新ブランドアンバサダーに就任した木村拓哉の新CMが大きな話題を呼んでいる日産。
逆襲の嚆矢(こうし)たる新型SUVキックスも好調な滑り出しをマーク。果たして、今後の展開は? モータージャーナリストの小沢コージが濃厚解説する。
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■日産の命運を握る新型が年内登場!
ついにお尻に火がついたって感じだぜ、日産! 5月の決算発表でかつてのリバイバルプラン以来となる6712億円の大型赤字を公表。その結果、英紙フィナンシャルタイムズに「日本政府関係者が日産とホンダの経営統合を模索していた」と報じられた。
しかし、オザワ的にはありえない話だなと。日産とホンダでは企業風土がまったく合わない上、そもそもホンダがそんな案を受けるわけがない。仏政府がチラつく面倒な会社とはつながりたくもないからだ。
日産にしてもブランドロゴをフラットに一新、決算直後には「今後18ヵ月で12の新型車を投入する」と発表。ヒットが出れば業績のV字回復が見込める巨大水商売の自動車ビジネス。日産の自力復活を読み解く鍵は合併ではなく怒濤(どとう)の新車攻勢にある。
今後市場に投入される日産の12車種はアルファベット順にアリア、フルサイズSUVのアルマーダ、ピックアップのフロンティア、コンパクトSUVのキックス、再びピックアップのナバラ、グローバルコンパクトのノート、コンパクトSUVのパスファインダー、同じくキャシュカイ、ミッドサイズSUVのローグ、アジア向けSUVのテラ、再びSUVのエクストレイル、そして伝統FRスポーツのフェアレディZだ。
車名になじみのないSUVはフレーム付きの屈強なトラックタイプで主に海外向け。日本市場には直接関係ナシ。注目はキックス、アリア、ノート、エクストレイル、フェアレディZの5車種だ!
なかでも6月末に発表された小型SUVキックスは早くも大人気。コイツは4年前にブラジルで発表された、新興国や北米向け小型SUVだ。正直、オザワはさほど期待していなかった。生産はタイで、要は日本市場に注力してこなかった日産の苦肉の策だと思っていたからだ。
ところがどっこい! 実物は予想以上の出来だった。全長4.2m台は狭い日本で最適サイズ。見た目も日本導入のタイミングで大幅リフレッシュ。特にフロントのダブルVモーショングリルがカッコいい。内装クオリティの高さにもビックリした。
さらに日本で猛威を振るう日産流1.2リットルハイブリッドたるeパワーとご自慢のハイテク・プロパイロットを全車装備である。
しかもノートよりeパワーは格段に進化。中間と高速加速、そして静粛性が良くなっている。結果、発売1ヵ月で受注は1万台超えと大人気!
実はキックスの日本導入計画はゴーンに引導を渡した2年前の西川廣人(さいかわ・ひろと)前社長時代にスタート。12車種の投入計画も念入りに練られたものなのだ。
続いて7月に発売された新型アリアもスゴい! 最強モデルは時速100キロ到達5.1秒と超快速。日産の新しいシンボルたる話題のキムタクCMにも登場するアリア。ただ、販売は来年だし、価格も500万円以上。簡単に何十万台も売れるモデルではない。
ズバリ、オザワが今後の日産で注目するのは年内登場もウワサされる2車種だ。コンパクトハッチのノートとSUVのエクストレイル。この2台が日産の命運を握るとみている。
まずノート。現行モデルにeパワーが追加されたのは2016年。インパクトは絶大で月販1位に輝いたし、18年には年間1位を獲得!
仮に新型がプラットフォームやボディを一から新作し、改良版eパワーを搭載したら爆発的に売れると読む。しかも現状eパワーは国内専用だが、北米や欧州でも売れるようにすればグローバルでもかなりの台数が見込めるはずだ。
一方、エクストレイルは2000年に初代が登場し、日本で一世を風靡(ふうび)したビッグネームSUVだ。北米では今年6月にローグの名前で新型が発表。実はローグとエクストレイルは中身が同じなのだ。その出来栄えは世界的に大ヒット中のトヨタRAV4に匹敵。現行型も人気のエクストレイル。新型にも注目だ。
大トリは発表されるなり世界中のSNSをジャックした来春発売予定の新型フェアレディZ。日産関係者は言う。「あらためてその歴史と人気の高さに驚かされました」
エンジンは現行スカイライン400Rに搭載中の405馬力のV6ターボを積むだろうが、スポーツカー需要が冷え込むニッポンで勝負できるのか?
「会社がこれ以上傾くような計画は立てません。勝てると思うからやるんです」(別の日産関係者)
新型フェアレディZに期待したい。やっちゃえ、日産!