7月下旬、千葉県のサーキット場で開催されたヤリスクロスの試乗会に、モータージャーナリストの小沢コージが突撃。正式デビュー直前の新型に試乗し、その実力にガッツリ迫ってきたぜ!
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■フロントマスクは宇宙人!?
目からウロコが落ちたぜ、新型ヤリスクロス!
コイツはトヨタがコロナの渦中に発表した期待のコンパクトSUVだが、トヨタはすでにミディアムサイズのハリアーとRAV4、それよりちょい小さいC-HR、そしてコンパクトなライズとSUVのラインナップは超充実。
オザワ的には「ヤリスクロスはどこを狙ってるんだ?」と思っていたが乗ってわかった。コイツは全域スポーティ。走りからスタイルまで"SUVスポーツカー"と呼びたくなるほどの超濃厚キャラなのだ。
まず驚いたのは走りの質感でありハンドリングだ。そもそも欧州車に負けないクオリティを持つヤリス。その新型から導入された新世代プラットフォームのTNGA-Bを使っているのだが、まさかココまで味がいいとは!
ボディサイズは全長4.1m強、全幅1.7m強とヤリスよりひと回り拡大しつつ、車重は100kg増程度。そのためハッチバックの軽快なテイストがほぼそのまま残っているのだ。
おそらくトヨタは走りに自信があるのだろう。今回、ヤリスクロスの試乗会が開催されたのは千葉県にあるサーキット場「袖ケ浦フォレストレースウェイ」。
まずオザワが乗ったのはヤリスシリーズ最大の武器たる新型1.5リットルハイブリッド搭載のFFモデルだ。これが走りだすなり気持ちいい上、速すぎるからビックリ!
厳密には出足はヤリスハッチバックより抑えられているが、アクセルを踏むなり電動感がものスゴい。システム出力116PS、モーター出力80PSのパワートレインが利いており充電状態にもよるが、ピュアEVのように踏んだらガツンとクルマが前に出る。
さらにビックリなのが、滑らかかつクイックなハンドリング。ハッチバックより重く背高ボディになったSUVだが、ステアリングを切り込むと間髪入れずにノーズがついてくる。これにはホント驚きで見た目は背高ノッポだがそれをほぼ感じさせない。乗り心地もサーキットだけに読めない部分もあるが、滑らかに凹凸をトレースする。
加え、競合車と比較した場合、絶対的アドバンテージになるのが燃費だ。なぜならベースのヤリスハッチがモード燃費で36km/リットルを記録し、実燃費も30km/リットル台を記録するスーパー低燃費コンパクト。
ベースのヤリスから100kgしか重くなってないヤリスクロスだけに実燃費は25km/リットル前後を叩き出すとオザワはにらんでいる!
次に乗ったハイブリッドの4WDモデルがまた驚きで、てっきり滑りやすい雪道などで、リアが滑ったときのみ応答するセーフティドライビング用の電動モーター4WDかと思いきや、サーキットでも十分楽しい。
というのもコーナリング中に、アクセル全開にするとお尻が外に膨らむように動き、コーナリングを助けてくれるのだ。その動きはラリー用の4WDマシンのよう。
しかもこの特性は全ラインナップで発揮される。最もボディが軽い120PSの1.5リットルエンジン搭載のガソリン車なんか驚くほどのコーナリングマシンだ。もともとTNGAプラットフォームの出来がいいので、本来なら前輪駆動で曲がりにくい特性のFF車ながらハンドルは切ったとおりにグイグイと曲がる。
一方、見た目はチーフエンジニアが「名前はヤリスですがフロント、サイド、リア共にほとんど意識していません」と話すようにコンパクトハッチのヤリスとは大違い。
ヘッドライトはヤリスっぽいが、外板に共有パーツは一切使われておらず、何より全体のノッペリ感が新しい。担当デザイナーいわく、「プレスラインを極力廃した分、表情におけるシワがまったくありません」と語る。
実際フロントマスクは宇宙人のようだ。欧米人やSF好きにはウケそうではあるが、保守的なニッポンの年配客がどう反応するのか楽しみだ。
ちなみにインテリアはほぼヤリスのそれ。共有化の権化トヨタらしい戦略だが、インパネ、シート、ドアトリムは一部センター部を除きヤリスと同一。よって腰から下はさして広くなってないが上方視界が良くなっているのとシート座面が2cm上がったリアはスペック以上の広さを感じる。
素晴らしいのは実用性だ。ラゲッジ容量は390リットル。コンパクトSUVではトップクラスで後席中央を倒せば長いスキー板も載せられるし、2分割のアンダートレイを選べば大型トランクも積める。大型ゴルフバッグを2個積めるのも他車にない広さ。
実は欧州ではコンパクトSUVは超激戦区。ヤリスクロスはそこに打って出る戦略車だ。日本ではやや過激に見えるスタイルもそのせいなのだが、このクラスの台風の目になるのは確実だってば!