茨城県にある日本自動車研究所のテストコースで開催された試乗会。運転時はコロナの感染対策で手袋を使用 茨城県にある日本自動車研究所のテストコースで開催された試乗会。運転時はコロナの感染対策で手袋を使用

新型レヴォーグに搭載された「新世代アイサイトX」が話題だ。何がどうスゴいのか? 速攻試乗した自動車ジャーナリストの小沢コージが解説する!

■コスパ最強のアイサイトX!

ガチでスゲェ! 久々に「この機能だけでマジ買いしたい!」ってクルマに遭遇したぜ。それはスバルのアイサイトXだ。

アイサイトXは今年10月にフルモデルチェンジするスバル入魂のスポーツワゴン・レヴォーグに初搭載される高度運転支援システムのこと。この次世代アイサイトの進化がマジでハンパないのだ!

そもそもアイサイトは2008年に初登場。10年に大幅に機能が強化されたver.2をレガシィに初搭載。「ぶつからないクルマ?」という刺激的なCMで人気に火がついた。当時、スバルのディーラーには「アイサイトください!」と客が殺到したという有名な話がある。

ちなみにアイサイト発売翌年、レガシィのアイサイト装着率は実に8割強。そしてインプレッサ、フォレスター、XVと年々装着車は増加。現在グローバルでの装着車は300万台を軽く突破している。

ただ、そんなアイサイトも後発の日産プロパイロットやトヨタセーフティセンス、今年中に出るといわれるホンダのレベル3運転支援機能に話題をかっさらわれており、かつてのインパクトがなくなっていたのも事実。しかし! 今回登場したアイサイトXで再びドカーンと進化した。

先行予約が開始された新型レヴォーグ。価格などの正式発表は10月15日を予定 先行予約が開始された新型レヴォーグ。価格などの正式発表は10月15日を予定

オザワは8月アタマに開催された新型レヴォーグのプロトタイプ試乗会でアイサイトXを試した。注目はやっぱしハンズオフ機能だ。

これは昨年、日産スカイラインのプロパイロット2.0が初搭載して大きな話題を集めた機能だ。ドライバーが前方を注視し、クルマが車線内を自動追従していればステアリングから両手を離すことができる。スバルでは渋滞時ハンズオフアシストと呼ぶ。コイツはまさに完全自動運転一歩手前の機能であった!

とはいえ、プロパイロット2.0が高速道路の制限速度内で作動するのに対してアイサイトXは高速道路の渋滞時、時速50キロ以下でしかハンズオフ走行できない。

なぜか? それは性能差というよりは自動車メーカーの思想の違いにある。スバルは「わずらわしい渋滞中はシステムに運転を任せて、それ以外の領域は積極的にスバルの性能を楽しんでほしい」という考え。新型レヴォーグはあくまでも「ファン・トゥ・ドライブ」の目線だ。

さらにアイサイトXが素晴らしいのはその価格戦略にある。アイサイトver.2が10年前に爆発的にヒットしたときも大きく関係したのが単体10万円という衝撃的な安さだった。今回のアイサイトXは全車にオプション設定で単体価格は35万円。これを「うーむ、性能がいい分高いじゃん」と思ったら大間違い。

機能満載11.6インチのタブレット型ナビも含まれての価格なのだ。ナビを約20万円と見積もるとアイサイトXのみの価格はわずか15万円となる。渋滞時のハンズオフ、アクティブレーンチェンジアシスト、進化した被害軽減ブレーキ性能、エマージェンシーレーンキープアシストなど新装備てんこ盛りでこのお値段は完全に価格破壊レベルだ。コスパ最強にも程がある。この機能だけでも新型レヴォーグはガチ買いしていい!

室内フロントガラスにマウントされるアイサイトのステレオカメラ。ヴィオニア社製だ 室内フロントガラスにマウントされるアイサイトのステレオカメラ。ヴィオニア社製だ

■まだまだあるぞ! アイサイトXの新機能

アイサイトXの目玉はハンズオフ機能だけじゃない。その追従性能の出来もハンパない。メインセンサーのステレオカメラの視野角が広がり画素数はほぼ倍に。ミリ波レーダーも前方2ヵ所に追加。その結果、前走車を追従し、レーンをトレースする性能が超絶高まった。より素早く、極上のプロドライバーのごとく走れてしまうのだ。

新開発のステレオカメラや前後4つのミリ波レーダーなどを使用。全周囲をセンシング 新開発のステレオカメラや前後4つのミリ波レーダーなどを使用。全周囲をセンシング

さらに新機能も加わっている。まずはアクティブレーンチェンジアシスト。左右にウインカーを出すとステアリングに手を添えているだけで勝手にレーンチェンジしてくれるシロモノだ。コイツはすでにメルセデス・ベンツやレクサスLSも備えている機能だが、オザワが体感した範囲ではアイサイトXのレーンチェンジが最もうまくて速い。

ちなみに手動でレーンチェンジする場合は斜め後方車線にクルマを発見すると作動を控えさせるエマージェンシーレーンキープアシストも装備。実に頼もしい。

接近車両を認識。アクティブレーンチェンジアシストでは変更する車線の後側にクルマを感知すると車線変更しない 接近車両を認識。アクティブレーンチェンジアシストでは変更する車線の後側にクルマを感知すると車線変更しない

アイサイトXにぶっ込まれた3D高精度地図データにも注目だ。コレを搭載したことにより高速の料金所前になると自動でスピードを緩めてくれる料金所前速度制御や、カーブの曲率に合わせてスピードを自動調整するカーブ前速度制御を可能に。コイツらもまた作動はビックリかつ超スムーズ。前方をちゃんと見ていればハンドルに手を添えているだけで安心の高速走行ができてしまう!

料金所前速度制御。高速道路の料金所手前や少しきついカーブでは地図データをベースに自動で減速してくれる 料金所前速度制御。高速道路の料金所手前や少しきついカーブでは地図データをベースに自動で減速してくれる

最後にオザワが最も驚き、最もシビれたのがアイサイトX独自のドライバー異常時対応システムだ。例えば運転中にドライバーが失神した際、自然に自動走行に切り替わり安全な所まで走って完全停止してくれるのだ。まさか自分が生きているうちにこんなにスゴい夢機能を試せるとは思っていなかった。

ドライバー異常時対応システム。アシスト時に目線を外し、応答しないと警告画面、ホーン、ハザードが作動。最終的に停車する ドライバー異常時対応システム。アシスト時に目線を外し、応答しないと警告画面、ホーン、ハザードが作動。最終的に停車する

実際に試してみたがマジでスゴい。テストコース内を時速60キロ程度で走行中に目をつぶりハンドルから両手を離すと自動でレーンキープ運転を始める。

しばらくすると「プープー」と警告音が鳴り始め、直線ならそのまま徐々にレーンをキープしながら停止。カーブなら時速30キロでハザード点滅しながら走り続けて直線で完全停止する。いつ不測の事態が起きるかわからない生身の人間が運転している限り、このドライバー異常時対応システムはガチで必要な装備だ。

前走車追従。渋滞時発進アシストでは前車が走りだすと、アクセルや操作ナシで追従してくれる。マジでラク! 前走車追従。渋滞時発進アシストでは前車が走りだすと、アクセルや操作ナシで追従してくれる。マジでラク!

■新型レヴォーグの走り自体もスゲェ!

スバルレヴォーグSTI Sport EXプロトタイプ。フロントグリルにはSTIのエンブレムが輝く。電子制御ダンパーなどを搭載する スバルレヴォーグSTI Sport EXプロトタイプ。フロントグリルにはSTIのエンブレムが輝く。電子制御ダンパーなどを搭載する

もちろん、新型レヴォーグはアイサイトX以外の部分の出来もマジでいい。ボディは初代比で全長が65㎜長くなって見た目が伸びやかになった上、リアシートとラゲッジは格段に広い。

ボディは新世代のSGP(スバルグローバルプラットフォーム)にフルインナーフレームや構造用接着剤を組み合わせて剛性感を大幅アップ。ヘタなドイツプレミアムに負けない剛性感と上質感を持っている。

さらにいいのが走り! エンジンは完全新設計の1.8Lフラット4ターボを搭載。コイツがパワーと低燃費を両立させたもので、馬力こそ177PSと旧型1.6Lターボのチョイ増しだが、トルクは300Nmと50Nm増し。このパワーアップは効果的で、出足が全然鋭い上にWLTCモード燃費は最高13.7㎞/Lと上々だ。

11.6インチのセンターインフォメーションディスプレイは存在感抜群 11.6インチのセンターインフォメーションディスプレイは存在感抜群 新型レヴォーグのエンジン設定は新開発の1.8L直噴ターボのみだ 新型レヴォーグのエンジン設定は新開発の1.8L直噴ターボのみだ ラゲッジの使える感はハンパない。スキー板など長尺物も余裕で積める ラゲッジの使える感はハンパない。スキー板など長尺物も余裕で積める

そして走りのモデルSTIスポーツだが、前後左右に専用エアロパーツがついて精悍(せいかん)になり締まった足回りがついている。それだけじゃない。このグレードのみスイッチポンでスポーツカー並みの硬めの足や重めのステアリング、もしくは高級車並みのしっとりした設定が選べる「ドライブモードセレクト」がついており、多様な走りが楽しめる。

黎明(れいめい)期からオザワが取材し続けているアイサイト。マジな話、アイサイトXは過去最高レベルの出来な上、ベースのレヴォーグのスタイル、走り、質感共に超絶進化している。アイサイトX搭載の新型レヴォーグを買っとけば後悔しないって!