のごとき風合い。ピカピカの総大理石の部屋じゃなく、シブい銀座の料亭をも思わせるワビサビリッチ感がある。
片や走りは、完璧に上質な高級サルーンのそれ。中身は現行カムリから始まり、RAV4にも使われている高剛性FFプラットフォームだから走り始めから超滑らか。乗り心地に荒さは一切なく、過剰な柔らかさもない。
パワートレインはトヨタ自慢の最新2.5Lハイブリッドと2Lノンターボの2本立て。なかでも前者はシステム出力218PSと余裕のパワーを備えつつ、フル充電状態ならほとんどEVとして超静かに走れる。もはやトヨタ品質を超越し、レクサスに迫る質感だ。燃費もWLTCモードで22㎞/L台と文句ナシ。
エントリーグレードの2Lノンターボもいい。絶対パワーは171PSと大したことはないが、トヨタ自慢のダイナミックフォースエンジンで伸びやか。発進用に1速ギアを追加したダイレクトCVTのおかげで加速は気持ちいい。
安全性能も最新レベルで、夜間に歩行者を検知できる緊急ブレーキや、高速で追従走行やレーンキープアシストができる先進安全機能トヨタセーフティセンスも標準装備。
そして本当のキモは価格。価格戦略の担当者いわく「299万円は絶対死守でした」というように、ガソリンモデルは消費税込みで299万円スタート。
マジな話、この品質のミディアムSUVでこの値段はありえないし、旧型に比べ実質値下げしている。この安さがあれば20代の若者が買える。輸入SUVなら平気で400万~500万円するクルマを300万円で売っている。そりゃ売れるよ!
ちなみに現在、国内専用車があるのは軽とミニバンとクラウンぐらいで、SUVはRAV4や他社を含めてほぼすべて世界戦略車であり、日本向け高級SUVなんてほかにはない。
しかし、新型ハリアーは北米や一部アジアでも売るが、それはあくまでもテスト。「日本人に向けた日本SUVをお届けしたい」と佐伯エンジニア。ハリアーは日本の物づくりのとりでなのよ!
■RAV4 PHVは受注停止!
今回、オザワはRAV4 PHVにも乗った。トヨタSUV初のプラグインハイブリッドで、昨年発売のRAV4ハイブリッドをベースに、18.1kWhの巨大リチウムイオン電池を載せた電池増し増しバージョンだ。
フル充電すれば95㎞もEV走行することができて、時速135キロまでならまったくエンジンを使わずにも走れる、半分半分電気自動車SUVでもある!
6月8日に発売すると瞬く間に注文が殺到し、6月末には受注を一時停止する事態に。月販予定の300台を軽く突破する受注が入ったからだ。
担当の宮浦猛エンジニアが「まさか500万円のクルマがこれほど売れるとは」と正直すぎる感想を漏らすが、確かにRAV4 PHVの価格は469万~539万円と決して安くない。
またPHVは今年4月に事業開始となったトヨタとパナソニックの合弁会社「プライム プラネット エナジー&ソリューションズ」の新型電池のみを専用として使用するため、替えの電池がないという背景もある。
もちろん、乗ったら売れる理由はハッキリわかった。とにかくハンパじゃなく速いのだ! ノーマルのRAV4ハイブリッドは2.5Lハイブリッドでシステム出力約221PS。
しかしPHVはほぼ1.4倍の306PSと超パワフル。時速100キロ到達は6秒とスポーツカー並み。とにかく過激でアグレッシブ。街中はフル充電状態ならほぼエンジンはかからない。特にEVモードで走るとそうだ。
しかしハイブリッドモードに切り替えると性格が変わる。高速道路に入り、モーター加速だけでは物足りなくなったとき、アクセルをベタ踏みするとエンジンがスタート。
まさに「2段ロケット発射!」ってな感じでモーター+エンジンの大バカ加速が炸裂(さくれつ)するじゃないか! コイツはマジでハンパない。もともとワイルドでヤンチャ系SUVのRAV4が、また一段濃厚なおバカキャラになった気分で走れるのだ。
RAV4 PHVの加速はマジでビンビン。この刺激的な走りも売り切れの理由のひとつとオザワはにらんでいる。ぜひ試乗してみてほしいクルマなんだってば!